ミルダス
「僕らには従えないから行けない……そういう事でしょうか?」
まぁ、記憶が残っていたのなら、僕に付いてくるのは躊躇しちゃうか……
「いや、そんな事を言って無駄な時間を過ごすのは勿体無い。敗者は勝者に従うだけさ。もし、何かあるのであれば連れて行ってくれ」
確かに、今の状態のミルダスさんを外に連れ出せば、多分触れた物全てを金に変えてしまうだろうから、下手に外を歩けない。大事なのは如何に急ぎながら他の人にミルダスさんの存在を知られずに連れ出すかだ
「ミルダスさんの能力的には、今の姿と心臓の姿だと、どっちが魔法の及ぶ範囲は狭いですか?」
人の姿と心臓の姿。どっちで移動するべきなのかそれも検討はしっかりしなくちゃ。僕も触れるだけで金になるのであれば、ミルダスさん自身に移動してもらう必要があるけど……あ、そういえば心臓の時は普通に僕は運んでたっけ
「それは、この人の姿の方が影響が及ぶ事になる。私が触れた物が金に変わる。だから心臓の時にはその触れる為の手が無いからその方が安全ではあるが……心臓での時は心臓だけだから、外の様子もあまり分からない。だから、そのまま外に連れ出そうというのであれば、きっと防衛本能が働いてしまって能力が暴走してしまうかもしれない」
能力の暴走……それがあのドラゴンとかそういう事なんだろうか?
「なるほど……逆にミルダスさんが心臓状態の時って、この体は?」
「一応、持つ事自体は出来るだろう。手に触れてしまうと金に変えられてしまうかも知れないが、その時の効果自体は私本体が入っていないからかなり抑えめではあると思うが」
となると、肉体を先に運んでおいて、後から心臓を持って来て、入れる方が良いのかな?
「この肉体が逆に2つあれば良いのかな……」
「む?それはどういう事だ?」
「このミルダスさんの体を複製して、移動先にあるその体に移るとか……」
「特殊な能力を持っている事は自覚しているが、流石にそんな不完全な不老不死みたいな生き方をしたい訳では無いぞ?」
まぁ、それはそうか。ちょっと困ったな。となると、大事なのはミルダスさんには人間性のある移動を可能にしないと、ミルダスさんを救う?事は出来ないって訳だ
「となると、ウチの科学力がどうなっているか聞いてみるか」
ゴーグルをつけて、会話をする。一応ダンジョン内だから多少のノイズとかはあると思っていたけど、かなり綺麗な状況が見える
「もしもし?ヘックスんさんに話が聞きたいんだけど……」
『おぉ、ハチじゃないか。どうしたんだ?』
「今僕が居る地点にワープゲートというか、ホールとかって展開出来たりする?1人連れて帰りたい存在が居るんだ」
ミルダスさんの説明は後にするとして、まずはワープゲート系の技術が出来たのかどうかだけ確認だ
『少々待っていてくれ。そうすればそちらにワープゲートを展開する事は可能になる』
技術の進歩が速いなぁ?
「とりあえず、これを使えば、ひとまず安心な所に移動は可能ですね」
「なるほど……これはまた不思議な……」
「多分手袋とか履いていても金にしちゃうんですよね?」
「あぁ、金の手袋になってしまって使い物にならないがな」
「なるほどね。金の手袋になってしまったら、そこがまた何かに触れたら金にしてしまう?」
「あぁ……」
普通に辛いというか、努力でどうこうって話ではないのか
「了解しました。ヘックスさん。ワープゲートの先をモルガ師匠の所に設定とか出来る?」
『まぁ、出来ると思うが……』
じゃあ、ワープゲートを通った直後に指導を受けるって事も可能な訳だ。ぐうたらしているモルガ師匠を叩き起こして、即魔法制御の授業を受ける事が出来るか
「じゃあ、先に今の僕達の情報だけ送ってもらって良いかな。そっちに行った時に即対応出来る様に」
『アイツも苦労する事になるなぁ……』
「まぁ、その分普段苦労を掛けられてるからねぇ?」
そこはまぁ、こっちも美味しい料理とかでカバーをするつもりだけど、モルガ師匠が居る事がかなり助かる事ではある
『了解した。ではこっちも魔力制御関連の準備は進めておく。我々としても、その者の力は気になるからな。物質変換が金のみとはいえ可能なのだ。その能力の解析もしてみたい』
確かに、色んなゲームでも「ミダスの王」関連のアイテムって基本的にお金を増やす的なニュアンスの効果がありがちだが、ここに居るミルダスさんは触れた物を金にするという能力だ。これって正に錬金術とも言えるんじゃないかな?
「ミルダスさん」
「なんだ?」
「その能力を制御する為にも、色々と調べさせて欲しいんですけど、構いませんか?」
「そうだな。それは構わない」
本人の許可も貰えた。これは嬉しい。もし、この能力をアイテムとかに出来た場合。触れた物質を変化させるみたいな能力を作れるかもしれない。新能力は大歓迎ですよ~?
「おっ、来た来た。このワープゲートを通れば、他の人に会わずに移動出来るので、来てもらっても良いですか?」
「何だこの技術は……これは面白くなって来たな」
さぁ、黄金の王を引き入れるとしようか




