亡国の姫君
「よーし、出来た!」
「これで起きない奴は居ないだろう!」
足つぼマッサージみたいなイボイボのマットレス的な物に頭は保護する枕。で、そのマットレスの下には微弱な雷を発生させる精霊達が待機して、マットレス自体も僕が真淵で超振動させる事が出来る。これで起きない奴は居ないだろう
「さぁ、目を覚ますか、死ぬかのチキンレースと行こうじゃないか!」
「いやぁー!無理無理無理!流石にそれは無理ー!」
「あ、起きた」
「うーむ、中々の出来だったのだがな?」
「じゃあ一回僕が試してみます!よっと、おぉ、何か健康になりそう【レスト】」
せっかく作ったのに使わないのは勿体無い。起きられるかどうか試してみよう。あ、超振動は使えないや……まぁ、何とかなるか?
「んおおおお!?」
【レスト】で意識を失ってたはずなのに急に眼が覚める。全身を駆け抜ける電流によって起き抜けの怠さ的なのが吹っ飛ぶ!
「あ、これダメージ無いんだ……となると、普通に凄い奴だこれ」
【レスト】を中断出来るのにダメージが無い。本当に起きる為だけのアイテムになった。これはある意味使い道は有りそうな気はするなぁ……
「えぇ……」
「いや、何ドン引きしてるんですか。貴方が寝たふりするから悪いんでしょう?」
「そうだぞ?せっかく用意したのに無駄になる所だったではないか」
「え、これ私が悪いの?」
「はい」
「そうだぞ」
「精霊王様が言ってるんだ。君が悪い」
ふはは、一見おかしな様に見えても、こっちは人数でゴリ押し出来るんだ。どうあっても君が悪い
「普通こんな綺麗な人が囚われていて、眠っているなら王子様のキスで目覚めるのが相場ってモンでしょ!」
「だってねぇ?あれだけ脅しを掛けたのに起きないならもっと強い刺激が居るんだなって……」
「刺激の方向性が違うでしょ!大体何なの……あの意味分からないビンタとか……岩抉れてたじゃない」
「やっぱり寝たふりしてたじゃないですか。ならそっちが悪いのでは?」
「ムキーッ!話の通じない奴!」
一旦、相手のペースを崩す為に話の焦点を起こし方にずらしているけど、この人はそもそも何なんだ?
「まぁ、そんなどうでも良い事は一旦おいておくとして、貴方はいったい何なんです?」
「私?私は所謂亡国の美しき姫君よ」
「あ、そう……」
「ちょっと!話を振って置いて興味無さそうなのは酷くない!?」
「いや、僕としてはあなたの来歴とかどうでも良くて、何でライフリーパーの核みたいになってたのかが知りたかったんで、貴方の正体がドブネズミだったとしても対応は変わってないですよ」
「ドブ……貴方女性の扱いが酷いって言われないかしら?」
流石にドブネズミを例えに出したのは言い過ぎだったかな……
「……そうでしたね。流石にドブネズミは可哀想ですね。ゴブリンだとしてもですね」
「殺す!」
うん、バッドコミュニケーション。でも、これで相手の身体能力とかも多少は分かるかも
「戦闘向きって感じではなさそうだな。何処かの姫って話は本当なのかも……」
「ちょ!?」
殴り掛かって来た亡国の姫の攻撃を躱し、こけそうになっていた所を支える。今の動き的にもかなり弱い人の部類に分類されるだろう。という事は、この人自身の力でライフリーパーになるというよりは、誰かの手によってライフリーパーにされたっていう方がまだしっくりくるかな?
「こけたらお召し物が汚れてしまいますよ?」
「あ、貴方……意外と紳士的な対応も出来るのね?」
「必要とあらば」
うーん……いや、待てよ?キスで起きるの話を冗談で済ませていたけど、王子様のキスで起きるってシンデレ……いや白雪姫だっけ?だとすると、白雪姫が眠った理由って魔女の毒リンゴを食べたから。だから、その流れをこの人に当てはめて逆順で考えて行けば、恐怖の目覚めマシンで目覚める前に、ライフリーパーになってた。だからそのライフリーパーにする何かしらのアイテムが有った。でそのアイテムを渡した誰かが居るんじゃないか?
「とりあえず覚えている事を話してもらえますか?」
「貴方、なんだか印象違い過ぎて風邪引きそうだわ」
「ライフリーパーになってた方が風邪引きそうというのは冗談でもかなり怖いのでお控えください」
「貴方のせいだと思うんだけど?まぁ良いわ。そうね……」
そうして、この亡国の姫様が口を開いた
「確か、記憶がハッキリしているのは、貴方達にライフリーパーから分離してもらった時だわ。その前の記憶となると、確か、何かを拾った様な……そこから意識がぼんやりと無くなったはず。たまに意識を取り戻す時は有ったけど、でも本当に眠ったまま体が動かせない状態みたいで、生きた心地はしなかったわ」
なるほどねぇ……ところでこの人ってこの年代の人か?ライフリーパーが出たり消えたりしているのかもしれないけど、自分で亡国の姫とか言ってるし、何か引っかかる
「ただ、たまに取り戻す意識の中でも、時代が変わっているのは何となく分かったわ。魔法の詠唱とか……」
おっ、それは少し気になるな?




