デビィちゃん
「あぁ、これかぁ……残念ながらスタメンには入れなかったなぁ……あ、返して欲しいなら返すよ。ほい」
邪険のペンダントは能力的にあまり僕とかみ合わない感じだったから装備する事は無かったなぁ……計画が壊れたとか何とか言ってるし、それなら一応製作者に返しておいた方が良いかもしれない
「もう!ホント何でそんなスッて返せるのよー!本来なら呪いの力で外せないってなるハズなのにー!強制装備も効いてないしー!」
「まぁ、だって呪具如きじゃ……ねぇ?」
凶具の枠を呪具が奪えるのかと言えば……まぁ無理だと思う
「これが意味分かんないのよー!というかそもそも呪具を付け替え可能な時点で規格外だって言うのに……」
ん?僕それに関して何か言ったか?多分言ってないと思うんだけど……
「もしかして、これを持ってる間僕の事見えてた?」
「……そうよ。いつか不幸になるかも知れないって確認する為に見てたわよ……」
なるほどなぁ……確かに、不幸をエネルギーにしてたみたいな話をモニクから聞いたし、その不幸を集める為にも、失敗したとか見逃せないか。だから一方的に僕の事を知ってたんだな?
「本当、挫けるって言葉を知らないのかしら……」
「あ、もしかして褒めてる?」
「えぇそうよ!普通の人間じゃ無理だって思う場面でも、貴方は普通に立ち向かっていく。呪いとも上手に付き合って、便利な所は使い倒し、不便な所はカバーしていく……正直そのペンダントを拾われたから不幸のエネルギーを吸う事は出来なかったけど、私の中でもっと色々作ってみたいって気持ちは凄く生まれたわ。だからこうしてここで色々作っているのよ」
「ハチさんには感謝してるですん。悪魔という事で警戒されがちですがん、実際呪具を作り出すその腕は本物ですん。なので、何かしら作るという事に下級悪魔という存在は上級悪魔に勝るともいえるですん。そんな子がウチで働きたいなんて言ってくれたのも、多分ハチさんの影響ですん」
僕そんなに関係無いと思ってたけど、まさかの所に影響が出てた。僕が呪いを物ともせずに色々やって来た事がまさかの1人の悪魔の在り方を変えていたっぽい。モニクの時とはまたちょっと違った影響の与え方だな……
「ええ、そうよ。私は貴方のせいで変わってしまったわ。だから今後も貴方の事を見せなさい」
そう言って邪険のペンダントを僕に返して来た
「それさえ持っていれば、私は貴方の事を見る事が出来る……だっ、だから使わなくて良いから持ってなさい!」
「そっか。それなら別に持っていても良いかな。じゃあ、まだ持っておくことにしよう」
一度返したはずのアイテムをもう一度持つ事になったけど……ちょっと感動的というか良いシーンっぽいけど、でもこれって隠しカメラと盗聴器が入ってるって知った物をもう一度渡されたみたいな若干不思議な感じになったなあ?
「勿論、これからも貴方の技術は参考にさせてもらうわ。私がここでやって行く為にもね」
ほうほう、そういうね?またこれは信楽さんも良い商売してるわ。悪魔が僕の事を見てやる気を出して物を作ってる最中にビックリさせる邪魔をして、良い物が出来たらそのままお店で販売と。それは確かに手放せないというか……実際に呪いのアイテムが出来たとしてもそれはそれで良いと思うし、その分失敗で扱いやすい物とかが出来れば雇ってる側からしたらかなり嬉しいだろうし、どう転んでも良いのかも知れない。呪いのアイテムだって需要が完全に無い訳じゃ無いからね
「というかそうか。情報これで抜かれるのか……」
「設計図とかを作った時とかはチラッと見たりはするけど、貴方のアイデアを奪おうって気では無いわ。私にアレが再現出来るのかって技術を高める為に見てるだけだから」
「今回のは流石にまだ無理そうだねん」
「見てなさい!いつか絶対にアレより凄い物を作ってやるんだから!」
これは純粋に技術を極めたいタイプか?出来上がった物が呪具じゃなくても良い物なら関係無いとなると、これは技術力のある下級悪魔というかなり素晴らしいメカニック的な存在だろう。後ろでうんうんと静かに信楽さんが頷いている
「見てなさいよ!私の技術力でギャフンと言わせるんだから!」
そういう言葉って中々聞かないよねぇ……
「ところで、お名前は?」
「え?」
「いやいや、せっかく優秀な技術者って事ならもしかしたら力を借りたいって時もあるかも知れないし、名前は知っておきたいなって」
「……デビィよ。悪い!?悪魔だからデビィって名前で!」
何だか急に名前で男女判別されて殴り掛かって来そうな感じだなぁ……
「いや、普通に可愛くて良い名前じゃん?ねぇ?信楽さん」
「うんうん、勿論ここの看板娘はこのウチですん。でも、裏の看板娘はデビィちゃんですん」
「デビィちゃんって呼ぶなー!」
いやぁ、仲良い2人だなぁ?
「良い物もいっぱいあるし、出来れば島にも来て欲しいけど、基本移動は馬車だしなぁ……あ、そういえばここは何処の街です?」
確か、店舗があって、移動する馬車とその入り口が繋がってるって話だし、実店舗が何処にあるのか分かれば来やすいかも?
「んー、それはまだ言えないねん。だから、その時が来たら、是非ご来店お待ちしておりますねん」
なるほどなぁ……これはここの実店舗を見つけないとダメなのかも知れないな?




