第二形態移行?
「ほれ、立たんかい!」
「この程度かぁ?」
「こんなんじゃ相手を喜ばせるなんてまだまだ出来んぞ!」
僕の意思は関係なく、今は完全にオートで戦闘している。タコ足触手だったり、捻れた右腕が相手を叩きつけたり、なんかもうやりたい放題って感じだな?
「悪いけど、ここでやられてもらうね」
勿論、深淵組だけにやらせるなんてもってのほか。しっかりと僕もボス討伐の為に糸による攻撃を使おうとしたんだけど……
「フハハハ!こうだこうだ!」
「……」
見えない細い深淵での攻撃にしようと思っていた深淵は太いタコ足触手へと変わってしまった。あんまりにもノリノリ過ぎると、僕の意思を無視しての攻撃になってしまい、連携が取れないな……まぁ、そうなればそれで別の攻撃を試すだけだ
「おっと、ボスが逃げようとしてる?残念ながらそれは許さないかな」
ボスグリフォンが僕らに背を向けて何処か違う所に行こうとしていたけど、深淵の触手はグリフォンの足をガッツリと掴んでおり、逃げ出すなど許さない。こういう時はしっかりと極太のタコ足触手が役に立つな
「そういえば、ボスに逃げられるなんて事が起きたら、どうなるんだろう?」
新しいエリアに行くにはその地のボスを倒したら先に行ける様になっているハズだ。でも、そのボスが途中で逃げるとか起きた場合は?ボスが逃げたらこれ以上の戦闘の継続は不可能って事で、クリア判定を貰えて先に進めるのか、それとも、しっかりボスを倒さないとロック解除されなくて先に進めないのか……もしこれが後者だった場合は、相手を特定の時間までに倒し切れていないと逃げ出すとか、何らかのアイテムが無いと、戦闘の途中で相手がボスエリアから移動して失敗するとか、そういう事象が起きるかも知れない。そうなると、それを阻止するアイテムを使うか、もしくは……
「まぁ、逃げ出すのであれば、それまでにカタを付ければ良いよね!」
特定の条件で逃げ出そうとするのなら、その条件下で相手の逃走を妨害して、そのまま倒すしかないでしょう!
「「「「絶対に逃がさない!」」」」
深淵の神様達とも目標が重なったからか、さっきよりは好き勝手に攻撃するというよりは、僕の攻撃したいと思った所に攻撃が飛ぶ様になった。やっぱり皆同じ方向を向いていれば、戦うのも大分楽だな?
「ふぅ……と、とりあえずはこれで……」
飛び出そうとしていた翼は触手鞭で滅多打ちにして、その足もタコ足触手によって握りつぶす。徹底的に相手の機動力を捥ぎ取り、自分達の強力な一撃をお見舞いしていく。流石にここまで来たら、ボスも【深淵の一撃】じゃ倒しきれないのかな?普通に喰らってもまだボスグリフォンには意識がある。でも、もう息も絶え絶えって感じだな
「……グワァァア、ギョオオッオオン!」
何やら独特な声がしたと思ったら空が黒くなってきた。ふぅむ……第二形態になるのか、それとも何かを呼び出しているのか……
「【淵伝】」
何となく過ぎった頭の中のイメージを妨害する為に深淵を飛ばす。その先端には銅とか鉄とかのインゴットを持たせておく
「さ、これで妨害出来たりするかな?」
直後、空から雷が落ちて来る
「ギョッ!?」
「おっ、これ成功したかな?いやぁ、ごめんねぇ?強化でもするつもりだったんだろうけど、潰しちゃってさぁ!」
グリフォンに向かって降って来た雷は、インゴットを持たせた【淵伝】触手が避雷針となり、触手を通って地面に雷が逃げて行った。多分あの雷をグリフォンが受けていたら、サンダーグリフォンとか何か強化されて復活みたいな事になっていたのかもしれないけど、そんな事はさせないよ?
「「「クハハハハ!」」」
おうおう、深淵のオーディエンス達も盛り上がってますなぁ?
「という事で、このままやらせてもらう!」
「待て」
強化に失敗したグリフォンにトドメを刺そうとした時に、何処からか声が聞こえて来た。威圧感があるな?
「お前、何をした?」
「……」
この声に答えるべきか、それとも無視してグリフォンを倒すべきか……
「ん、この声は……」
「ニャラ様、この声が誰か知ってるの?」
「ニャラ……だと?ニャラートテップか?」
あ、どうやらそっちの繋がりですか。となると答えた方が良いかも
「このちょい高圧的な態度の癖にすぐに姿を出さないもったいぶった感じは!」
「一言余計だ」
すると、グリフォンと僕の間になにやら黄色いローブを纏った存在が現れた。ニャラ様と交流があって、黄色のローブ……いやぁ、なんだか心当たりが1つあるなぁ……
「そこの人よ。こやつを倒すのはまだ、待ってくれんか?」
「……失礼ですが、お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
もう何となく分かっているけど、聞いてみよう
「我が名はハスティル。黄衣の王とも呼ばれている」
うわぁ、出ちゃったよこれぇ……まぁ、流石にここで神とやり合うのは得策ではない。でも、向こうが提案して来るなら、こっちだって色々と提案する事は可能だろう
「なるほど、ではハスティル様。僕らが退く代わりにそちらにお願いをしても構いませんか?」
「交換条件か。まぁ、話は聞いてやろう」
さ、上手く行くかなぁ?




