水の大剣?
「結構重たいな……」
門を押して開けようとするけど重くて開かない
「ん?門が開かないのか?ほら、これで良いだろう?」
ヴァイア様が尻尾で門を開けた。開けたというかぶっ壊したと言うか……
「ヴァイア様、凄い力ですね?憧れちゃうなぁ……」
「むふふっ!もっと褒めても良いのだぞ?」
正直に言うと門が開かない時点で今の僕にはまだ早いとか条件が整ってないと思うから進むのを辞めようかと思っていた。でももう開いちゃったんなら行くしかないよね!ヴァイア様もニッコニコでこっち見てるし
「ヴァイア様は強いし優しいし、その白い姿も綺麗でカッコよくて美しいですね!」
ヴァイア様の性別は分からないし、とりあえずヨイショするにしても男性だった場合でも女性だった場合でも良いように褒めてみた
「き、綺麗?う、美しい?むふふふふっ!」
これは女性ですね、間違いない……今後褒める時の参考にしよう
「では改めて、行ってきます」
「気を付けるのだぞー!むふふっ!」
ヴァイア様に挨拶をして、壊れた門の先に進む
「さて、この先には何があるかな?」
地底湖の底の更に奥。そんな深い所にいったい何があるのか……確認せずには帰れない!
門 (だったもの)を越えるとその先にあった部屋に大きな柱が真ん中に立っていた。ただ、その柱は中間が繋がっておらず、その繋がっていない空間に深く蒼い宝玉が浮いている
「うわぁ……こんなものもあるんだ綺麗……」
水中だから泳いでその宝玉に近寄る。近くで見ると益々綺麗な宝玉だ
「でもこれ綺麗だけど取ったら絶対何か起きるよ……」
悪い予感がするから綺麗だけど取るのはやめておこう。宝石を取って起動する系のトラップが怖い。職業が盗賊とかならこういうのが取って良いのか悪いのか判断出来るのかなぁ?
「一応まだ先があるのか。行ってみよう」
柱の部屋に入った位置と真反対の天井に穴があったので入ってみる
「これは大剣?」
穴の先には地面に突き刺さった大剣があった。刀身は海の様に蒼く、柄にもさっき見た宝玉と同じ色の宝玉が付いていた。見るからに水属性付いてそう。よし、早速引き抜いてみよう!
「ぐぬぬぬ……!抜けなーい!」
やっぱりと言うか当然と言うか。STRが低すぎて抜けませんでした!あっ、例え抜けたとしても装備制限で使えない……のかな?
「はぁ……帰ろう」
道中あった物は罠っぽいし、鉱石は取れないし、今回はヴァイア様と仲良くなってスキルを教えてもらえた事が一番の収穫かも
少しがっかりしたけど泳いでヴァイア様の所に戻る
「おぉ、戻ったか!」
「ただいま戻りました。今日はもう帰りたいのでまた乗せてもらっても良いですか?」
「ん?どうした?あまり顔色が芳しくないが?」
「今の僕が弱いと分かったのでもっと強くならないとなぁって。せっかくここまで連れて来てくれたヴァイア様に申し訳ないです」
あの大剣を引き抜くのにどのくらいのSTRが必要なのか分からないけど引き抜いた所で使えないし、実はこの洞窟は僕にとってはメリット無かったのかもしれない
「そうか……まぁ良い。気にするな!強くなった時また来るとよい」
「はい、そうさせてもらいます」
「では、乗るのだ」
「失礼します。ヴァイア様に乗ると何だか落ち着きますね?」
「むふふっ!そうか?」
実際僕より遥かに強いヴァイア様が敵対しないってそれだけで十分ありがたい事だしね?
「しっかり掴まるのだぞ?」
「はい!」
ヴァイア様にしっかり掴まり、水面を目指す。かなりのスピードで上がるけどそういえば水圧とかは無いのかな?それともここだけ無いのかな?どっちみち水圧があれば僕はぺしゃんこになっているかこの急上昇で爆発してる
「よし、着いたぞ、ハチ!」
「ありがとうございます。また強くなったら来ても良いですか?」
「強くならなくてもハチならいつでも歓迎するぞ!むふふっ!」
ヴァイア様に名前を呼ばれた。何か嬉しい
「また今度ー」
「また来るのだぞー!」
洞窟を出ようとしたらヴァイア様が尻尾の先端を小刻みに振っていたので手を振って返した。何か蛇っぽいのに人らしいからとても会話しやすい存在だった
「結局洞窟に入って何も手に入れられなかったなぁ……」
ヴァイア様が見えなくなり、出口が見えた時に自然に口から洩れてしまった。おっといけない何も手に入ってない訳じゃない。ヴァイア様と仲良くなれたんだから
「太陽が目に来るー」
『称号 【無欲】を入手』
「おん?」
『【無欲】 ダンジョンに入り、素材や宝などを1つも持ち帰らずにダンジョンの終点から脱出した単独プレイヤーのみ入手 何の成果も得られなかったようですね…… レアアイテム入手率アップ。特定NPCとの友好度が上昇しやすい。全ステータス10%アップ』
欲が無いんじゃなくて運が無かったと思うんだけど……称号が手に入ったのなら良いか。この洞窟もまた来ないとヴァイア様寂しがりそうだからなぁ
「とりあえず山の近くまで来たし、少し登ってみるか!」
洞窟を出て、後ろに広がるアルファン山。周囲が完全に暗くなる前に途中までで良いから登ってみようと思う