金貨ドラゴンとリーサルウェポン
「ふむふむ……うん、多分これは事前に調べてもダメかも」
一応、金の心臓には触れずに周りをずっと調査してたけど、上から降って来る金貨が止まる事は無いし、何かが住んでそうな跡もない。これは下手をすると、この上から降って来る金貨で身動きが取れなくなるかもしれないから、さっさとボス戦を始めた方が良いのかも知れない
「まぁ、トラップの類も無ければ、他の生物の存在も無さそうだし、邪魔は入らないかな。それじゃあ一丁やってやりますか!」
金の心臓に触れて、遂にボス戦を開始する。心臓に触れた途端、上から降って来た金貨が止まり、周囲で山と化していた金貨達がドンドンとその心臓に向かって集まっていく。金貨の竜巻に吸い込まれそうだ……
「うぉぉ……」
「ジャラララララァ!」
金貨のぶつかる音で何やら咆哮っぽい音を出しているが……これはまた凄いな?
「金貨で出来た……ドラゴン……」
長い尻尾、巨大な体、力強い4脚、巨大な翼、そして嗤っている様にも見えるいかつい顔。黄金の竜が僕の目の前に現れた
「なるほどな……確かにこの位使わないと5000兆円は無理か!」
5000兆円分強化するとして、ただ四角く金貨が並んだだけなんてボスは流石に出てこないか。それなら、こうして翼とか尻尾、首の長さとかで結構消費出来るドラゴンはある意味納得な選択だ
「さて……どうかな?まずは僕の攻撃が届くかどうかだけど……」
普通に攻撃が届かない。もしくは金貨装甲が厚すぎて全然ダメージを与えられないのであれば、何か他にギミックがあるハズだと思う。まずはそこからやってみよう
「ほっ!ふむ……」
一応、シスター服に着替えて空中に足場を用意する事で腰の入った一撃をお見舞いしてみた。だが、攻撃が当たった部位の周辺の金貨が落ちる程度でダメージらしいダメージは入っていないかもしれない
「でも、金貨が落ちるって事は、攻撃を続ければいつかは心臓に辿り着くって訳だ」
血が出るなら殺せるじゃないけど、攻撃して実際装甲が剥がれたって事はそのまま攻撃し続けて装甲を剥がせればダメージ自体を与える事は可能そうな気がする。実際僕の連撃で金貨自体はボロボロ落ちてはいるし、攻撃が無効化されているのではなく、装甲を剥がすのに時間が掛かっているだけだ
「でも、これは一点に攻撃を集中出来ているからであって、ズレたらまた1から掘り直しだ」
もはや、金の心臓を金貨の中から掘り当てる採掘みたいな感じだな?
「ハチ、コイツ……」
モノさんの言葉で少し周囲をきょろきょろしてみたら、僕が剥がした装甲が地面に無かった
「うわぁ、これひょっとしてボスを倒す為には攻撃して出た金貨を回収しないとダメなのか……」
自身の体から零れた金貨をまた吸収する事である意味無限の耐久を得ているのかもしれない。これは突破するには骨が折れるぞ?
「くっ……幾ら攻撃しても無限に回収されるな……」
良い音を立てて、金貨を落とすけど、その落とした金貨をまた前足や後ろ足、尻尾で回収する事で、金貨装甲を元に戻している。これは普通の攻略だったら、金貨を只々自分のお財布に入れるだけで良いんだろうけど、僕にはそれが出来ない。これは厳しいぞ……
「くっ……これはあまりにもキツイな……」
今まではお金を入手しなかったから良かったけど、今はお金を入手出来なくて困っている。ぐぬぬ……
「ハチ……今、お金。嫌い?」
「今はもう見たくもないね。だってあの金貨もモノさんに比べたら作りとか超雑だし」
「ふふっ」
いや、今は笑ってる場合ではない。どちらかが倒れないと終われないリタイア無しのデスマッチとも言えるこの状況下で、向こうは装甲無限回復。こっちもHPMPは自然回復するけども、僕の精神力はどんなに頑張っても限界は来る。だからその前に何とかしたい
「ハチ。アイツに投げて」
「え?でも……」
「ハチを困らせてるアイツは許せない。だから、私が道を作る」
「分かった。行くよ!」
モノさんをコインとして【投銭術】で金貨ドラゴンに投げつける。すると。。。…
「うおっ!?」
「ジャラララララ!?」
モノさんを投げつけて、当たった部分の大体1m程度の球体状に金貨ドラゴンの金貨がごっそりと消えた
「えっ?モノさん今なにしたの?」
「ハチを困らせる金貨なんてこの世に要らないから、消した」
わぁ、金貨を消滅させたって事?僕が散らばった金貨を回収出来ない状況を打破する為にモノさんが金貨を消してしまった訳か。いやぁ、これは人によっては発狂するんじゃないだろうか?下手に僕がモノさんを投げて当たった相手の財布の中身全部消滅なんて事になったら……まぁ、僕自身は何もしてないだろうからそれは問題無い……か?
「もっともっと……ハチを困らせるお金は全部消滅させる」
「た、頼もしい……」
お金が襲って来たとしても、こっちにはモノさんという金の存在自体を消す存在が居る。それは今正にこの状況でのリーサルウェポンと言っても良い存在であった




