連れて行くならまず
「それじゃあ、まずはシャゴース君がその気があるのか聞いてみないと」
「確かにそれはそうだな」
やりたくないのに強制するのは反発されてしまう可能性もかなり高くなって危ないだろう。まずはシャゴース君の意思を確認しよう
「呼びましたか」
「やぁ、シャゴース君。君、掃除とかそういうの好きだよね?」
「綺麗な環境好き。汚い環境嫌い」
うんうん、きれい好きだし、適性はあるよな
「実はこれからそういった能力を持った人達の中でも凄い人達を選ぶみたいな事が有るんだけど、シャゴース君が人の姿になれるならその会場に連れて行って色々学ぶ機会を作ろうかなぁって」
どうだろう?多分シャゴース君にも分かりやすい様に言ってみたつもりだけど、これで伝わったかな?
「学ぶ……」
「どうかな?まぁ、連れて行くってなったら、シャゴース君にはそこに居る相手を襲わないとか、僕の指示には従ってもらうとか、色々と行動は縛っちゃう事になるけど……」
サラッと言ってるけど、ここが一番大事だ。ここでもし僕の言う事を守ってもらえないと、シャゴース君は人を呑み込める力があるし、他の参加者を襲うなんて事になってしまうと、リリウムさんと間違いなく修復不可能な亀裂が生まれてしまう。ここだけは守って貰わないと
「そうだな……ちゃんと守れるなら僕の補助か、追加の参加者って形でシャゴース君をそこに連れて行けるけど……」
まぁそうなると、シャゴース君から目を離せない状態になるんだけどね?
「やってみたい」
「やってみたいか。ならやっちゃおう!それじゃあ一度シャゴース君連れて行きます」
「うむ」
とりあえずシャゴース君も参加するとして、大事なのは姿だな。まず粘液姿のままは絶対にダメだ。あの状態だと、確か色々と溶かしてしまうだろうから、まずは人型になるところから始めよう
「シャゴース君、人の姿になれるかな?」
「人の姿……これ?」
粘液体がぐにょぐにょと蠢き、空中に浮かんでから形がドンドン人型に収束していく。創作物のショゴスって確か食べた物を模倣するんだっけ……ってなると、今のシャゴース君は過去吸収した誰かの姿である可能性があるのか。ならその姿をそのまま使うのは危ないか?万が一その姿の知り合いとかが居たらそれはそれで面倒になってしまうだろうし……
「そうだな……もし過去に喰われた人だったらごめんなさいだけど、シャゴース君。目をもう少し切れ長にしたり、鼻を少しだけ高く出来るかな?」
完全にとは言わないけど、最初に見たイメージとは結構違うと感じる所まで顔を弄った。これで、もし過去に誰か喰われてその人が帰って来たとかそういうのは無いだろう。そういうので一悶着起きてしまうと、解決までが長いだろうし……
「こんな感じで、どう?」
「うん、多分これなら大丈夫だと思う。僕としては他の人を襲わないって所をしっかり守ってくれればそれだけでも連れて行く価値はあると思うからその日が来るのを少し待ってて」
流石にログアウトしないとヤバい時間ではあるから、今日はここまでにしよう。明日メイド選抜試験かぁ……あ、そういえば恰好はどうしたら良いかな?執事服か?それとも普通のローブで良いのか?まさか軍服スタイルな訳無いもんな……
「さて、シャゴース君。居るかな?」
「ここに」
「おぉ、中々良い挨拶」
いつの間にかメイド姿でお辞儀をするシャゴース君。中々良いお辞儀だ
「色々と知っている事は仕込んでおいたぞ。ふふん」
ハスティル様が何かしら教えたらしい……うーん、まだニャラ様が教えたって言うよりは信用出来るか?
「なんかハチ君失礼な事考えてなーい?」
「いえ、別に。それよりもシャゴース君を会場に連れて行きますね。そうだな……君はショーコって名乗って貰っても良いかな?一応、会場でもし、名乗れって言われたら自分はショーコだって言って。もしどうしても困ったら、僕に話しかけてくれればある程度は何とか出来ると思うから」
頼むぞ……他のメイドさんが変に陰湿な事とかしないでくれよ……最悪自分達の命に関わるぞ?
「という訳で、ウチの子にもある意味実地研修みたいな感じで他の所はどんな感じなのかを学ぶ為にも1人連れて来ました。勿論、ここで採用する事はありませんが、他の人の判断をする時にもある意味使えると思ってます」
「この子も可愛い……こほん。ではメイド選抜を頼むとしよう」
「僕がオリジナルで考えて来たメイドに必要そうな物とリリウムさんがメイドに求める物を合わせて何とか検査項目を作ったつもりなので、これで判断しても問題ありませんか?」
「……あぁ、これなら問題無いね」
僕はあくまでも実力がありそうな人を採用したいし、リリウムさんは可愛い子なら可能な限り採用したいみたいな事を思ってるんだろうなぁ……
「ではまずエントランスに集まっているだろうメイド候補の人達に早速色々とやって貰おうか」
用意した物をエントランスに運んで早速第一試験を開始しようじゃないか




