MPドーピング
聖女の戦闘用修道服に着替えて魔法を使う
「【コンバートマジック HP】」
MPを全てHPに変換して周囲に魔力をバラまき、祈りでMPを回復する。これで準備オッケーだ
「その石……動け!」
地面に落ちていた石に対して動けと念じる。手を前に出して、動けという意思を伝えようとするとMPが少し消費された
「おっ?」
MPは消費されたけど石は動かない。もしかしてこれは練習出来てるのかな?
「何か進んだ気がするぞ?」
多分このまま同じ事を繰り返して行けば何かしらの魔法を覚える事は出来そうだ。まぁ石だけで練習していたら【念動力】の方向に行ってしまうかもしれない。モルガ師匠は「【領域】は【念動力】と似てるかもしれないね」と言った。似ているかもしれないって事は違うって事だろう。持ってる人が言うんだからこのままだとダメだろう。もっと広範囲を一気に動かすイメージでやらないとダメかな?
「いや、もっと自由に考えるか」
アビス様も言ってた。「己が思うがままに」って。物体を動かすだけが【領域】ならそれは持ってないけど【念動力】で事足りるはずだ。自分に有利なバフ、敵に不利なデバフが掛かるくらいのエリアを作るくらい出来るんじゃないか?
「もっと自由に……頭を柔軟にしよう」
僕が使いたいのは僕に有利なエリアを作り出す事……そうだ。あの決闘フィールドみたいに、タイマン状態に持ち込めるものとか良いな……ハエキングのルールみたいに、エリア内の相手が1人なら周りからの攻撃を防いで、2人以上入るならこっちがバフを貰って相手にデバフを与えて、1人になればそれを解消するみたいな?
「僕はこういう力が欲しい。物を動かす力は無くても良い。僕は……僕だけの【領域】が欲しい。僕の思うままに」
モルガ師匠とアビス様の言葉から僕が欲しいと思った魔法を想像する
『新しい魔法を発動するのにMPが足りません』
「新しい魔法!でもMP消費半減でさえ使えないのか……」
えっと、今の僕のMPが素で890と仮面の450で1340。それでMP消費が50%カットだから……実質2680?それでも足りないってどれだけMP必要なんだ?
「MP消費量が段違いで高すぎるのか、それとも自分で作った初めて使う魔法は軽減されない可能性もあるか?」
実質2000を超えるMPがあったとしても使えないとしたらそれくらいしか考えられることが無い。何かでMPを増やすしかないか
「モルガ師匠?」
「なな、何かな?」
「一応僕は見られたくないと忠告はしておいたんですが、聞かなかったようですね?」
「流石に、流石にあんな物だとは思って無かったかなぁ……」
腰を抜かしているモルガ師匠に手を伸ばし、立たせる。くっそー、流石にもっと腰を抜かせる事は出来なかったかぁ……
「あの2人には見られてないみたいですし、まぁ良いですけど……モルガ師匠?何かMPが上がる様な装備とか薬とか知りませんか?」
レベルを上げるのはこの家の中で出来るとは思えない。それならMPをドーピングする事で何とか対応出来ないかなと、考える。今の魔力量が足りないのであればどうにかして増やすしかない
「えっとえっと、ある事はあるけど……」
少し口籠るモルガ師匠。何か問題がある物なんだろうか?
「実は実は、飲むと魔力量が倍になるけど、錯乱状態になっちゃう物がある事はあるよ?」
何その危ないクスリ的な物?
「それ、使ってみても良いですか?錯乱状態なら多分耐性あるんで大丈夫だと思うんで」
精神系状態異常なら無効に出来るし、それを飲んでMPを盛れば流石に使えると思う。それでも使えなかったら流石にMPの消費量が尋常では無い。飲み損だけは勘弁してくれよ?
「良いの?良いの?もしかしたら毒性もあるかもしれないよ?」
「やってみないと分からないじゃないですか?お願いします。それ、使わせてもらえないでしょうか?」
「いやいや、本当に君は恐れ知らずと言うべきか向こう見ずというか……分かったよ。君に師匠らしい事もそんなに出来てないし、君を信じようじゃないか。今持って来るよ」
なんとかモルガ師匠を説き伏せるというか説得に成功したみたいだ。MPを増加させる薬……錯乱の状態異常が付くとかやっぱりMPを増加させるって中々危ない事なんだろうか?キャパシティを薬で増やして自分の持ってた限界値より更にMPを使用して薬の効果が切れた時とかどうなるか分からないし、その点は結構怖いな?
「これこれ、はい、増魔の秘毒。良い?絶対無理したらダメだよ?一応近くで見ておくけど……」
「よろしくお願いします。それじゃあやってみます!」
先に【コンバートマジック HP】で周辺に僕の魔力を発散してからモルガ師匠から渡された増魔の秘毒を飲んでみる。あぁ~、口の中がピリピリする。これ結構酷い味だな……でも効いてる感は凄い。実際MP上限が伸びた。素の890が倍になって1780+仮面の450で2230になったかな?
祈りでMPを回復して、さっき発動出来なかった魔法をもう一度試みる。
「僕の、僕だけの……【領域】!」
直径約10mの魔法陣が僕の足元に広がった




