難易度の調整
「ここまで来ると、お金も何か嫌だなぁ……」
金貨の集合体が人の形をして僕に襲い掛かって来た。攻撃する度に体から金貨が落ちて音を立てる。本来だったらそれも心地良い音なのかもしれないけど、この音もお金の悲鳴なのかと思うと、なんだかやり辛いな
「正直、これで倒したお金が僕の所に入ってこないのは助かってるよ。このお金は何か手に取りたくないし……」
「ハチは、私が守る」
普通のプレイヤーだったら、これで金貨ザクザクのウハウハって思うんだろうけど、何か僕はこの金貨は取りたくない。だからこそ、モノさんのお陰で僕にお金が入ってこないのはかなり助かってる。なんかあの金貨はかなり悪意がある気がするんだよなぁ……
「あぁ、これアレだ。絶対魔蟲の森と似たような奴だろこれ」
魔蟲の森。あそこで虫を倒した分だけ、ベルトを受け取ろうとしたら、虫の反撃を喰らうとかあった。ここもその系譜だろう。敵を倒して、金貨ウハウハだ!なんて浮かれてたら、最後にはとんでもない敵が出て来て、それを倒さないとお金が持ち帰れないとかそういう感じだろう。なら僕らは1枚も持ち帰るつもりが無いから、これは敵のボスもそんなに強くないんじゃないかな?
「よーし、分かれ道とか隠し部屋に気を付けて奥に進んで行こう」
金貨が積み重なって壁のふりをして、部屋を隠していたりするのを見逃さない様に進み、ダンジョンの攻略を進める。金貨ナイト、金貨ファイター、金貨マジシャン、金貨ガンナー……普通に敵として体の一部を飛ばされたとしても、他の仲間だったり、その辺に散らばってる金貨で体に空いた穴とかを塞いでいた。普通にお金による回復は厄介だなぁ……
「しかもコイツ等倒した所で経験値全然入んないんだよな……」
完全にお金ダンジョンとでも言うべきか、経験値はほぼ無く、お金の入手だけに限定されているというか、モノさんのお陰でその辺も特に何もない。これはマジで何かアイテムを見つけられなかったら、無意味なダンジョン探索になってしまう。それだけは避けたいな
さてさて、結構進んだと思うんだけど……」
金貨の兵隊をいなしながら結構深くまで進んで来たと思う。金貨兵からの攻撃を金貨兵に受けさせるみたいな事も出来たし、一応は今までの対多数戦闘テクニックも使えそうで安心した。流石に体が金貨だからと、全身をバラバラにして金貨が僕を閉じ込めるとかは無かったので、まだ戦いようがあったただ、ボスはどうかまではまだ分からないよな……
「これは一旦休憩をはさんでおくか。正直敵地のど真ん中だからかなり危険ではあるけど、一旦ボス戦前に自分の体をしっかり休ませておこう。今更だけど……今の状況はどっちに転ぶかだよなぁ」
「どっちって?」
モノさんが質問してきた。凶具達も居るからソロだけど会話が続くのも意外と嬉しいよなぁ
「今、この時点までに僕が想定してたのは、倒して、金貨を取れば取るほど、何か恨みの力的な何かで敵のボスがパワーアップすると思ってたんだ。魔蟲の森みたいな?」
「うん」
で今普通に魔蟲の森を思い出してたら、倒した敵の恨みみたいな事を考えると……
「だけど、ここはこんな金ぴかダンジョン。もしかすると、今まで倒した奴の残した金貨の数だけ敵が強化されるとかだと……」
「あっ」
ここの奴らは倒しても消えずに金貨として残ってる。となると、このダンジョンのボスとなったら、ダンジョンの中で死んだ味方の金貨を集めて巨大化とかする可能性がある。その事に気が付いたら、正直今の僕達に希望はあんまりない
「これは……逆に強欲な方が生存しやすいダンジョンの可能性も出て来たな……」
敵の死体(金貨)をしっかり回収する事で、その死体を利用されない……ネクロマンサー的な相手と戦う想定での動きが一番良かったのかも知れない。まぁ、まだボスまで到達してないから正確な事は言えないけど、これどっちが良かった奴かなぁ……多分、ここのダンジョンでお金を取ったらそれはそれでなんか悪影響ありそうだしな……
「どっちにも、出来るんじゃない?」
「どっちにも出来る……あっ、もしかしてこのダンジョン。自分で難易度の調整が出来るダンジョンの可能性?」
お金を集めれば集める程、多分相手のボスも弱くなるけど、その分自分にデバフが来るか、お金を集めないなら自分にはデバフが来ないけど相手のボスが強くなる……みたいな。その調整が出来るのが、今回のダンジョンって事かもしれないって事か
「なるほど……それはそうかも。となったら、もう金貨兵達を倒しまくるしかないな?」
「え?」
「敵のボスが強ければ強い程、戦うのも楽しいし、それに何よりもドロップアイテムに期待出来る!モノさんを更に効果的に使う為にも、相手のボスには良い物を出してもらわないといけないからね」
正直どれくらい強くなるのか分からないけど、これはもう出来る所までやってみたい。もし、その戦うボスが金貨の塊だとしたら……やってやるか。VS5000兆円