学びへの礼
「これなら……」
「モノさん。どんな力を貰ったの?」
モノさんを手元に戻して確認するのが手っ取り早いけど、ここはモノさんに聞いた方が良いだろう
「吸収と拡散……相手にぶつかると、それだけで相手からお金を吸い取る。吸い取ったお金の量で私が強くなる。あと、その戦闘の時に吸ったお金の量に応じて、コピーを増やせる」
モノさんを相手にぶつけるとお金を吸収……つまり今まで消滅させていた分をモノさんの強化とかに回せるのか。それで、コピーを増やせる?硬貨状態のモノさんを投げたら、2枚に分裂するとか、そういう事を起こせるのか?
「モノさん自体が増えるって事は、手数が増えるって事で良いのかな?」
「うん、ハチに行かない様にしたお金が、私を強くする。そしてハチにも、その強さを還元出来る」
単純にモノさんが2枚とかになれば、両手で別方向に投げる事も出来れば、1枚が返って来るまでにもう1枚を投げるとか、後は4枚とかに増えたら集団相手に攻撃出来る事になるのかな?いや待て?今最後に僕に強さの還元って言ったか?となると、吸収と拡散ってお金をモノさんが管理して、そのお金で自身を強化するか、僕を強化するか選べるのか?中遠距離戦が必要だと思ったら、モノさんを強化して手数を増やせば敵集団が来ても対処出来るだろうし、近接戦が必要だと思ったら、元々あるモノさんの僕に対するステータス上昇効果の方を上げられるのか?
「凄い……普通に使いやすさが上がってる」
「これもまた巡りあいだろう。金を生み出す者と、金を滅する者。お互いに歩み寄れば、素晴らしい均衡が生まれる」
いやいや、普通にこれバランスブレイカーでしょ……だって、モノさんを例えば拳の中で握りしめた状態で相手を殴れば相手のお金を消滅させて、こっちは強化出来るって事でしょ?その場限りの戦闘にしても、残す影響がとんでもない事になる。僕と戦うだけで無一文になる奴とか出て来るかも知れないな……
「ミルダスさん。でも、これだと僕らはこの世界のお金を消滅させる事しか出来ないので、お金の絶対量が減っちゃいます。その辺はどうするおつもりで?」
「そこは世界が調節するさ。でなければ、使いもしないはずのモンスター達がお金を持っている事自体おかしいだろう?」
なるほど。確かにこの世界でのお金って、何処かに造幣局みたいな所で作ってるってまず聞かないな?モンスターから出てくる。NPCとの金銭のやり取りで貰う。宝箱などから出て来る……確かに考えてみれば、金貨のデザインとかも考慮しても不思議な話ではあった。この世界には神様(管理者)が居て、調整する事が出来る。だから、僕らはお金を消してしまっても問題無いと、そういう訳……か?
「そもそも、目の前に居るのは金を生み出せる者だぞ?君達が消したなら、私がその分作れば良い」
顔に黄金のマスクを装備して、不敵に笑うミルダスさん。確かにそれはそうだけど……
「多分、大丈夫」
まぁ、モノさんがそう言うなら大丈夫……なのかな?
「とりあえず今まで通りの使い方で良いのかな?」
「あぁ、というか、私が渡した能力だ。多分幾ら消えたとか嫌でもこっちに伝わって来るだろうさ」
あぁ、そういう繋がりが出来るのか。確かにそれなら幾ら消えたから幾ら増やしますみたいにバランスは取れるか
「分かりました。ではこの力は好きに使わせてもらいます」
「あぁ」
「あーあ、あーあ、言っちゃったねぇ?ハチ君に好きに使わせるはヤバいよぉ?」
「そ、そうなのか?なら、少し抑え気味で頼む……」
ミルダスさんがモルガ師匠に言い包められてる。まぁ、やって良いというのであれば、遠慮なくやるつもりだったけど、抑え気味にというのであれば、ある程度は抑えても良いかも知れない
「まぁ、使える時はキチンと使わせてもらいますよ」
危ない時とかはガッツリと使わせてもらうぞ
「まぁまぁ、君は触ると金に変えちゃうって事で困ってるなら、これからも訓練して行こうか。それなら今後その力はもっと面白い変化をするかも知れないね」
「あぁ、よろしく頼む」
この2人が繋がるかぁ……モルガ師匠が「ミルえもんお金出して~」とだらけた人にならないか本気で心配になって来るな……
「まぁ、こうしてキチンとモルガ師匠が働いてくれるなら僕も頑張っちゃおうか」
何が良いかなぁ……材料で言えば正直ほぼ何でも対応は可能とは言えそうだ。そうだ
「ミルダスさん。ちょっとご相談が」
「ん?なんだ?」
モルガ師匠と訓練してるんだろうけど、ちょっとだけ耳打ちをする
「それは可能と言っておこう」
「じゃあ、最後の仕上げは頼んで良いかな?」
「任された」
よし、ミルダスさんの協力が得られるなら、割と簡単になるかも!
「という事で、形は出来たから後はミルダスさんに……」
「むっふっふっふっふ。ハチくぅん?何を作ってるんだい?」
相変わらず早いなぁ?しっかり来たよモルガ師匠
「なんだか今日は面白そうな物を作っている気がしたぞ!」
「失礼します」
「アレはいったいなんだ?」
キッチンでやっていたからか、ウカタマと飯綱さん。それにリリウムさんがやって来た。今日は暇だったのかな?
「まぁ只のチョコレートと言えばチョコレートなんですけど……」
「すまない。待たせただろうか?」
そうこうしている内にミルダスさんがやって来た
「いえいえ、丁度良いタイミングですよ行けますか?」
「あぁ、今の私なら限界すら超えて見せよう」
そう言って僕が作ったお金の形をしたチョコレートが金色に染まる
「完璧です!はい、皆さんどうぞ金貨チョコです」
お遊び感覚で作った金貨風のチョコが完成した




