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アビス

「なっ!貴様、我が先に聞いているのだぞ?答えよ」

「何様か知らないから僕も聞いてるんですけど?」

 いきなりの偉そうな態度。真っ暗空間で正しく右も左も分からない状態なので先に情報が欲しい。体も縛られてるし……


「貴様いったいどういう神経をしているんだ?我の匙加減ひとつで擦り潰す事も出来るのだぞ?」

「じゃあ、今体を縛られてる感覚はあなたがやってるって事ですね?姿見えないけど」

 締め付けたり緩めたりされてるから本当に擦り潰される可能性はある。ちょっとここからは慎重に行くか?


「どうだ?恐ろしいか?」

「いやぁ、別に怖くは無いかなぁ?」

 大体この空間から考えるに、見えない相手はアトラさんとかヴァイア様よりも強い気がする。となれば死ぬにしても一瞬で怖いとか考える前に死ぬ気がする。となれば怖がる必要無しだ


「……ならばこれでどうだ?」

「おぉ?なんか少しざわざわっとしましたね?まぁ一瞬ですけど」

 締め付けが強くなって急に冷たい視線を全身に浴びせられる感覚に陥った。だけどそれも一瞬でいつもの状態に戻る。なんだろう?前にアトラさんにも似た感じの視線を向けられた気がする。ひょっとして恐怖か何かの状態異常を掛けられそうになったのかな?


「分かった。貴様さては馬鹿だな?」

「ちょっと失礼過ぎませんか?あと、この縛ってるのそろそろ解いてくれません?」

 馬鹿は酷いんじゃないか?


「ならば貴様の名を名乗れ」

「僕はハチって言います。廃坑の浄化をしてたら真っ暗な穴があったので入ってみたらここに繋がってて今縛られてます。で?あなたはどんな方なんですか?」

「この状況でも臆せずに自分を通すか……ふっふっふ、面白い奴だ!褒美に死でもくれてやろうか?」

「それは褒美じゃ無いですね……褒美ならあなたの名前を教える。でどうです?」

 この相手も褒美に死って言うあたり、かなりぶっ飛んでるな……


「まあ良い、教えてやろう。我が名はアビス。この場所こそが我だ」

「アビス……って事はここは深淵とか奈落って言われる場所?」

 僕、この世界の底の底までやってきちゃった?


「ほう?そのくらいの知識はあるようだな?死ぬか?」

「事あるごとに死ぬか聞いてくるの止めません?死ぬのが褒美とか狂人じゃないんですから」

「む?貴様狂人では無かったのか?」

「ひどっ!?」

「ここに来る事が出来る時点で相当だろう?」

「………」

 正直何も言い返せなかった。飛び込んだ後でもう少し準備してから飛び込むべきだったと後悔もしてたし


「どうだ?自分が狂人だと分かったか?」

「ちょっと慎重さが足りなくて好奇心に負けただけです」

 狂人では無い事を伝える。まぁこのアビスさん?に伝わるかは分からないけど……


「好奇心!それならば仕方ないな!」

「おっ?」

 何か琴線に触れたのか、縛り付けていた拘束を解いてくれた


「未知の探究は素晴らしい。まぁ貴様も面白そうだと思ったから覗き穴を繋げてみたらまさか入ってくるとは思わなかったがな?」

「あれ、覗き穴だったんですね?」

 アビスさんが作りだした覗き穴があの廃坑にあった穴みたいだ。あの穴は出たり消えたりするのかな?あれ?だとしたら僕帰れない可能性が……


「この空間が我だからこそ、外の世界を見てみたい。その為に面白そうな奴を見つけたら覗き穴で見ていたが……穴に気付いて、尚且つ入ってきた奴は貴様が初めてだ!これを狂人と言わずに何という!」

 んー、多分だけど褒めてくれていると受け取って良いんだろうか?


「とりあえずその狂人呼ばわりはやめてもらっても良いですか?ひょっとしてアビスさんも地獄とか言われるの……」

「貴様、我を地獄呼ばわりするのは許さぬぞ?」

 また体を拘束された。さっきよりもかなり強めで痛い……


「それと同じです!僕も狂人呼ばわりされるのは嫌なんです!」

「うむぅ……そうか。それは済まなかった」

 体の拘束が解かれる。ちゃんと理解してくれたみたいだ。ヘルとアビスは別物って考え方もあるだろうし、アビスさんはそういう考え方なんだろう


「えっと……アビスさん?それとも様の方が良いですか?」

「それならば様にせよ」

「アビス様、ここはアビスって場所でアビス様は外の世界には出られないって事ですか?」

「うむ、外の世界と我が混じる事が出来ないからな。だからここから世界を観るだけだ」

 この空間そのものがアビス様で外の世界とは隔絶されているって事か。本格的に僕帰れないのでは?


「アビス様が外の世界に出られないのはきっと世界が崩壊するからとかそう言う感じかな?僕は帰る事が出来ますかね?アビス様でも無理でしょうか?」

「いや、元々外の世界の存在の貴様なら出る事は可能だろう。我の覗き穴を潜ればな?」

 僕の目の前に廃坑の小部屋と思わしき風景が丸く映っている。ここに入れば小部屋に戻れそうだ


「じゃあこれで帰れ……」

「だが、簡単に帰すのもつまらないな!少し遊んでいけ!」

「えぇ……」

 急速に覗き穴が消える。遊んでいけって……まぁ外の世界を見るだけだったのが自分の場所に来たらそういう気持ちにもなるか……


「2体で良いか……この場でどう戦うのか見せてくれ!」

 ボトボトッという音が聞こえた後、シャァァァという声の様な物が聞こえた。感覚的に蛇っぽい気がしたけど……待って?姿が見えないよ?


「遊んでいけって……この場で戦えって事!?」

「あぁ、楽しませてくれたら元の場所に帰してやろう!」

 見えない敵2体との勝負……僕、生き残れるかな?



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― 新着の感想 ―
[一言] キャーアビス様ー
[気になる点] わぁい、何故か裏ボスの眷属と戦うぞぉ!!
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