憶測の帝
「フォヴォスがどうしたの!?」
「急に倒れて苦しみ出したんだ。ハチなら何とか出来るか?」
「分からない。でも、出来る事は全力を尽くすよ」
これは、詳細は分からないけど、その可能性はかなり高いとは思う。どっちにしても容体をすぐに確認しなければ
「フォヴォス!」
「よ、よう……ハチ……」
「無理に起きなくて良い。一旦そのまま」
特攻服を着たドラゴンが弱弱しい表情で地面に横たわっている。これは、もしかして人間形態にもなれない位弱っているのか?
「今の自分がどんな状態なのか、説明出来そう?」
「前々からなんかもやもやした感覚はあったんだ……でも、今はそのもやもやが体の外まで飛び出る位、気持ち悪ぃ……」
もやもやが体の外まで飛び出る……つまりはフォヴォスの内側から何らかの影響が広がっているとみて間違いない。これは……
「フォヴォス。前に話した事覚えてる?」
「どの話だ……」
「フォヴォスが龍王を越える存在だって言った話」
「龍帝……だったか?」
「そう。今のフォヴォスはそれになる直前かもしれない。最近僕って全然レベルアップとか起きなくて不思議だなぁとは思ってたんだよ。でも、フォヴォスが龍帝になる為のお手伝いをしていたと考えると、それも納得出来るんだよね」
詳細なんか分からない。でも、こうして言葉にした方が未来は良い方向に変わるかもしれない
「自分自身が強くならなきゃ……そう言うのは意味無ぇんじゃねぇか……?」
「それはそうかもだけど、フォヴォスは1人で生きてる訳じゃないでしょ?親や仲間達と一緒に生きて来たから今がある。そして、今はレース場で皆を盛り上げるそんな君を応援したいって思ったら、僕も気付かぬ内に君を応援していたのかなって。それが経験値の譲渡って形になっていたのかもしれない」
本当の事は分からない。でもこういう事なら僕は納得が出来る
「それなら僕に出来る事は……フォヴォスの苦しみを一緒に乗り越える為に譲渡する為の経験値を更に稼ぐ。そしてフォヴォスをレベルアップさせる。そうすればフォヴォスは龍帝に進化出来るかもしれない。いや、進化してもらう!これは決定事項だ!」
「強引だな……だが嫌いじゃない!良いぜ!もし本当にそうだとしたら、マブダチを信じてこの苦しみを耐え抜く!マブダチを信頼出来なくて何が龍帝だ!」
そんな事が本当に起こるのか、確証なんか何一つない。でも、信じて行動する事で、モニクは僕の嘘として言っていた反逆の悪魔になる事が出来た。だとしたらフォヴォスが龍帝になれない道理なんか無い
「もし、フォヴォスが龍帝になったら、その時は龍帝の剣でも杖でも好きな様に呼んでくれて良いぜ?」
「ふっ、そんなのはもう決まってるさ……」
おっ?これはもしかして何らかの称号が貰えるかもしれないな?
「オッケー。それじゃあその時を楽しみにしてるよ。ファーカイン。何処かに強敵とか居ないか?フォヴォスを救うには経験値が要る。強い奴を倒して、フォヴォスに多くの経験値を渡す」
「そういう状態なのか……」
これで失敗したら割と本気でファーカイン達と決別する形になるだろう。それは正直かなり怖い。でも、ここで自分を信じないでどうする?未来の形は無数にあれど、それの1つを掴み取るのは自分自身だ。誰よりも欲しい未来を自分の手で手繰り寄せないでどうする?
「僕はこういう命が掛かっている時はいつでも本気だ。ファーカイン。強敵が居る所を教えてくれ」
「……分かった」
娘を助けたいハズのファーカインがここまで言わなかったって事は相手は相当厄介な敵なのかも……
「この地より西にとある島がある。そこに住む3首のドラゴンが居る。ソイツを倒せば、大量の経験値は得られるだろう」
「ファーカイン。その3首のドラゴンは知り合いなのか?もし、そうなら僕は動かない。知り合いを自分の為に殺されたとなったら、絶対にフォヴォスが後悔する」
自分が助かる為に他を犠牲にする。これは正直フォヴォスも好かない考え方だと思う
「いや、奴は死にたいんだ。死にかけの状態で長く生き過ぎて皮膚は朽ち、地面や、自身の体に貼り付き、動くだけで血が辺り一面に飛び散る。瞳は白く濁り、前も僅かにしか見えない。だが、そんな状況でも死ねない」
なんだ?何らかの不死属性みたいなのが付いてるのか?
「奴は本来、もっと早くに死に、冥界に行くべきだった。だが、封印された事により死ぬ事も出来ずに未だに生きている。朽ち征く肉体を放置してしまえば、奴の魂さえ穢れてしまう。後100年は持つとは言われているが、それは奴の精神が持てばの話だ」
封印によって生かされたまま、体が腐っていくみたいな感じか……しかもそのまま放置してしまうと精神まで死んでドラゴンのゾンビみたいになってしまうかもしれないのか。それは確かに精神がある間に倒してあげる事が相手にとって良い事なのかもしれないな……
「分かった。ソイツを倒す。ただし、ファーカインも一緒に来てくれ。フォヴォスを連れて来る為に」
「フォヴォスも連れて行くのか!?」
「フォヴォスが本当に龍帝になるかは分からない。でも、しっかりと同族の死を受け入れられる存在にならなければ王よりも更に上の存在になる為の覚悟が足りないと思う」
絶対に死という物は避けられない。だからこそ、死についてもしっかりと考えて、強大な存在からの経験値を得る事で龍帝へと進化出来るんじゃないだろうか?




