生き埋め
「ハチーーーー!」
自分の安全よりも私の身を案じて間に合わないと思ったからこそ洞窟の外に放り投げたんだろう。だが、私は無事だったが、ハチは崩れた洞窟の中だ
「そうだ!アイツはワープの魔法を持っていると言っていた!それならすぐに現れるはず……」
ワープの魔法を持っていると言ってたハチ。それが本当ならワープして出てくるはずだと、待っていた
「なんで!なんで出てこないの!」
残念ながらハチがワープしてくる事は無い。ハチが持っているワープ系魔法は【ディジャヴ】それは発動すれば発動した所から3秒前の場所にワープする魔法であって、洞窟の外にワープする魔法では無い。そもそも【アビスフォーム】中のハチは魔法を行使出来ないので【ディジャヴ】自体を発動出来ない。ハチはワープ系魔法を持っていると言っただけで、それの詳細は何一つ言っていない。嘘は言っていないのだ
「どうして出てこないの!」
素手で塞がった洞窟の入り口を掘るが、大量の石や土砂で掘り進める事が出来ない
「飯綱様!ご無事ですか!」
「土砂崩れ?」
「これはまさか……奴らの巣!?飯綱様が破壊したのですか!という事は……」
「我等の勝利だ!」
後からやってきた精鋭達は崩落した洞窟を見て、自分達が勝利したと賑わっているが、飯綱はそんな気分では無い。女王が毒で苦しんで崩落した土砂で押しつぶされた。それはなんら間違っていないと思う。ただ、その崩落した中にこの戦いで一番尽力してくれた人が生き埋めになってしまっている。喜んでいられる心情では無い
「早く掘り起こせ!ハチが、協力者が生き埋めに……っ!?」
「「「!?」」」
急いで掘り起こそうとした時に崩落した洞窟から空に向かってレーザーが発射された
「いったい何が……まさか女王がっ!?」
毒を盛り、押しつぶしたとしてもまだ生きているのか?
「「……」」
槍を持った白と黒の体色の2体の虫人。それが、光線が出てきた穴から現れた
「あれは……さっきの!」
飯綱には見覚えのある2体の虫人。あれはさっきハチが対処すると言っていた2体だ。あの2体があの場所に居るのは何故……
「「……」」
2体が地面に開いた穴に向かって膝を着いたと思ったら、穴の中から黒い何かが出てくる
「ふぅ……マジで死ぬかと思った」
「ハチ!」
「おっ?あぁ、良かった。飯綱さんも無事みたいですね」
地の底から黒い触手で這い上がってきたハチを見た周りの精鋭達は咄嗟に臨戦態勢を取るが、飯綱が泣き崩れているので現場が大混乱になっている
「えぇ……あぁそっか。この恰好のせいか」
【アビスフォーム】の禍々しさがイメージ的に良くないと改めて認識する。それに虫人の2体も居るし、混乱するのもおかしくないか
「いや、これ間に合わないな……飯綱さんごめん!」
飯綱さんを放り投げた後、落ちてくる土砂。これは流石に避けられない。流石に死んだかなぁ……
「あれ?死んで無いぞ?」
土砂に埋もれて窒息死すると思っていたのに一応息が出来る。でもこれ、本当の意味で生き埋めだから詰んだのでは?
「「……」」
「あれ?君達なんでここに……」
良く分からずに見上げるとそこにはさっき見た顔。白と黒の虫人が協力して僕が押しつぶされない様に立った状態で組み合わさって僕が生き残れる空間が少しだけ出来ていた。2体の手にはしっかりと槍が持たれていて、その槍の穂先が少し形が変わって、傘っぽくなっている。それのお陰で押しつぶされずに済んでいるのか?というかそんな事よりこの2体……どうしてここに?何処かに行ったのでは?
「「……」」
「流石に喋ってもらわないと全部は分からないけど……借りを返す的な事かな?」
この武人的2人なら借りを返す的な動きをしたとしても何ら不思議には思わない
「まぁいいや。二人とも助けてくれてありがとう!」
敵だった2体が僕の事を助けてくれたのは普通に嬉しかった
(ほう?情けを掛けた甲斐があったな?)
アビス様がそんな事を言うけど、別に情けというよりは単純にリスペクトの気持ちというか、その内僕も強くなってから何処かで制限無しの彼らと戦えるかな?と思っていたので見逃したんだが……
「「……!」」
槍が形を変えてギザギザの刃に戻る。そして、ボロボロと落ちてくる土を無視して土の中で何とか槍を重ねると槍の刃の部分が光り、レーザーが真上に向かって発射される
「……空だ」
ポッカリと開いた穴から見える空。2人がレーザーで穴をあけてくれたお陰で、窒息する事は無くなった。2体とも外に出て行ったので、僕も外に出よう
「ふぅ……マジで死ぬかと思った」
生き埋めになった時は死んだと本気で思ったけど、あの2体のお陰で何とか生き残る事が出来た
「ハチ!」
少し遠くから僕を呼ぶ声が聞こえる。あの声は飯綱さんか?
「おっ?あぁ、良かった。飯綱さんも無事みたいですね」
あの時結構乱暴な投げ方をしちゃった気がしたので、飯綱さんが怪我していないか心配していたけど怪我していないみたいで良かった……
だけど、飯綱さんの後ろに居た飯綱さんと同じような恰好をした人達が怯えていると言うべきか警戒した様子でこっちを見ている
「えぇ……あぁそっか。この恰好のせいか」
【アビスフォーム】を解除して、敵対する存在じゃないとアピールしようとした時に、地の底から腕が一本伸びてきた。まじか、女王まだ生きてた?




