死神さんの一撃
「いやな?急に冥界と地獄を繋ぐ様な滝が現れたと聞いて様子を見に来てみたら、水源も無ければ滝壺も無い。変な滝だと聞いて確認に来てみたら見知った顔が居てな?」
「ご迷惑を掛けてしまってましたか!?すみませんすぐに片付けて……」
ヤバい。地獄のこの辺なら誰にも迷惑を掛けないって思ってたんだけど、ダメだったか
「それは別に問題はない。むしろ、亡者がここに見に来て滝を登れば……と考えた所で滝の中にハチが居るという事に気が付いたらすぐに自分の仕事に戻っていったさ」
何だか威圧感だけはあったみたいだな
「にしても、これはいったいどうなっておるんじゃ?」
「これ自体は深淵の神様と深海の神様との合作みたいな感じですかね?それで修行させてもらってます」
「深淵と深海……全く、ハチの交友はどうなっておるんじゃ?普通は神と交友があったとしても、そう簡単に力は貸してもらえんと思うが……」
「退屈だったから楽しませてくれみたいなのに乗って色々とやってたら僕の事にもお手伝いして頂けるようになりましたね?」
「そうか……まるで意味が分からんな?」
ダメかー。まぁでも、まるで意味が分からんと言ってはいるが、神との交流について否定している訳では無く、何でそうなってるんだ……みたいな呆れ?みたいな感覚なのかな
「あの、修行に戻っても良いですかね?なんかあの負荷が丁度良くて……」
「ではワシも少しその様子を見ても構わんか?ハチがどういった修行しているのか気になってのう?」
「別に良いですよ?何なら妨害的な事で僕に負荷を掛けるとかでも」
普通に死神さんからの妨害ってどんな物なのか気にはなるから僕としてはむしろ受けてみたい
「ふぅむ……ワシが出来る妨害は身体の能力を一時的に殺す程度かのう?右腕を殺せばその間右腕は全く使い物にならなくなるとか、そういった物じゃな?それが何かに活かせるかというとな?」
一時的に身体能力を殺す……表面的に受け取れば死神さんに攻撃されたら、その部位から先が動かなくなるみたいな物とも思えるけど……身体能力。これってスキルとかも含まれたりするんじゃないかな?腕力強化みたいな能力を発動中に腕を攻撃して両手を使えなくさせるのは、単純に腕を殺すというのと、その能力を殺すみたいな2つの可能性がある。ちょっと聞いてみよう
「もしかしてですけど、一時的にスキルとかも消せたりします?」
「それが可能か不可能かという事なら可能じゃ。だが、心臓に近い位置にあるその能力を司る部分を殺さなければそれは不可能だ。そもそも、そんな位置に攻撃が通るという事はそのまま心臓にも攻撃が通って心臓を殺して相手は死ぬから、ほぼほぼその能力はないに等しいぞ?」
うぅむ……そうなると、流石に一度全部のスキルを殺してもらって精神を更に鍛えるとかしてみようかと思ったけど、それは無理そうだな
「なるほど。分かりました。じゃあ、水の中に入ったら僕の手足だけ殺すとかやって貰っても良いですかね?普段と違う状況で精神に負荷を掛けてどうなるか試してみたいです」
両手足を封印する事で、圧倒的な不安感が僕を襲うだろう。だが、それでいい。その精神負荷が今の僕には必要なんだ
「そうか。分かった。引き受けよう」
「では、お願いします」
「征くぞ!」
滝に戻り、真淵の上で立っていた僕に死神さんの大鎌から魔法攻撃が飛んで来る。それが僕の両手足を掠ると、途端に両手足に力が入らなくなり、滝の力で真淵の上で磔にされている様だ……これは……死神さんの一撃が僕が体を動かそうとする命令をゲーム内で受け取れなくなって手足が動かないって状態になるのかな?神経を斬られた感じなのかも知れない。これは焦るな?良い精神負荷だ
「あぁ……手足に力を入れているつもりなのに、全然立ち上がれない。滝の力もあるけど、これは恐怖感じちゃうかも」
「そう言っている余裕があるならまだまだいけそうじゃのう?ほれ」
そうしてどう切ったのかは分からないけど、首から下はまるで動かせない。この感覚……もはや懐かしさすら感じるな
「事故の時を思い出す……でも、あの時と比べて僕も成長してるんだ」
体が動かない。その恐怖は事故の時に受けたとてつもない恐怖の1つではあった。でも、1度経験したからこそ、体が動かせないという恐怖も耐えられる
「自身の体を真淵で制御する……」
体の制御を真淵に委ねて、正座で祈りのポーズを取る。よし、死んでいるのは僕のスキルだけで、シスター服の方のスキルは死んでない。キチンと祈りで回復出来る
「なるほど……死神さんの一撃ってこれじゃ回復出来ないのか」
聖女の祈りで滝に打たれて受けるダメージを回復しているけど、体の制御は回復しない。死神さんの一撃は普通の回復は受け付けないのかな?
「余裕があったらその力は習得してみたい所だなぁ……」
一時的とはいえ、相手の体の一部位だけでも無力化出来るというのはかなり強力な攻撃だろう。どうにか学べないかなぁ?




