選別?
「ちょっとリアル過ぎないかいこれ?」
「作ってる過程を見ていたのに、これが本当に食べ物というのを少し脳が理解を拒んで居ますね……」
「最後の金を纏う一手間で一気に本物感が……」
僕が作った金貨チョコを最後にミルダスさんに金でコーティングしてもらった。金に変えると言っても、触れた物を金貨にするだけではなく、金粉みたいにしたり、それ自体の表面だけを金に変えたりと意外と器用な事も出来たみたいだ。正直僕は金粉か金箔みたいな物を出せるかどうか相談しただけだったのだが、こういう事も出来るとやってもらったので、結果としてはラッキーだった
「まぁ、本当に金を使った金貨チョコなので、あんまり食べ過ぎない事をお勧めしますよ」
実際はチョコだけど、金はそんなに食べない方が良いだろう。勿論、本物っぽく作った金貨チョコと普通に形だけが金貨のノーマルな金貨チョコもあるから皆そっちを食べるだろうけど
「まぁ、でもミルダスさんがこの島に来てくれてよかったかも知れない」
「ん?何か含みのある言い方だが……」
まぁ、あまり良い事では無いからねぇ……
「僕はお金をモノさんのお陰で持たないから良いけど、他の人だったらミルダスさんにお金を生み出してもらって色々買い物するとかでこき使われる可能性も……」
「そんな事があれば、そいつを金貨に変えるだけさ」
おぉ、怖い怖い。今回やった事みたいに、金貨の形をしたチョコを作りたくて、リアリティを増す為に金粉をお願いしたい。ってお願いはこき使うって所には当てはまらなかったみたいだ
「金は人の心を歪ませる。だが、ハチはモノという存在によってその理から外れた存在とも言える。そういった存在が欲する物が何かと思えば……これだぞ?これからもどういった物を作るのか等気にならない訳が無い」
「え、って事は?」
「これからもここでよろしく頼む。まぁ私も能力を完全に扱える為にモルガ殿にご教授願わねばな」
確かに、魔力操作をもっとうまく扱える様になれば、金を生み出す能力にも何かしらの変化をもたらす可能性はあるよね?
「分かった。じゃあ、これからもよろしくね」
右手を差しだし、ミルダスさんの返事を待つ
「私と握手をするのか?」
「そうだよ。ミルダスさんがしっかり能力を集める為にはまずは1歩。必要でしょ?」
ここで恐れてはいけない。自分の右手が黄金に侵されようと、ある意味管理者としても責任という物だ
「君は本当に恐れ知らずだな?」
「興味がある事に突っ込んでるだけですよ」
「ふぅ……よろしく頼む」
ミルダスさんの右手と握手をする
「流石。もうここまでコントロール出来てるじゃないですか」
まぁ、僕の状態異常への耐性かとかそこらへんのお陰だとは思うけど、それでも右手の一部が黄金になっていた
「……すまない。やはりまだ気持ちが高ぶってしまった時には調整が効かない様だ……」
「この位なら大丈夫ですよ。後で寝て目覚めれば元通りなんで」
多分【レスト】でこの右手の一部黄金化は何とか治せるだろう
「多少の事は本当に気にしないよ。ハチ君ならね」
「あ、そう言って何か街の問題とか僕に解決させようとしてません?」
「ふふふ、バレたか」
リリウムさんが僕の事をフォローしている様に思えたけど、少し聞いたらやっぱり裏があったか。まぁ、別にそれは良いんだけどね?
「そういう訳なんで、ミルダスさんも気にせずに能力の制御頑張って下さい。で、街の問題って何です?」
ミルダスさんを追い詰めない様にリリウムさんが抱えているだろう問題の方を聞いてみる事にする
「まぁ、街のというよりは、城の問題なんだが、ハチ君にはウチのメイド選抜試験の試験官をして欲しいんだ。君が執事として来た時から君の能力は高いと思っていたからね。流石にウチの城ももう少しメイドを雇える余裕が出て来たから、同族の子を数人メイドとして雇おうと思ってね」
リリウムさんの同族……つまり吸血鬼のメイドの選抜試験の試験官を僕にやれと?
「それどう考えても大変な様な気が……」
「いやいや、ハチ君なら出来ると思うんだ。正直な事を言えば可愛い子は全員雇いたい!だが、まだ仕事をしっかりと出来ない子を雇っても、その子も続けるのが辛くて辞めてしまうだろう。それは私のポリシーに反する。メイドをするからにはしっかりと仕事を続けてもらい、尚且つストレスなく過ごして欲しいのだ」
メイド(かわいい子は特に)は雇いたいけど、仕事が難しくて辞めますとか言われて自分の下から可愛い子が離れてしまうのが辛いんだろう。だから、僕が試験官として、しっかり続けられそうな子を選抜して欲しい。そういう事かな?
「因みに、選抜試験って具体的に何をするんです?メイドって言っても確か色々種類があった様な……」
正直メイドさんを雇いたいって話は分かるけど、多分仕事をしっかり続けるという事に重点を置くなら仕事は絞った方が良いだろう。掃除だったり、料理だったり、洗濯だったり……専門的にした方が続けやすいと思うんだよなぁ……
「君には、そこを見抜いてもらいたいんだ。どうかな?」
ふぅむ……これは観察眼を鍛えるという事を考えれば割とアリな気はして来たな。その話は受けても良いかも知れない




