運営の一幕
「もうやだぁ!何なのこれぇ!?」
「イベント作りしてる最中は見ちゃダメって言われてたけど……これ程とは……」
「ねぇ?なんで?なんで海賊と海戦するっていうイベントがこんなとんでもない事になってるの?」
「幾ら魔法があるとは言え……魔法が飛び交うちょっと派手な海戦になるかなぁって思ってたんだけど……」
イベント製作組が遂に開始したイベントを見る事になり、ハチの造った潜水空母ネレイドとその戦力を見る事になった
「敵の船に乗り込む……ここまではまぁ……納得出来る。けど、まずその乗り込む物がおかしいよねぇ?」
本来は船を横付けして、白兵戦という流れを想定していたが、ハチと、その仲間達はネレッサーと呼ばれる水上バイクの様な物を用いて敵船へ乗船していた
「何より、普通に1人で海賊船を制圧出来るってハチ君の仲間もとてつもない強さだよね」
「普通は!一人で!船を丸ごと制圧なんて出来ないの!」
「そんな事言ったら……アレどうすんの?」
「そうなのよ!何で!船を鹵獲してるの!?どっちが海賊よ!」
海賊を捕獲、お宝も回収、船すらも鹵獲。こちらが出した物全てを回収していく。もはやどちらが海賊なのか分からない……いや、海賊よりも質が悪い
「はっはっは!キレてるねぇ?まぁまぁ落ち着いて。今回のイベントの製作にボーナスがあるから」
「東郷さん!笑ってる場合じゃないですよ!アレどうするんですか!」
イベントで出て来たとてつもない船。潜水空母ネレイド。アレが今後も普通に存在すると考えると、破壊した方が良いという結論に至っても不思議ではない
「あぁ、アレかい?アレはまさに彼のプレイスタイルによって生まれた奇跡の様な物だからね。別に破壊するべきではないと思うよ?」
「でも……」
「君はまだ彼の事を理解していないみたいだね?」
「は?」
そうあってはいけない物だから破壊すべき。そう考えるのも分かる。だが……
「ハチ君はね。改良の鬼とでもいうべき存在なんだ。もしここであの潜水空母ネレイドを破壊出来たとしよう。そうなるとどうなるか……」
「ま、まさか……」
「よりとんでもない物に進化して戻って来る事になるだろうね。これはハチ君を観察していたら分かる事だ」
その観察自体をさせない様にしていたのは一旦目を瞑ってもらうとして……
「それに、彼は未だに成長を続けている」
「それはそうでは?」
「レベル的な話ではなく、人間の潜在能力を引き出すという点だ。彼は我々開発者ですら扱い切れない技術を自身の手足の様に、しかもほぼ補助無しで出来る。一言で言ってしまえば人間離れした技術を会得しているんだ」
本来ならゲーム内での補助を受けて何とか扱える様なハズの物を、殆ど補助無しで動かしている。アレを才能と言わずに何と呼ぶ
「後先の事を考えずに今、あの艦を破壊すべきだと本当に考えているのなら、やると良いさ。その結果としてよりとんでもない物が生まれたとしても……それはそれで面白いだろうさ」
「……」
今でさえ、とんでもない存在がよりとんでもない存在になる……それを考えると、流石にその手が止まる
「ですが、あのやり過ぎな事を考えると、止めるべきなのでは……一部のプレイヤーが突出しているのは……」
「ふぅむ……そうだな。君、大学は出ているかな?」
「え、えぇ……一応……」
「では聞くが、社会には高卒、何なら中卒で就職した者も居るだろう?」
「……」
隣に居る彼女は確か高卒でこの会社に入社したハズだ
「では尋ねる。中卒、高卒の者達が大卒の者に初任給が高いと……突出しているからその差を埋めろと言うのは君の中で納得が行くか?」
「それは……」
「すまない。ちょっと例えが良くなかったな。他の者より努力した者が評価されない。そんな環境を君は望むか?」
「……望みません」
大事なのはその状態に至るまでの努力を無視してはいけない。自分達が見落としていた可能性を発見してくれたのに、それを自分達が考えていた物じゃないから消すというのは、あまりにも製作者として驕りが過ぎると考える
「さっきの例えで出してしまったのは申し訳無かったが、中卒や高卒も、大卒よりも先に社会に参加しているというアドバンテージがデカいからな。この会社の未来を作っていく為にも、若いのは頑張ってくれよ?」
正直、学歴なんてどうでも良い。会社にどれだけ貢献出来るか。どれだけ面白い案を出せるか。そういう所が我々にとって求められている
「なんか……ごめんなさい」
「何で謝んのよ……それにしたって、努力してるって言われちゃうとね……」
親に迷惑を掛けない為に高校卒業した後すぐに就職してこの会社に入社した時の事を思い出すと、自然とハチ君に対して親近感を覚えてしまった
「もう解禁されたからちょっと彼の情報を……って、うわぁ……これは本当に凄いわね」
「はぁ!?なんですかコレ……こんな事が……」
そうして、ハチ君の情報を確認した事で、今までのとてつもない遍歴を見た事で、顎が外れるかと思ったイベント製作班の2人であった




