もう一方
「うぅ……」
「また唸ってるの?いい加減諦めなさいな」
「だってぇ……」
「すまないとは思っているが、やはりハチ君と対等の立場になる為には別で参加するべきだろう?」
「そうだとは思いますけど……」
「まぁ、ハチと一緒にって言うのは分かるわよ?でも、あの子達を放置して私達がハチの所に行くって言うのは違うでしょ?」
女性プレイヤーで構成された私やアイリス。キリエやキリア達のクラン。ガーデンでは悪質なプレイヤーに絡まれていた子や、孤立していた子などが、ここに入って前向きにゲームをプレイ出来る様な安心出来る場所となっていた。だからこそ、そういう人達が一緒にイベントに出たいと言ってくれているのに、その人達を放置してハチ君の所に行きたいと言うのは良くないと言うのも凄く分かる
「何とかここにでっけぇ砲を積めねぇかしら……」
「そんなの積んじゃったら船がひっくり返っちゃうんじゃ……」
「じゃあ、私がぶっ放すしかないですわねぇ!」
レイカもノリノリで船の船首に巨大な砲を積もうとしたりしているな……
「にしても、思い切った事をしたわね?飛行船なんて……」
「飛行『船』なんだから別に良いだろう?ハチ君だってこの位大胆な事はするさ。それに、海賊船とやり合うとなったら、同じ海というフィールドよりも空の方がアドバンテージもある。船の砲の角度だって普通は同じ海で戦う相手を想定して装着しているだろうから、横方面のみだろうし、まぁ、あっても船首に
有るかどうかという所だろう。その時点でこちらに飛んで来る攻撃もかなり少ないだろう」
飛行船だから飛行する為の機関をやられると途端に苦しくなるが、そもそも攻撃が届かない位置から一方的に攻撃が出来る状態にしておいた方が良いだろう。何より、我々のクランメンバー的にも確かに近接戦闘が強い人も多いが、どちらかと言えば遠距離攻撃が得意な人の割合が多い。ならより効果的な飛行船からの攻撃をメインの攻撃手段にするのは間違っていないだろう
「いやー、アイテムシューターとして戦うのも楽しいけど、やっぱり錬金術師として色々活躍出来るのも嬉しいですね!」
ハチ君が協力した事で新たな戦闘スタイルと言っても良いアイテムシューターと呼ばれるジョブを得たアカネ。この子が今回鍵になる。勿論飛行船造りでも多大に活躍してもらっているが、何よりも彼女の武装の能力。アイテムを実質無限に射出出来る。これは正直飛行船という一方的な攻撃をする為に適した船と相性が良い
「やっぱりハチ君の因子というか、スピリッツというか……協力してもらった人は何かしら尖っているな」
勿論、平凡が悪いという訳ではない。平凡という事は戦力としての計算がしやすい。あまりにも尖った性能はその強さを数値として計算が出来ないから適切な配置を失敗した場合。瓦解するのが平凡な人よりも速い可能性はある……まぁ、ハチ君の装備で早々に瓦解する事はまず無いだろうけど……
「アハッ!追いかけっこ負けないよー!」
「イクエは負けないのです!」
「「あっ」」
キリアとアイリスの刀であるイクエが追いかけっこをしていたら、飛行船の心臓部とも言える気球部分に穴を開けてしまった
「ダメじゃないですか!また直さないと……」
「「ごめんなさい……」」
「いや、やっぱりこれはダメかもしれない。二人が遊んでいるだけで、割れてしまうという事は戦闘の余波で簡単に傷ついてしまう。という事はこの船を浮かす為の機構としては不向きだ。やはり何かしらの変更は必要だろうな……」
「うむうむ、お困りの様だねぇ?」
飛行する為の機構を見直しする必要があるかもと話をした所で後ろから声が聞こえた
「モルガ師匠!どうしてここに?空島に居るのでは?」
「いやいや、今ハチ君達も船造りで大盛り上がりなんだけど……ちょっち暇でねぇ?だったら私の弟子はまだ居たからそっちの方の様子も見ようかなって」
「師匠!どうか、お力をお貸し願えないでしょうか?」
「ほうほう?話を聞こうじゃないか」
まさかのモルガ師匠が力を貸してくれるかも知れない。これは何とか飛行する機関の開発の手がかりが見つかるかもしれない!
「という訳で、気球だと耐久性が無くて、何か別の方法が無いかと……」
「なるほどなるほど。それだったら、風を捕まえて泳ぐスカイウェーバーとか参考になるんじゃないかな?」
「スカイウェーバー?」
そんなモンスターまだ見てない気がする……
「えっとえっと、こんな感じで、パタパターっと動いて空を飛ぶんだよ。だからこの素材とか集めれば空を飛ぶ船にも活かせるんじゃないかなー?」
モルガ師匠が描いた絵は空飛ぶアノマロカリスの様なモンスターの絵だった
「そうか!このモンスターの動きそのものも真似てしまえば何とかなるかも!」
これなら行けるかもしれない!
「キリア、イクエ。ここで遊んでいるのは良くなかったが、新しい物のヒントを見つけられた!感謝するぞ」
よし、ハチ君達がどんな船を造っているかは知らないが、私達は私達で新しい船を造るぞ!




