金の王
「さてさて、それじゃあまずは……ってまずこの金の心臓って持っていけるのかな?」
たまにある鍵としての機能は最初の1回だけで、一度開いてしまえば、この物自体は持っていけるとかそういう可能性に賭けて金の心臓を持ってみる
「おっ?閉まらない……という事はこの金の心臓を持って行っても良いのかな?」
もしかすると、倉庫の方でもコレを使って開ける所とかあるかもしれないし、扉が閉まらないなら一度持って行こう
「それ、持って行くの?」
「もしかしたら、これがこの辺の鍵の役割をしてるかもって思って、倉庫?宝物庫?そこにも何か開けるのに使うかなって」
「なるほど」
両手で抱えるサイズの心臓だけど、まぁ敵が出てきたら落として戦えば良いだろう
「ここか。とりあえずお邪魔します」
宝物庫らしき所は鍵は掛かっておらず、そのまま入る事が出来た。おぉ……色々と金ピカな物が沢山あるなぁ
「いや、でもこれは只の金で出来た家具とかそういった物ばかりで価値は高いんだろうけど、僕としてはほぼ無価値だな」
部屋に金ピカ家具を置きたいとかならそれは良いのかもしれないけど、それはちょっと悪趣味というか、あんまり好きじゃないから遠慮しておく
「あっ、この台座。似てるかも?」
金の心臓を置いていた所と似てる台座を発見した。金で出来た台座はなんだか別物に見えて普通に見逃しそうになった
「さてさて、それじゃあ一度ここに置いたらどうなる?」
金の心臓を台座に乗せてみる。これでどうなるか……
「うおっ?」
ガコンと近くの壁が開き、そこから棺?と思われる黄金の箱が出て来た。ここまでの金推し……もしかして
「とりあえず開けてみよう」
墓荒らしみたいでちょっと気が引けるけど、ここまで来たら気になるし、棺を開けてみる
「この金の仮面……これはもしかしてミダスの王的なあれか?」
この金推しの環境に金の仮面をつけた遺体らしき物。この状況を考えると、これは触れた物を金に変えるっていうミダスの王の話が何となく頭を過ぎる
「これ、心臓はいったりするか?」
起動キーとしてここまで来た金の心臓を遺体に近づけてみる
「おぉ」
持って来た金の心臓は鼓動を再開し、サイズが小さくなりながら遺体の心臓があるべき場所に吸い込まれていく。これは……どうなる?もう一戦あるか?
「ゴホッゴホッ!ふぅ……はぁ……む?君はいったい何者だ?」
起き上がって少し咳をしてから僕に話しかけて来た。死んでた……のかな?
「あ、どうも。ハチと言います。えっと貴方の心臓?を持って来て戻したんです」
「おや、それはすまない。迷惑を掛けたな。私はミルダス。どうやら私の能力が暴走していた様だ」
この人何か丁寧だな?もうちょい傲慢な感じで来るかとおもってたんだけど……
「ミルダスさんはどうしてこんな所に?」
「私自身もあまり分かっていないが、きっと私の力を使って国を広げようとして失敗したのだろう。なるほどな。まぁ、私の国はどうやら滅んだらしい」
ミルダスさんは起き上がって僕と会話していた最中に自分の下に落ちていた紙に気付き、それを読んで自分の国は滅んだと結論を付けた。なんか崩壊までの情報とか書いてたのかな
「それは……ご愁傷様です」
「触れた物を金に変える。確かに力としては強いかもしれん。だが、日常生活は大変なんて物ではなく、愛する者に触れる事すら出来なくなった。こんな悲しい力も無いだろうさ」
食事とかしようとしても、食べ物が金に変わるとか、人に触れたらその人も金に変わるとかそういう事か?それは不便だな……能力が出しっぱなしの状態になってるって話か?
「なるほど……む?」
それってもしかしてミルダスさんは能力制御が出来ていないだけで、能力の制御が出来れば普通に暮らす事も出来るのでは?
「ミルダスさん。もし、その力。抑える事が出来たら普通に暮らす事も出来るのでは?」
「はっ、それは無理だ。私には金の特性か何かは分からないが、使用した魔力は即座に回復する。これのせいで能力の制御が出来ないんだ」
確か、金のアクセサリーの効果とかも、能力アップとか、魔力回復力アップとかその辺だった気がする
「そうなんですか……あ、多分あっちから外に出られると思うんですよね……で、ここからは時間の問題にはなりますが、貴方の治療というか、能力の制御訓練をしてもらいたいんです」
「訓練?」
「貴方は魔力制御をキチンと覚えればその周りを金にしてしまう能力は使いこなせる様になると思うんです。だからどうでしょう?僕と一緒にここから出ませんか?」
ミルダスさんをここから連れ出すが合っているのか間違っているのかは分からない。でも、キチンと訓練すればその辺の問題は解決するハズだ。あれ……使ってみる価値はあると思うな?
「魅力的な話だとは思う。だが、少し思い出して来た。君は私を倒しているな?」
「えっと、もしかして心臓が貴方自身で、その心臓を別の何かに運ぶとそっちに意思を移すとか出来たりします?」
「あぁ、どうやらそうらしい」
じゃああのドラゴンはミルダスさん(ドラゴン形態)って事だったのか。うわぁ、それは少し話拗れるじゃん……
 




