顔合わせ
「やあやあ、お久しぶりだね。ハチ君」
「お久しぶりって程では無いんだけどね?それで、こちらが魔札について色々教えてくれる飯綱さんです」
「ハチさんに頼まれて御稲の国から来ました。飯綱と申します」
「……ちょっとちょっと失礼。飯綱さんは少し待っててくださいね?ハチ君?」
飯綱さんが自己紹介をしたところでモルガさんが僕の胸元を掴んで引き寄せる。乱暴だなぁ
「ホントにホントにハチ君はなんで幻の国のレアな人材を連れてくる事が出来るんだい?」
「え?幻の国?」
御稲の国って幻なのか……
「えっとえっと、説明するとだね?こっちから中々行けない所だし、米っていう滅多に食べられない物を持って来るから神の使いなんて言われてたりするんだよ。いつ来るかも分からないしね。それをいとも簡単に、しかも魔札の師匠として連れてくるんだから私の師匠としての格が下がってしまうよ。お詫びにご飯を作りなさい」
「それは理不尽では?」
要するにすんなり行けない国、一般に出回らない米を持って来るからそう呼ばれてるって感じかな?うーん、フォーシアスの上層部というか富裕層は御稲の国については知ってるけど、衛兵さんはただ村があって、米が月1で来るくらいしか知らないからこそ幻の国なのかもしれない。そんな国の人物を連れてきたから驚いているって事か
「まぁいいや、とりあえずキッチン借りますね」
どうやってもモルガ師匠は僕に料理を作らせる気だと思うので料理しよう。駄々こねられても面倒だし
「2人はどうです?」
「うんうん、頑張ってるよ~。ロザリーちゃんの方はもう卒業まで秒読みだし、アイリスちゃんの方も魔札を教えてくれる人が来てくれたからちゃんと卒業出来ると思うよ」
卒業出来なきゃ厳し過ぎるけどね。まだ2人は居るっていうなら2人分も追加で作ろう
「それで、私が教えれば良い方はどちらに?」
「はいはい、こっちに居ますよー。おーいアイリスちゃんお師匠さんが来たよー」
僕が料理している間に顔合わせをしているみたいだ。これでアイリスさんの力になるなら良いか。こっちは火の加減で集中してるから、お話はそっちでやってくれ
「はい、ご飯出来たよ」
「ハチ君、久しぶりだな」
「お久しぶりです。新しい師匠も連れて来てくれてありがとうございます」
「僕は紹介くらいしか出来ないからこれくらいのお手伝いしか出来ないよ。あとはこのくらいの料理を出す程度かな。イベントも発表されたし、レベル上げが本当に大事になって来たかも」
ほぼ間違いなく多数が相手になるのは間違いないのでレベルを上げて抵抗手段を増やさないとマズい
「「これって!?」」
「ん?ん?これは……お米?」
「食べやすい大きさで良いですね。中身は何ですか?」
「一応牛しぐれ煮とケルコンブの2種類と1つだけ唐辛子入りの焼きおにぎりだね。しぐれ煮は三角、ケルコンブは丸いのね」
牛肉と生姜っぽい物がキッチンにあったのでそれを使わせてもらい、御稲の国で貰った酒、醤油、みりん、砂糖を使ってしぐれ煮を作った。ほぼ同じ材料で作れるので残ってたケルコンブも使いおにぎりの具にし、醤油を塗った焼きおにぎり5個の中に1つだけ細かく切った唐辛子を入れたおにぎりを仕込んでおいた。やっぱり大人数で食べるとするならロシアンルーレット的な物を入れたくなっちゃう
「ではしぐれ煮の方からいただきます」
「ちょいちょい!何で米があるの!」
「多分もう少ししたら米は供給されるようになると思いますよ?先行販売……とはちょっと違うかな?でもそんな感じです」
一応問題解決はしておいたはずだから米の生産量も増えて街にも米は届く様になるはずだ
「「美味しい」」
「かなり美味しい……これは私もうかうかしていられませんね」
「待って待って!私の分……うまー!」
僕も残りが多い方のおにぎりを食べる。焼きおにぎりはロシアンルーレット要素を入れた事でまだ誰も手をつけていない。やはり最後にやるという暗黙の了解が皆の中でもあるみたいだ
「さぁ、運試しだ」
「「「「いざ!」」」」
皆ノリ良いな?1人1個おにぎりを選び1口食べる。誰に唐辛子入りのが当たるか……!む!?
「このピリッとした感じ……僕か!でも味付け結構良かったから普通に美味いこれ!」
ピリ辛焼きおにぎりは案外アリだった。アクセントとしての唐辛子が効いてる
「普通に美味しいからこれは失敗……いや、成功だったかぁ」
料理としては美味しいから当たってラッキーというロシアンルーレットとしては盛り上がりに欠ける結果になってしまった
「ピリ辛な焼きおにぎりって美味しそうですね?」
「確かに少し気になるな……」
「残念ながら材料切れですね」
「ズルいなぁズルいなぁ?」
本当はあるけどこれ以上は多分空腹度回復の面から見ても勿体無いからストップだ。というか、おにぎりくらいなら流石に作れるでしょう?
「私もこのくらいなら作れると思うので今度作りましょう」
飯綱さんがなんか張り合って来たけどありがたい。皆そっちに意識が向いてくれた
「じゃあ飯綱さんに託しました。僕も色々やらなきゃならない事があるんで任せられる人が居るのは安心出来るなぁ」
「おいおい?それはどういう事だい?」
「あっ、もう行かなきゃ!飯綱さん後はお願いします。それじゃあさようなら!」
おにぎりも食べ終えたし、モルガさんの追及をかわす為にさっさと家から退散する事にした




