学び方の違い
「あ、ハチ君」
「あれ?アイリスさん?」
晩御飯を作って持っていくとアイリスさんがそこに居た
「晩御飯の追加ってアイリスさんの分でしたか」
「はいはい、新しく入った弟子です!皆仲良くねー。って言っても知り合いみたいだしそんなのは良いか。食べよ食べよ」
すぐに席に着き、バクバク食べ始めるモルガさん。ちょっとお行儀悪いのでは?
「あぁ、早く食べてしまおう。食べたら修行の続きだ!」
ロザリーさんなんか少年漫画の主人公みたいだ。10倍な何とか拳とか使い始めたりしないよね?
「ハチ君の料理……いただきます!」
気が付いたら僕以外の3人は既に席に着いてご飯を食べている。何だか置いてけぼりにされてるな……僕も食べるか。あの調子で皆食べたら僕の分が無くなる。個別で作るのも良いけど大皿1枚で作った方が何かと便利だからと大皿で作ったのは失敗だったかな?モルガさんが割とハイスピードで食べてる。昼の時、僕はジャーキーで済ませていたからモルガさん達がどのくらいのペースで食べているかは知らなかった。これはもっと作っておくべきだったか?
「うまうま、こんな美味いご飯久々だ。ハチ君にはもっと色々やってもらわないとなぁ……」
これ、僕がモルガさんからちゃんと教われないとずっとここから出られない?ただ教わるだけじゃなく、見て盗むのも必要かもしれない。でも何を盗めば良いんだろう?僕は何を学ぶんだ?
「えっと、モルガさ、師匠?僕っていつ解放されるんです?」
「ん?ん?君はずっと置いておくつもりだけど……まぁ【領域】が出せる様になったら考えてあげても良いかな?」
「【領域】?そういう物があるんですね」
それを覚えたら修行という名の雑用から解放されるのか。待てよ?確か【結界魔法】は空間に魔力を満たすまでの時間稼ぎってモルガさんは言ってたよね?【領域】ってその時間稼ぎをした後に発動する物かな?だとしたら僕はまず【結界魔法】を覚えなきゃダメなんじゃ無いかな?
「うんうん、悩んでるねぇ?だけどそんな悩んでたらダメだよ?」
「あっ」
モルガさんの言った【領域】について考えていたら晩御飯が無くなった。空腹度的には問題無いから良いんだけど、マジか……
「す、すまない!とても美味しかったからつい……」
「ごめんなさい。ちょっと空腹度が減ってて……」
「気にして無いから良いよ。お皿洗ってきます」
【領域】か……空間を自分の魔力で満たす時間稼ぎをする為に【結界魔法】が必要であって瞬間的に自分の魔力を発散させて、即座に回復して相手の魔力を弾き飛ばして【領域】を展開する……なんて荒業的な事が出来るんじゃないか?
「……!」
「どうしましたモルガ師匠?」
「いやいや、ちょっと背筋がブルっとね?」
一瞬あのハチ君からとても恐ろしい雰囲気を感じた気がした。何か仕出かす前に一度しっかり教えた方が良いか?いや、まずは基礎の魔力制御関連からやらせるべきだろう。私も魔法を習い始めた時はそうだった
「風邪ですか?」
「いやいや、大丈夫!それより妹ちゃんも攻撃魔法についてを教えれば良いかな?」
「本当に教えてくれるんだ……はい!お願いします!」
うんうん、礼儀正しい良い子だ。この子も伸びるだろうし、しっかり教えないとね
「ところでモルガ師匠?聞いておきたかったのですが、どうして彼と私達は修行方法が違うんですか?」
「そっかそっか、そういえば言ってなかったね?攻撃魔法は【マジックコンセントレーション】があると良いんだけど、あっちの方は【自然回復力強化】が必要で全然違うんだよね。だから分ける必要があるって事。あっちの方は放置していてもなんとかなると思うけど、こっちの方は付きっ切りでやらないと中々出来ないからあんまり人は多く出来ないよって事。分かったかな?」
攻撃魔法とアレは魔法としての毛色が違う。だから修行方法も当然違う訳だ
「なるほど、納得です」
「私もすぐに使える様に頑張ります!ご教授お願いします!」
「うんうん、君達ならきっと出来ると思うし、私も師匠としてビシバシ行くよ?」
「「はい!」」
「何か師匠イベント的なのやってて良いなぁ」
皿洗いをしている間になんか師匠と弟子的イベントをやってる2人を見てちょっと悲しい気分になった。僕ほぼ雑用だったから修行感無いし、モルガさんもあの2人に付きっ切りになるとしたら僕はまた放置される感じになってしまうのか……やっぱり見て盗む感じで行かないとダメそうだな?
「教えてもらうだけが師弟の関係性じゃないか。どうにかモルガ師匠が【領域】を使っている所だけでも見る事が出来れば何か掴めるかな?」
何かヒントを掴むには使っている所を見る事が一番だろう。正直見ただけで掴めるかと言われれば武道とかでは無いので難しさは比じゃないと思う。見て覚えるのは割と得意だけど魔法は見て覚えるとか果たして出来るんだろうか?
片や師匠に教えを請い、片や師匠から技を盗もうと画策する。教え方の違いで技を学ぶアプローチがここで変わった




