金色ダンジョン
「では、一度終わりだ」
ハスティル様がそう言うと、風が巻き起こったので、目を閉じる。すると、風に包まれた僕は、ボスエリアからいつの間にか外に出されていた。そっか、ワープとかテレポートを覚えたら、こういう脱出も可能になるか
「それじゃあ今回は僕が途中で撤退って事で負けという事にはなったけど、次回は絶対に容赦はしないぞ」
正直ボス戦も勝ったような物だと思っているけど、ぐだぐだ言っても仕方ないし、約束は守る。また時間を空けてからやってやるぞ。そうなったらレベル上げとか、新しいダンジョンとかそういった物を探した方が良いか……
「でも……まずはそうだな。遠距離への攻撃手段をもう少し増やした方が良いかも知れないな」
通常時でも普通に使える遠距離攻撃の手段はあればあるだけ良い。でも、僕は銃や弓の類は使えない。となると、やっぱり一番手っ取り早いのはアレかな
「モノさん。ちょっと【投銭術】の強化をしたいと思ってるんだけど、何か案とかあったりする?」
投石も考えたけど、やっぱり今の僕の手札の中での遠距離攻撃と言ったら、スキルにもなっている【投銭術】を活かすコインを投げる方向で行きたい。モノさんの価値自体も高い判定のお陰で相手に与えるダメージはかなり良い物にはなっているハズだ
「やっぱり、装備品?」
「そうだよねぇ……何かそれ用の装備を用意した方が良いよね」
まぁ、今の僕の装備群を改造するというのも良いかも知れないが、それは少し違うかもしれない。それの改造は進化がほぼほぼ限界まで行ったらその時に改造して更に先に進む位が良いと思ってる
「うぅむ……いや、ここは早速訪ねてみるのは悪くないと思うな。アビス様ー」
「む?さっきぶりだがどうした?」
「ちょっと装備の色々とかハスティル様と話がしてみたいのと、あとはシャゴースさんが虐められてないかの確認だけさせて欲しいなって」
「そういう事か、ならば来るが良い」
という事で、深淵にレッツゴー!
「よっと、さて、シャゴースさんは……あれ?」
何か深淵にも関わらずメイドさんみたいなのが居る
「あれ、もしかしてシャゴースさん?」
「あ、さっきは感謝。今は、ここで色々学んでる最中」
大丈夫かなぁ……ここ教育的にはかなり悪い方だと思うけど……。まぁ、シャゴースさんがここの皆のお世話係みたいな存在になったのかな?それならある意味馴染めるかどうかの部分は問題無くクリアは出来てるかな……得る知識はかなりヤバい知識ばっかりだと思うけど
「ハスティル様。少々よろしいですか?」
「ほう、もう何か聞きたい事でもあるのか?」
「はい。少々神の話題とは異なるのですが、お金に関するダンジョンとかは知っていませんか?」
「金?そんな物を集めてどうする?」
「あ、僕も別にそれを集めたいんじゃなくて、僕が持ってる攻撃手段を強化する為に、それが沢山あるダンジョンとかに行けば攻撃手段として使うアイテムとかあるのではないかなぁと思いまして……」
お金は別に欲しくはない。大事なのはそれを攻撃手段にする何かがあるのかどうかだ。お札に火を付けてどうだ明るくなっただろう?と言わんばかりの成金装備みたいなのがあれば、モノさんを強化出来る可能性もある。だから新しく増えた仲間……と言っても良いだろうハスティル様に聞いてみる
「ほう?面白い。ならばここを紹介してやろう」
あ、マジで知ってたんだ……何か紹介されたぞ?
「ここは……」
「金に目が眩まなければ、良いがな?」
「ありがとうございます。とりあえず行ってみます!」
位置データを渡されて、なにやら楽しみにしているらしいハスティル様。せっかくだし向かってみよう
「人というのは欲は捨てられん。お前が慾に溺れる所を見せて貰うぞ?」
「まぁ、確かに欲には逆らえないですねぇ……」
「ん?」
「ん?」
何かちょっと会話が嚙み合わなかったかな?まぁいいや。早速貰った位置データの所に行こう!
「ここが……かなり山の奥地だな。まぁ、そうでもないとお金のダンジョンとか大変か」
お金が湧くダンジョンみたいなのが謳い文句なのかは分からないけど、普通に考えると、こんなダンジョンが現実にあったら、インフレ待った無しだよなぁ……お金の価値自体がガンガンに下がってしまうぞ?
「では早速……入ってみよう!」
逸る気持ちを落ち着かせ、ダンジョンに入る。うわぁ……なんだこの悪趣味なダンジョン……
「全部金色?目がおかしくなりそう……うわ、壁の装飾とかにもお金がそのまま使われてる?」
中に入ると、金閣寺もビックリな全面金色。壁に掛かった絵らしき物も金貨や銀貨で作られていた。悪趣味過ぎるだろここ……
「ハチ?分かってるよね?」
「勿論。そもそも、ここにある金貨は何か全部下品に見えて来た。やっぱり僕にはモノさんが居るから、それで満足かな」
「えへへ」
ギラッギラしたこれ見よがしな金貨より、地味でも僕をずっと支えてくれたモノさんみたいな硬貨の方が僕にとってはここにある金貨たちよりもずっとずぅーっと価値がある。だからこそ、そのモノさんを更に輝かせる為のアイテムをここに探しに来たんだ
 




