黒砂の蟻地獄
「ぐぬぬぅ!ほっ!」
すり鉢状の底に居るアリジゴクの元に向かって黒い砂が落ちていく。それと同時に空中に居た僕と女王。それにアリジゴクの射程圏内に居た、白と黒の2体の虫人がアリジゴクに捕まる。あの2体は覚悟は既に済んでいると言わんばかりに砂に捕まっても全く動いていない。僕もこの女王の頭を破壊して、ヌッチョヌチョだけど女王から離れる為に触手と腕を使って、何とか抜け出し、そのまま外の砂部分に飛び込む
「ぐへっ」
女王の頭から脱出したは良いものの、そのまま黒い砂に突っ込んだ。勢いあると結構深く刺さっちゃうもんだなぁ……顔だけ出てるけど砂だらけだ
「こういう時は動かないのが正解だよね」
アリジゴクはそうか分からないけど、流砂とかだと動かない方が沈まないとか聞くけど……と言うよりは動けないか?まぁ僕もあの2体と同じように黙って居よう
「グォガァァ!!」
女王の頭を破壊したと思ったけど、やっぱりただの衝撃波だったからか、まだ動いて暴れている。だけど、アリジゴクで暴れてしまえば当然……
「グォェェグ!?」
アリジゴクが女王を標的に決め、その大アゴを開いたり閉じたりしながらすり鉢状の黒い砂を操り、どんどん引き寄せていく。女王は逃げようとしているが、ずりずりとじりじりと、無慈悲なまでに穴に向かって引きずり込まれていく。勿論僕はそれを砂に埋まった状態で見ている。あの白と黒の2体も動いていないからか標的にはされていないみたいでアリジゴクとの距離はまだあるから大丈夫だろう
「大丈夫ですか!?」
「あぁ、多分大丈夫だからその黒い砂には入らない様に気を付けてね?」
飯綱さんが誤って砂に入ってしまうとそれはまた違う問題が起きそうなので、入らない様に注意しておく
「ゴキャァァァァァ!!」
「おぉ、捕らえたぁ」
何となく実況席の実況者の気分。アリジゴクの大アゴが女王を捕らえ、地の底に引きずり込んでいく。あれはもう抜け出せないな……せっかく生き埋め状態から出てきたのにまた引きずり込まれていったよ
『【アビスフォーム】に【抑圧】が追加されました』
『Lv40にレベルアップしました 一部装備に変化』
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ハチ 補助術士Lv40 天衣無縫の器Lv3
HP 540→550
MP 940→955
STR 33→34
DEF 32→33
INT 59→60
MIND 140→142
AGI 108→110
DEX 128→130
成長ポイント 100
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アストレイ・オブ・アームズ
レアリティ ユニーク
全ステータス +27%
耐久度 破壊不可
特殊能力 成長武装 自身のレベルに合わせて武器の性能が上昇する
本来人間には装備出来なかった紋章を魔物達の協力によって無理矢理装備出来る様に作り出された本来の紋章とかけ離れた全く新しい紋章
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無形の仮面
レアリティ ユニーク
HP +400
MP +500
耐久値 破壊不可
特殊能力 (※1)成長装備 (※2)形状変化
(※1 自身のレベルに合わせて防具の性能が上昇する ※2 形状を自在に変化させる事が出来る)
とても古い物のはずだが全く古さを感じない真っ黒な仮面。戦闘人形ピュアルの感謝の念が込められている
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オーブ・ローブ
レアリティ ユニーク
全ステータス +55
耐久値 破壊不可
特殊効果 成長防具 自身のレベルに合わせてこの装備の性能が上昇する
とある存在が負けず嫌いの精神で作り直したローブ。壊れないだけではなく、装備者に合わせて強くなる性能が追加された
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掴み取る欲求
レアリティ ユニーク
全ステータス +60(制限中)
耐久値 破壊不可
特殊能力 (※1)リミッター (※2)幻影手 (※3)畏怖奪掌 (※4)技破掌
(※1 現在のレベルによりこの装備の能力が制限される ※2 両拳を打ち合わせる事で発動可能。1分間実際の腕が見えなくなり、虚像の腕が現れる 一度発動すると1時間再使用不可 ※3 恐怖の状態異常中の相手が装備している防具を無視した攻撃が出来る。攻撃に成功した場合、恐怖の状態異常を取り除く ※4非物理型スキル攻撃にタイミング良く腕を使った攻撃をするとそのスキル攻撃を消す事が出来る)
己の欲する物を全て掴み取った者が生み出したガントレット。秘められた力がある……らしい
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踏み躙る自我
レアリティ ユニーク
全ステータス +60(制限中)
耐久値 破壊不可
特殊能力 (※1)リミッター (※2)戦意奪略 (※3)幻影脚 (※4)魔破脚
(※1 現在のレベルによりこの装備の能力が制限される ※2 この防具を装備し、敵の頭を踏みつけた場合、恐怖の状態異常をその敵に付与する ※3 どちらかの踵を2回連続で地面に当てると発動可能。1分間実際の脚が見えなくなり、虚像の脚が現れる 一度発動すると1時間再使用不可 ※4 遠距離魔法攻撃にタイミング良く脚で攻撃するとその魔法攻撃を消す事が出来る)
どんな状況でも自身の主張を押し通した力ある者が生み出したグリーブ。秘められた力がある……らしい
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一応レベルアップと装備の成長はしたけど……アビス様ノリノリ過ぎて今回素材1つも手に入らなかった。やっぱりボス戦で【深淵の一撃】は使わない方が良いのかな?そして【抑圧】とは何ぞや?
『【抑圧】アビスフォーム未使用の際に深淵の気配を察知されなくなる代わりにアビスフォーム使用時にヘイトが集まりやすくなる』
基本的ヘイト上昇値が少ないし、これは使ってない時が便利になった感じだな?というかそれよりも……
「アビス様ノリノリ過ぎでは?結構危なかったですよ?」
(たまには暴れても良いだろう?)
僕経由の【深淵の一撃】でこっちの世界に干渉が出来る様になったからか、使った時に結構な範囲に影響を及ぼす攻撃。今回のアリジゴクだけど、僕も砂に捕らわれている時に暴れてたら実は巻き込まれていた可能性あったのでは?いや、砂に突っ込んでるから充分巻き込まれてはいるな?まぁハエキングの時にも僕ごと潰す様な攻撃だったし、僕ごと巻き込む攻撃を使われるのは割とあったわ
女王が飲み込まれて行って、少し時間が経ったら地形も【深淵の一撃】発動前の状態に戻って行き、僕と虫人の2体が、砂に埋まっていた時と同じ地点で立った状態になっていた
「これで、勝ったかな」
「終わった、のか?」
厳密にいえば終わりで無いのかもしれないけど、親玉は倒したから後は残党処理をすれば終わりで間違ってないと思う。僕のやる事はやったから帰るか
「「……」」
「あれ?どうしたの?好きな所に行きなよ。君達はもう自由だから……あぁでも君達を勝手に自由にしちゃったのは僕の責任なのか……次の勤め先とか探さないとダメとかある?」
仕えていた主人を失う(倒した)って要するに無職にさせられたって事だからちょっと恨まれてるかもしれない。新しい就職先を探さないとダメだったりするかな?
「「……」」
「なんで跪いてるの?」
「ひょっとしてハチさんに忠誠を誓っているのでは?」
え、僕に忠誠誓われても困るんだけど……
「忠誠って言われてもなぁ……どうしよう」
ついて来られても困るんだよなぁ……何か良い手段無いかな?
「とりあえず御稲の国に帰ろう。この2人も連れて帰っても良いかな?」
「私としては虫に恨みがあるので良い……とは言い切れませんが、どうやらハチさんの支配下にあるようですし、何とかしましょう」
「飯綱さんは頼もしいなぁ」
「や、やめてください……」
ふむふむ、飯綱さんは褒められるのに慣れてないと
「よし、それじゃあウカタマに報告しますかー」
倒すべき敵は倒した。稲の復活はウカタマに任せて、あ、そうだ。丸薬が一つ余ってたから飯綱さんに返そう
「飯綱さん、これ余ったから返すね?」
「使い切らなかったのですね。それ、結構高い物なので2つとも使っていたら……」
えぇ……使用する事で何か上下するアイテムだったのか、この丸薬。残しておいて良かったとみるべきか、1つも使わない様に立ち回るべきだったのか……正解は分からないな
「さ、凱旋だ!」




