試験という名の研修
「はい、お疲れ様でした。まずは第一の試験終了となります。少し休憩時間を挟みます」
他の人も見ていたけど、流石にこれでミスるような人は居なかった。数人手際が良くてあっという間に終わらせている人は居たけども……
「さて、これでどうなるかな」
休憩時間の宣言をしてからその場から一旦下がる。バニシングクロークを纏って休憩中の皆の態度を確認だ
「あなた、こういうのは初めてかしら?」
「……はい。仕えていた方がこういうのとはあまり関係が無かったので」
おっと、早速ショーコさんに絡みに行く人が出て来た
「ん?まぁ良いわ。貴方現状だとかなり不利よ?」
「正直、ここには他の人がどの位の実力か見て来いって言われて来まし……あっ」
あっちゃー、これはもうほぼ言っちゃった様な物だな。こうなってしまうと……
「そ、そうなのね……失礼するわ」
聞きようによっては試験官側の存在とも聞こえそうだし、下手に近寄るとボロを出すと思われるだろうし、逆にここですり寄って来る様な相手はこっちからしても厄介な相手とも思える
(今の話を聞いてすり寄って来る相手無しか。これは全員中々優秀かも知れない)
ハングリー精神が……みたいな話ではなく、受かる為に危ない存在には近寄らないって事だろうな
「失言してしまいました……」
まぁ、ショーコさんも反省してるし、勿論僕は他の人を採点とかもしなきゃいけないから時間はそこまで割けないけど、でもまぁ、意外と?他の人に対する悪口的な物は無かった所は全員プラス評価だな。こういう時は1人位「アンタはこの場には相応しくないですわ!」みたいなのが出て来るかと思っていたけど、そんな事は無かった
「休憩は出来ましたか?では次の試験です。貴方達にはお茶を入れて貰います。お茶菓子を作れるという方が居たら、それを出しても構いません。但し、制限時間は伸びないので、こちらで既に用意された物を使うか、自作するかはお任せします」
お茶菓子を作れるのは凄い良い点だと思うけど、時間が掛かり過ぎるならそれは良くない。そもそもお茶菓子は単なる付け足しであって、大事なのはお茶の方だ。紅茶だろうが、緑茶だろうが、こっちの方がこれから沢山使う技術だろうし
「では、まず仕込みをしたいという方は?」
「「「「はい」」」」
数人の手が挙がった。まぁ、それならやって貰おう
「では、こちらでお願いします。あ、勿論喧嘩等したら減点対象ですので、協力はして下さいね」
一番大事なのは他の人と不和を起こさない事。この人嫌いだからと邪魔するとかはもっての外だ
「さて……ポン君。ブーストよろしく」
「うい」
今回はポン君のブーストを使い、オーラのみで全員を観察してみよう。範囲内なら壁の向こうでも分かる。扉も少し開いていたから音も一応伝わって来るし、これでどうかな?
「あの試験官の方……魅了が効かないって相当な実力者よね……」
「すぐにお出しするって事を考えたら、既に用意されているお菓子を使うのが良いわよね……」
「えーっと、紅茶を出す手順は……」
皆色々考えて準備してるな。色んな人達が準備している様子が知れたけど、これ位は余裕で出来る様になったか僕……
「まぁ、そうなるよなぁ……人間相手と、神様相手じゃ勝手が違うよな……」
相変わらずショーコさんは紅茶の準備も大変そうだ。でも、こうして人のやり方を学んでくれれば、神様と人間に両対応出来るスーパーショーコさんになれるだろう
「あんまり肩入れし過ぎるのも良くないだろうけど、紙を貼っておく位は良いだろう」
全員が見える位置で紅茶の入れ方とかを記したメモを貼りにいこう
「念の為、こちらに紅茶の入れ方を貼っておきます。勿論、自分流のやり方があるという方はそれでも構いませんが、緊張して覚えていた内容が飛んでしまったとか、そういった時にお使い下さい。あ、皆さんで見れる様にメモを剥がして持って行くのは勘弁してください」
まぁ、試験として見れば大分緩すぎな位だけど、こうして、分からない事は分からないと認めて見に来る事は恥ずべき事じゃない。分からないのに見栄を張って、問題を先送りにする方がマズイ
「……だいたい分かった」
「この淹れ方……凄い良いわね。私も参考にしよう」
他者を認めて、柔軟に変化、対応出来る者こそ今求められている人材なんじゃないかなぁ?
「はい、皆様お疲れ様でした。入れて頂いた紅茶は味見をさせてもらいました。ただ、量が量なので、皆様の休憩時にと、リリウム様から皆でお茶をして良いとの許可が出ましたので、どうぞこちらへ」
屋敷の扉を開き、ダンスパーティーとかを開いていた所に皆を通す。皆が作ったお茶を飲む為に、立食パーティーチックな感じに食べ物を用意してある
「「「「「はっ!?」」」」」
「やぁ、君達。これからウチで働いてくれるメイドさん達だろう?肩肘張らず、まずはお茶にしよう」
ここでリリウム様の投入。さぁ、一応は無礼講的な雰囲気だけど、相手は屋敷の主人だ。皆どうするかねぇ?




