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被害担当

「やっと纏め終わった……」

 本日分の米の収穫。資料のまとめが終わったので稲神様の所に報告に行こう


「稲神様……なっ!?」

 稲神様が普段居る稲神の間に行くとそこに居たのは……


「あひぃん!」

「何があひぃん!ですか。変な声を出さないでください。はぁ……もう良いです」

「えぇ~、もうちょい触ってくれても良いんだぞぉ?」

 何者か分からない白いローブを着た者が稲神様の尾を撫で回していた。稲神様も満更では無さそうに……というよりもまずは!


「貴様何者だ!」

 我等の稲神様に何たる無礼!許せん!




「とりあえずお互いに自己紹介しませんか?僕はハチです。貴方は何ですか?」

 このままだと何時まで経っても下品な会話しか続かなさそうだったので話を切り替える為に自己紹介だ。困ったら自己紹介。古事記にも書いてある


「なんだ、つれないのう?まぁ自己紹介くらいは良いか。私はウカタマ。この国の民には稲神様と呼ばれている」

 何だろうこの違和感?いや、でも見た事ある様な気もする……


「ほれほれ。この尻尾が良いんだろう?欲しいんだろう?おぉん?」

 せっかく厳格な雰囲気があったはずなのにあっという間にスケベなおじさんみたいな感じに……あっ、あれだ!バ美肉おじさん!所謂バーチャル美少女受肉おじさんという奴。動画サイトなどで見た目は美少女、中身は男性おじさんで美少女の顔して声は素のままだったりとボイスチェンジャーを使って本当に女性っぽい人等、種類もあって割と人気があるコンテンツに出てくる存在に似ている気がする。あの花魁スタイルの時に妙にエロさを感じなかったのはわざとらしさが全開だったからかな?まぁ面倒だし、一旦乗った方が早く終わるか


「はいはい、欲しかったですよ。ほれほれ」

 僕の前にふりふり挑発していた尻尾を撫でる


「あひぃん!」

「何があひぃん!ですか。変な声を出さないでください。はぁ……もう良いです」

 自分からやっておいてなんでそんな変な声出すんだよ……


「えぇ~、もうちょい触ってくれても良いんだぞぉ?」

 いや、もうやらないぞ?手触りは良かったけど声がNGだ


「貴様何者だ!」


「あっ」

 しまった。ウカタマに気を取られて視界外の奴に意識が向いてなかった。【察気術】で感じる事は出来るけどなんか気配が薄いな?この人……いや、人か?


「稲神様から離れろ!」

「あ、はい」

 言われた通りにウカタマから距離を取る。一応抵抗の意思が無い事を見せる為にもその人の方に後ろ歩きで行って両手を頭の後ろに回し、背中を向けて膝立ち状態になる。これでまだ更に何か要求されても困るけど


「随分従順だな?」

「いや、困ってたんで助けてくれてありがたかったくらいですよ……地面に伏せた方が良いですか?」

 多分こっちの人の方がまともに話す事が出来ると思う。やれというなら地面にも伏せよう


「あぁ、地面に伏せてろ!」

 声的に女性だろうか?一応顔は見ないで地面に伏せたので姿とか性別は分からない


「稲神様!ご無事ですか!」

「あ、あぁ……別に何も無いぞ?」

 うわっコイツ……急に外面良くなったぞ?


「本日の報告をしようとした際に妙な声が聞こえて、見知らぬ奴が居るので制圧したところです」

 制圧?自分から降伏しただけなんですが……いや、間違っちゃいないのかな?


「ご苦労……だが、そやつは私の客人なのだ。警戒するのは分かるが槍で刺そうとするのはやめてくれ」

 うん、流石にこの状況だとこの人のオーラも見えるので槍を両手で構えて背中に突き刺そうとしているのが分かる。これ結構本気なのでは?


「そ、そういう事でしたら……」

 槍を収めるまだしっかり見てない人。これこのまま帰れって言われたら大豆が入手出来ないし、どうなるんだろうか?


「あのー、もう顔を上げても良いですかね?」

「どうぞ、顔をお上げください。稲神様のお客人に対して失礼な態度を取ってしまい申し訳ありません」

 顔を上げても良いと許可を貰えたので顔を上げる。目の前には謝罪の為かお辞儀した姿の狐耳と尻尾の生えた巫女さんが居た


「いやいや、助かりました。やっと話の出来そうな常識のある方と出会えた気がします」

 あの、頭の中ピンク大狐よりは全然話せる相手な気がする


「ほぉ?ほうほう?そうやってやるのかぁ……?」

 ダメだ抑えろ……ここで怒ったら大豆目前まで来たのにまた遠くに行ってしまう可能性がある。ウカタマ(アイツ)を無視してこの人と話そう。煽り耐性も僕には必要だ……


「御用があれば何でもお申し付けください」

「何でも聞くのだぞ?」

 自分の秘書というかお付きの人?を売るみたいな行為はいただけない。ウカタマに「何でも」の部分を強調して言われた事で頬を赤らめ、若干泣きそうな表情をする巫女さん。これは流石に可哀想だ


「じゃあ1つ用を聞いてもらっても良いかな?」

「は、はい……なんでしょう?」

「一応聞くけど何でも良いんだよね?」

「あぁ、何でも良いぞ?」

 巫女さんに話しかけたつもりだったけど、まぁ言質取れたから良いか


「じゃあこのエロに染まってるバカ狐に鉄拳の10発や20発ブッ込んでやってください。これは僕のお願いですからね?何でも良いってアレが言ったんですから断らないですよね?」

「何ィ!?」

 どうせエロい事をお願いさせるとでも思っていたのだろう。この様子だといつもセクハラ紛いの事をさせられていた可能性もあるし、やり返す機会を作るくらい良いだろう



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