缶詰爆弾
「な、何だお前ぇら!?」
「どうも、この船を」
「頂きに来たわ!」
船首から乗り込み、海賊達に挨拶する。もう白玉さんも缶詰を投げようと秒読みだ
(白玉さん。少し待って下さい。まだもう少し海賊が集まるまで待ちましょう。大事なのは如何にその1発で被害を増やすかです)
(そ、そうね……少し焦ってたわ)
相手にバレない様にウィスパーでまだもう少し待つ様に言う
(僕が注意を引きます。なので、もう僕に当てるつもりで投げて構いません。今回はその匂いの爆弾をどれだけ多くの相手に当てるかですから、お願いしますよ?)
(ほ、本当に大丈夫なの!?)
(ええ、その為にコレを着てるんです)
このカッパというかレインコート的な物を着ているからそういった無謀な事が出来る。逆に言うと、この状態で敵に攻撃を食らってコレが破けたりしたら……まぁ、絶体絶命だよね
「やぁやぁ、どうしたんだいそんな腑抜けた顔をして。んー?せっかく挨拶しに来たんだ。船長さんはどこかなー?」
「何だコイツ!?」
「お、おい!船長を呼べ!」
「こんな奴船長なんかに会わせる必要はねっ……」
「うるさいなぁ?全員。船員も船長も関係なく出せっつってんだよ。もれなくぶっ倒してやるから」
甲板の真ん中まで歩いて行って敵の注意を引き、突っかかって来た海賊の鳩尾に一撃入れて倒す。これで、ジリジリと距離を詰めるかどうかの判断と船長を待つという判断が嚙み合って膠着状態を生み出せる。この状態なら白玉さんよりまずコッチに注目も集まって缶詰も投げやすいだろう
「ふぅ、少し待ってやる。椅子になりたい奴は掛かって来ると良い。まぁ、俺からよそ見したらどうなるか……それは保証出来んがな?」
鳩尾に一撃入れて倒れている奴の背に座る。船長の登場を待つのと、少し遠巻きの敵からの射撃とかが来ない様に僕の周りを囲んでいる奴をブラインドにする。勿論さっきより隙は増えるから近い奴は更に僕に注目するだろう。ここからは大変だけど、オーラで敵の動きをしっかり観察。そして、妙な動きをしそうになった奴の武器を真淵で叩き落とす。こうする事で、僕は何もしてない様に見えるし、白玉さんの方が何かした様に感じるだろう。それで良い。ど真ん中で目立つ1人と、端に立って何かしてきたと思えるもう1人。こういうのってどっちもやべぇ!という恐怖感で更に足止め効果が上がる
「て、てめぇ……何モンだ?」
おっ、船長が出て来た。一応、もう全員出てきたかな?よし、それじゃあ早速やるか
「アンタがこの船の船長か。ふっ、丁度良い。贈り物があるんだ。受け取れよ」
白玉さんに目配せをすると、中々の剛速球缶詰が飛んで来た。流石にあの勢いで投げられた膨らんだ缶詰が破裂しない訳が無い
「「「「「ぐおぉぉぉぉ!?」」」」」
物凄い匂いが周囲に広がる。僕も一応呼吸しない様に息は止めているけど、それでもヤバい。これは目に来る
「っ!」
流石にこれは想像以上だ……真淵でさっさと残っている奴を倒して、全員倒したのを確認したら海に飛び込んだ。ふぅ、やっと深呼吸出来る……
「いやぁ、ちょっと想像以上でしたね……」
「何!?何アレ!?完全に兵器じゃない!?」
普通に目にも来るという催涙ガスの類と言っても良いレベルの物だった。アレを食べるのは……いや、流石にちょっとヤバい気がする
「アブダクター部隊。後は頼んだ……」
ここは申し訳ないけど、アブダクター部隊にあの海賊の捕獲は完全に任せる事にする。ネレイドに戻ったら今回同行してくれたアブダクター部隊の洗浄を手伝おう
「うん、あの船は無理だな。仕方ない。キールブレイカーで撃沈してくれる?」
『了』
流石にあの缶詰の匂いを落としきれる気はしない。あの船は売れないだろう。お試しでやってみたけど恐ろしい結果になったな……仕方ないけどキールブレイカーで撃沈して海の藻屑となってもらう他ない
「ちょっと!本当に大丈夫!?」
「ええ、大丈夫です。白玉さんの方は?」
「私の方は問題無いけど……あんなの地上でやらなくて良かったわ……言っちゃ悪いけど、船の上だから沈めて何とかなるとも言えるし……」
船がキールブレイカーによって沈む前に白玉さんも海賊船から飛び降りて、ネレッサーに既に乗って待っていた。本当に凄まじい一撃だった……これは……流石にハスバさんでもダメかも知れないな
「でも、見て下さい。これが白玉さんのやった戦果ですよ?商人だって船の1隻沈める位簡単だったでしょ?」
正確に言えば違うけど、そんな事はどうでも良い。今回は白玉さんに自信を付けさせる事が目的だし
「私1人の力というのは語弊が有る気がするけど……そういう事にしておくわ。私でもこれだけの事が出来る……お金、コネクション、交渉……どんな物も戦いに活かせるって事が今回凄くよく学べたわ」
まぁ、確かに僕も正面から戦う事もあるけど、一番大事なのは相手の精神状態のコントロールだと思う。自分だけに注目させたり、相方との信用を揺らがせたり、色々出来る力がある。お陰で戦場をコントロールしやすいし。商人として交渉技術で相手に自分が望む形で取引をする為に磨くべき技術でもあるから、その辺結構戦場をコントロールする立場に商人というのは合ってると思うんだよなぁ……




