魔真淵
「なるほどな……これは面白い」
「人間の限界を調べるって思ったら、まずハチで試してみるのが手っ取り早い気がするね!」
「そうかぁ?もうハチは半分以上人間卒業してないか?」
「さて、次。行くぞ」
「はぁ……はぁ……はぁ……お願いします!」
皆なんか喋ってるけど……今回の特訓も中々辛いぜぇ……?紆余曲折あり、風の砲弾にどう対処するかという話になり、真淵で対処する事には変わりないけど、今回は、流線形で守るのではなく、消してみろとの事。その為さっきから何度も失敗して吹き飛ばされている
「風圧には風圧で対処だ!」
「いやいや、ここはハチの言う流線形を活かしてだな……」
「折角ならハチを磔にして真淵だけで対処させよう」
特訓するのは良いんだけど、今回は3人居るからか、方針がバラバラで多分このままじゃ先に僕がボロ雑巾みたいになってしまう。まぁ、もうさっきから磔にされた状態でハスティル様の暴風に吹っ飛ばされまくってるんだけど……真淵でしっかり、着地しないと、顔面から落下してしまう
「一応、この風って……魔力で発生してるのかな……」
とりあえず磔にされた状態だけど、まずは風を無効化する術を考えなくては……
「それ、行くぞ!」
ハスティル様が風の砲弾を放つ。一応、最低限の防御の為に真淵で体を覆ってるからまだ死んでないだけで、対処が出来なければ、まぁ大変な事になるのは変わりない
「やっぱり、このオーラの動き的に魔力か、それに類する力の介入が無きゃ起きない……」
そもそもの話。深淵に風はない。だからこそ、この風を起こすには何らかの介入が必要になる。それがオーラで見えていると言って良いのかもしれない
「ぐあっ!」
巨大な真淵触手を出して、風の砲弾を叩き割る。を試しているけど、多分それをするにはまだ真淵の絶対量が足りてない。このやり方じゃ今の僕には再現性が無い
「ふぅむ……行けると思ったんだがな?」
「ほらほら、ハチぃ?何か解決策を思い浮かばないと今回はヤバいぜぇ?」
「出来るまでやるぞ!」
ハスティル様もノリノリになっているからマジで出来るまで終わらないだろう。となったら、別のやり方を模索しよう
「砲弾全部に対処はしなくて良い……僕に直撃する部分だけを何とか出来れば……」
思考変更だ。クタルファ様に言われたやり方は今の僕には実現不可能。であれば、今の僕に実現可能な手段で実行しなければ、ただただ痛めつけられるだけだ
「「「む?」」」
「うわっ!」
磔ごと飛ばされるのにも慣れて来た。着地は真淵でしっかり着地しないと、地面に落ちる時の衝撃がダイレクトで僕に来る。だからデカい1つの真淵で弾くのを失敗したら、即座に細くて何本も出る真淵に切り替えて、地面に着地している。だから、まず最初から着地しやすい様に細くて何本も出せる真淵の状態で風の砲弾を切れないか試してみた。結果として少し吹き飛ばされてしまったけど、今までよりはその吹っ飛ばされ量も減った気がする
「もう一度……お願いします!」
磔を真淵で立てて、もう一度風の砲弾を喰らう。今の結構良い感覚だった気がする。だからこれを発展させればチャンスがあるかも!
「……良いだろう!」
ハスティル様は少し貯める動作をしてから、風の砲弾を放って来た。それは先程までの砲弾よりも倍近く大きい。でも、速度は遅い。つまり対処出来なければ、今度こそ八つ裂きかも知れない
「あれは、形が無い訳じゃ無い……」
風魔法。普通に考えれば物理的攻撃でどうこう出来る物ではないだろう。でも、この無風空間で、風により吹き飛ばされる程の威力を出すというのはどういう事か?それは、僕の仮説では2つ。1つは魔力等の力によって、大気を圧縮して放ったり、押し出して、攻撃している可能性。もう1つは魔力等を風属性に変換して、風という形に変えて放出している。このどちらかだと思う
「つまり……は」
あの風を形成。もしくは威力を持たせているのは魔力等が干渉している部分。その魔力干渉を破壊出来れば、あとは不自然に集められた風は、自然に霧散するはず……つまり威力を激減させる事が出来るハズ
「魔を纏う真淵」
真淵に僕の魔力を纏わせ、可能な限り高速で振動させる。超音波ブレードの様に
「「「おぉぉ!」」」
魔力を纏わせ、振動した真淵は風の砲弾のオーラの流れを断ち切った。すると、僕の所に砲弾が到達する事にはそよ風が吹き抜ける程度しか来なかった
「ぷはぁっ!これは……普通にしんどい!」
真淵に魔力を纏わせるのはまだ出来る。ただ、真淵を振動させるのが凄く難しい。常に筋肉を痙攣させる感覚の倍以上?位の気持ちで震わせ続けるのがあまりにもキツイ。これは瞬間瞬間で使うくらいにしないと、ダメだな……でも、これなら手足が使えない場面でも、覚えれば相手の魔法攻撃とかを防げるかも!
「おいおいおい……今お前神力込めてなかったか?」
「ほんの少しだが……」
「ハチくぅん……君は何処まで楽しませてくれるんだい?」
本来なら防げないはずの攻撃を防いだ事により、静かに盛り上がる3柱であった




