稲3倍
「これだ、この味だ……懐かしい。何年振りに食べただろう……」
美味ーい!とかいうリアクションを想像していたからしんみりと言うウカタマにちょっとビックリだ
「皆も食べるが良い。これは美味いぞ?」
「「「「「いただきます!」」」」」
沢山の手が稲荷寿司を求めて伸びてくる。心なしか俵型の方が人気っぽい。多分そっちの方が大きいからかな?
「おぉ……」
「何故だろう……涙が出てくる」
「初めて食べたはずなのになんで懐かしいんだろう……」
「この味……うぅ」
「幸せであったかい……」
食べた皆が懐かしいとか言いながらポロポロ泣いている。この空気どうしたら良いの?
「えっと……どうしたら良い?もう少し作った方が良い?」
「「「「「「もちろん!」」」」」」
皆泣いているから落ち着くまで待っていれば良いかなと思っていたけど、稲荷寿司は食べたいらしい。皆ほぼ間髪入れずに返事をしてきた
「それじゃあ頑張って作るから皆は食べていて良いよ」
皆に稲荷寿司を振舞う為にまた稲荷寿司を作る。振舞う側ばっかりだけど僕にとってはそれでも良い。だって泣く程喜んでくれているんだ。これは料理を作る側としてはとても嬉しい事だ
「ハチ、ありがとう。この味をまた食べられる日が来るとはな……力が漲ってくるぞ!これなら」
ウカタマが花魁スタイルから大狐の姿に戻り、体から黄金色の光が滲み出る
「うぉぉぉぉ!体持ってくれよぉ!稲3倍だぁ!」
ウカタマの体から黄金色の光が大量に溢れ出て辺りが見えなくなる。目がぁ……
「くぅ、疲れた。稲荷寿司くれ~」
伏せみたいなポーズで口を開けて待っているので、稲荷寿司を3つくらい口の中に入れる
「とりあえずお疲れさま。今何したの?」
ある程度予想は出来るけど、一応聞いてみる
「んー、稲の数を増やした。これで街に米を更に卸しても我々の国で食べていく事が出来る」
「おっ、つまり米の生産量が上がって街で米が買える様になるって事かな?」
「平たく言えばそうだな。たまに街で物を買うにしても金は必要だからな。米をより多く売れればこちらもありがたいのだ。さっき使っていたデカい鍋とかもその金で買ったというか作らせた物だからな」
あのデッカイ鍋とかはオーダーメイド品だったかぁ……
「ハチのお陰で力が増した。それに国の危機も回避してくれた。感謝しかない」
さっきまではただへばって伏せていたという感じだったが、今度はしっかり敬意を持った雰囲気でウカタマが僕に対して伏せた。それに追随するように周りに居た人達も土下座と言うべきかひれ伏すと言うべきか……これあんまりいい気分じゃ無いな?
「そういうのは良いよ。顔を上げて、感謝なら米と大豆を貰えればそれでオッケーだし、それに良い物もウカタマから貰ったしね?」
絶望の匣は上手く使えば不利な戦局をひっくり返す事も出来そうだからパンドーラで契約する仲間を増やすのも良いかも
「せっかく感謝してるんだからもうちょい何か言い方が無いか?もちろん米も大豆もやるが……」
「別に友達なんだからそんな畏まった感じが嫌なだけだよ。でもこれでもう稲荷寿司は作れるよね?」
「はい、この調理法とさっきの味は忘れません。それに調理法が纏められた紙もあるので大丈夫です」
飯綱さんを筆頭に皆レシピに目を通して稲荷寿司の作り方は覚えた(特に油揚げの作り方と味付け法)のでこれで僕が居なくなっても稲荷寿司を作る事は出来るだろう
「本当に感謝している。手伝って欲しい事があればいつでも手を貸そう。ハチ、パンドーラを出してくれ」
「ん?はい」
「よし、ではハチよ。私と契約しよう」
「えっ?」
ウカタマと契約?それってある意味神と契約するって事では?
「なに、深く考える必要は無い。これは友達として力になるという事だ。私には攻撃能力こそ無いが、防御力なら自信があるぞぉ?」
そういえば飯綱さんにボコボコに殴られていたけど何ともない感じだったから防御力があるのは僕も見ていたな。せっかくだし契約するか
「じゃあウカタマ。僕と契約してくれる?」
「あぁ、良いだろう」
お手をする感じで僕の手に触れるウカタマ
『ウカタマ と契約しました』
「流石に神様をポンポン使っていたら罰が当たりそうだからそうそう呼ぶ事は無いだろうけど、頼りにはしてるよ?」
「あぁ」
『称号 【神をも従えし者】 を入手』
おっと、久々の称号だ。名前からして凄そうだけど……なんだろう?
『【神をも従えし者】 いずれかの神を自分に従属か使役、もしくは支配下に置く事が出来た場合に入手出来る 神様は怒らせない様に……やってみな?死ぬぞ 自身が召喚した存在のステータスが30%アップする』
僕じゃ無くて召喚された方にバフが入るのか。パンドーラを使った時に沢山呼びたくてもMPが少なくて大した強さで呼べないだろうけど、ステータスバフが入るなら少しMPケチっても強さはある程度確保出来るかもしれない。あぁ、でも普通に黒武と白武をMP500で呼んでさっきより強い状態で呼べるって考えると充分強いな?
「よし、それじゃあ……おっと?」
何やらメールが来たみたいなので確認してみる
『次回イベントのお知らせ』




