人魚との邂逅
「あらあら?ここに人間が居るなんて珍しい」
「あの……ちょっと良いですか?」
向こうもこっちに気が付いた様で、泳いでやってくる。とりあえず聞いてみようか
「ここが海底都市ルールイアって所で合ってます?」
「ええ、そうよ。ルールイアにようこそ。人間さん」
良かった……いきなり敵対してるとかは無さそうだ。まぁ、ここでいきなり敵対だと正直バカみたいな難易度になるよね?
「あの、ここに旅人の泉とかってあります?」
「泉?あぁ、旅人の像の事ね?陸だと泉がついているのかもしれないけどここではただの像よ?」
「なるほど……海の中だからそういう変化もあるのか……もし暇とかでしたらそこまで連れて行ってもらっても良いですか?時間が無かったら場所を教えてもらうだけで良いんで……」
「うふふ、何?誘ってるのー?」
「え?何の話です?」
ただ道を教えて欲しいだけだったんだけど……
「良いよー、連れて行ってあげる」
「ありがとうございます。えっ?」
連れて行ってあげるって道案内をしてくれるかと思ったらまさかの僕の手を取り、泳ぎ始めた。人魚だからか結構良いスピードで泳ぐ。【アビスフォーム】の泳ぎなら一応張り合えるかもだけど、今は人魚の人に連れて行ってもらった方が良いだろう。あれは人受けが良くないしね……
「ほら、ここよ」
「おぉ、像だけだけど地上の奴と一緒だ。態々ありがとうございます」
地上の泉の像と同じ像があった。変わりがあるとすれば泉が無くなっていて像だけが広場の邪魔にならない所に設置されている。これは像に触れれば登録されるのかな?
『海底都市ルールイア が登録されました』
「やった、これで帰れる!」
像を登録出来たからこれで地上に帰る事が出来る!
「あなたの用事は終わった?なら、私の用事も手伝ってくれる?」
「はい、道案内のお礼で良ければ」
せっかくここまで連れて来てもらったしお礼くらいはした方が良いだろう。やれる事をやってからここに戻ってくれば良いだろう。大体広場に像があるお陰で迷う事も無いだろう。迷っても泳いで上に上がれば街を見下ろせるし、人魚も結構そこかしこを泳いでいる。男女ともに結構美男美女が多いな……もしかして海沿いの洞窟で見た半魚人達とは違うのかな?
「それじゃあ付いて来てもらえる?」
「はい、何をしたら良いんですか?」
「まぁまぁ、とりあえずついて来て」
また手を握られて連れて行かれるけど……これ大丈夫かな?へんな勧誘とかじゃないよね?
「うへへ、久しぶりの人間……」
なんか怖い事呟きだしたぞ?
「あの……用事って物運びとかですか?」
「大丈夫大丈夫心配しないでー」
絶対用事に関しては何も言わないのめちゃめちゃ怖いんですが?
誰も居ない路地に連れ込まれて壁を背に追い詰められる。なにこれ?壁ドン?壁ドンは賃貸の隣の部屋にだけしてくれ……
「あの……」
「あぁ、久々の人間!お願い!一曲だけで良いから私の歌を聴いて!」
「え?」
曲を聴いてって何?
「中々人間が来なくて歌う機会が無かったのー!久しぶりに人に聴いてもらえるわー」
人魚の歌って凄い綺麗で聴いた船乗りが舵を取り損ねて船を沈める位だっけ?ちょっと聴いてみたい
「それじゃあ行くわよ?」
「はい、聴かせてください」
どんな歌か……
「~゛~゛~゛~゛~゛!」
「う゛っ!?」
この世の終わりかと思う歌声。耳が死ぬかと思ったけど塞いだら失礼だと思って何とか耐えた。嘘ぉ?HPちょっと減ってるんだけど?
「どうだったかしら?」
「あの……歌ったのっていつ振りですか?」
「そうねぇ、5~60年振りくらいかしら?」
全然歌ってなかったのか……
「練習とかって……されてるんですか?」
「人間が来ないから聞かせる相手も居ないし、練習とかも全然しなかったわね?」
「正直に言ってしまうと、出来れば練習してくれると嬉しいですね……僕の耳が悲鳴をあげてます」
ダメージを受ける歌声を沢山の人が聞いてしまったらそれこそ阿鼻叫喚の地獄絵図になる可能性が高い。もし、今後も誰かに聴かせるつもりなら練習をした方が良い
「あら?あらあら?もしかして私酷い事しちゃった?」
「そのつもりが無かった事も分かっているんで、もし他の人魚の方も歌を聴かせるなら聴かせたい人は練習してからにしてくれると他の人も……皆幸せになると思います」
出来るだけ傷付けない様にオブラートに包んで言ってみた
「貴方……良い子ね?いや、悪い子かしら?」
「えぇ……?」
その評価の仕方は良く分からないけど、傷付けないで済んだみたいだ。そうだ、今からフォーシアスに戻ればタコを取りに行けるんじゃないかな?
「ねぇ?良かったらこれからご飯でも……」
「ごめんなさい。僕も待たせている人が居るんでこれで!」
手足を何とか動かして泳いで路地から脱出する。ホフマンさんが事前にタコが欲しいって言っていたお陰で人を待たせているっていう理由を咄嗟に思いつけた。悪いね人魚さん。像を使って海底都市から脱出だ!
「あららぁ、流石にあんなに良い子。放っておかれる訳が無いかぁ……昔の姫が地上の男に恋をするって言うのも分かる気がするわね……」
人魚は人魚で盛大な勘違いをしていた




