オーバー・ザ・白玉
「大分……分かって来たわ……本当にお金がそのまま力になると言っても過言ではないわね……はぁ!にしても、お金を使った攻撃方法に強化ね……商人向けのこんな装備を作るなんてハチ君らしいわ」
扇を振るい、同時に5発の銀貨が発射される。銀色の光を纏いながら、カーブしつつ相手の模倣体にホーミング攻撃を仕掛ける。どうやら、銀貨以上の価値がある硬貨はホーミング性能が付くらしい。単純に直線攻撃としては銅貨で良いが、相手も私だと考えるなら、銅貨勝負なんてした所で勝機は無いだろう。何といっても、私は商人だ。戦闘は得意じゃない。ハチ君が居るという心強さであのイベントの時は無謀な位戦闘にも前向きになれたけど、今は私だけ。この場を乗り切るには私の力だけで何とかしなくてはならない
「にしても、簪金一天(心機一転)、華賜商纏(花枝招展)、迅鄭杖扇(人定勝天)って所かしら?今までの気持ちから切り替えろって言わんばかりだし、それに……」
迅鄭杖扇のスキル名。【一擲千金の覚悟】一擲千金って、思い切りよく金を使えって意味じゃなかったかしら?商人は無駄遣いせずに、コツコツ貯めるから新しい商機に一気に突っ込めたりするんだけど?それをこんな戦闘の時に使えなんて……無茶言ってくれるわ!
「さぁ、私のコピーの貴方が幾ら持ってるのか知らないけど、私も今回は大盤振る舞いで出すわよ!」
勿論、金貨を突っ込む事で火力は上がるだろう。でも、金貨を使えば使う程、戦える時間は減っていく。ただ……私にも身を守る為の力もハチ君は一緒に授けてくれた
「凄いわ……本当にバリアが張られてる」
簪にお金を入れる事が出来るとあったが、簪にカチカチ回るメーターの様な物が付いていて、そこに自分の所持金から必要な金額を移す事で能力が発動し、バリアやバフ等が発動するみたいだ。勿論、相手から攻撃を食らえば、一気に減らされるだろうけど、これがあれば、まだ充分に戦える……
「いっかい、むこうのようすをみる?」
「あ、確かに。そろそろ一回見た方が良いかも……それじゃあ、一旦やりあう感じで向こうまで行っても良いかな?その時に一言声掛けたらまたこっちに戻って来て遊ぼう!」
「おっけー!」
いやぁ、ボスだとしても聞き分けがあって助かるぅ。本当にこのボスを連れて行ったり出来ないのが残念だ……
「じゃあ、行くよ?基本は格闘戦で移動するからね」
「いいよ」
お互い最初に拳を外に逸らしたり、内に流したりして、特に激しい音もなく、静かに始まり、移動も始まっていく。距離を取ってから格闘を打ち合う形で、ぶつかる、距離を取る、ぶつかるを繰り返して、徐々に白玉さんの方に移動していく
「はぁ、はぁ……私って……結構戦えるのね……」
「おぉっと!あ、白玉さん。どうですか?」
「ハチ君!大分……苦しいわ。ちょっとだけで良いから……」
「ダメです。苦しいからこそ、あと一歩踏み出すんです。敵を倒すのに、防戦一方じゃ勝てませんよ?うぉ!?流石僕!やるなぁ?はぁ!」
「あ、ちょ……」
その一言を言い終えたら模倣の僕が攻撃を仕掛けて来てその場からまた離れた。まぁ、伝えたい事は言ったから大丈夫だろう
「苦しいからこそ……あと一歩?これ以上何を……あっ……」
ハチ君も自分と戦っているのに私にアドバイスをくれた。というか、多分、アドバイスをくれる為にわざわざここまで来てくれたんだろう。敵を倒すのに防戦一方じゃ勝てない……そんな事は分かってる。でも、どうすればその一歩が踏み出せるのかと悩んだけど、多分これは、あえてこうしていたんだろう
「はぁ……私は商人なのよ?バチバチに敵とやり合うのは私のやり方じゃないの……」
そう。商人とは金の力を使って裏から相手を攻めたりするのが商人らしい戦い方だろう
「でも、生まれ変わるのなら、金の力をド正面から叩きつける位しないとダメって事ね!防御に使う金も必要無いわ!」
簪からお金を戻し、全て金貨にして扇からマシンガンの様に放つ。これだけぶっ放すんだからそれ相応の報酬は貰うわよ!
「よし、そろそろ良いかな。向こうの戦闘音も激しくなったし、勝っても負けても多分自分の為になってるでしょ。こっちの最後の勝ち負けは何で決める?」
「いや、きみのかちでいいよ。ひさしぶりにあそべてまんぞくした」
「そっか。またチャンスがあったら遊びに来るよ。その時はまたなんか新しい遊び道具とか用意するね」
「まってるよ」
いやぁ、良いねぇ?こういう遊べる相手が居るっていうのは。どうしてもこうなっちゃうと、普通に戦うっていう判断が出来ないんだよなぁ。相手も戦いを強制して来ないっていうのも素晴らしい
「それじゃあ、またね」
「あぁ、また」
拳を合わせたら僕の模倣体はさらさらと消えて行った。もしかして、負ける事にそこまで否定的じゃないのも僕の性格を模倣してるから……なのかな?
「はぁ……はぁ……はぁ……勝った!勝ったわよ!ハチ君!」
「おぉ!おめでとうございます!やりましたねぇ?白玉さん」
白玉さんも若干ボロボロだけど、しっかりと模倣体には勝てたみたいだ。これは祝勝会的な事でもしてあげた方が良いかも?




