毒と本
「それは、変装か?」
「一応、その後は関わらないって言ったんで、下手に関わっている所を他の人に見せる可能性があるならその辺は気を付けた方が良いでしょう?」
「そういう事か」
廊下を歩きながら、使用人さんと会話する。一応、貰い忘れた報酬を貰いに来たって言うのが理由だけど、一応、経過観察も兼ねてかな
「で、今の奥様には会わせてもらえるんだろうか?」
「それに関しては問題無い。君がもし来たらすぐに通してくれと奥様は言ってたからな」
なるほど、それなら話が早い
「奥様、あのお客人がいらっしゃいました」
「何っ!?」
「おっと」
扉の奥から結構な速度で歩いて来たのをオーラで見たので、使用人さんの首根っこを掴んで後ろに退くと、扉をバーンッと開いて、中から奥様が現れた。使用人さんがもう少しで扉に吹き飛ばされる所だったな
「あっ、すまない。ずっと待っていた報だったのでな……」
「い、いえ、問題ありませんので、お気になさらずに……」
「あ、お話よろしいですか?」
これは放置すると、また気まずい空気になりそうで良くない気がしたので、一旦会話に入ろう
「これまた、この前とは随分違う姿に……あぁ、今回は何の話かな?」
「いえ、そういえば毒物を貰ってなかったなと思い出したので」
「おぉ!それは丁度良い。アイツの家から回収したデリーマと呼ばれる実を主原料として作られたらしい例の毒物は回収出来た。これを持って行ってくれ」
『デリーマの毒 この毒を飲んだ者は、魔力霧散症を発症する可能性が限りなく高くなる。決して安易に使って良い物では無い』
まぁ、あの時の奥様の容体を見れば、容易に使って良い訳が無いよな。魔法の名手だろうと、戦闘の名手だろうと、あの状態になってしまえば、戦闘の継続自体が不可能に近いだろう。でも、この毒自体を入手出来たから、治療薬然り、強化然り、はたまた【反転陣】で逆に魔力を増やす事とかも出来たりするんじゃないか?
「ありがとうございます。それと、もう一つ。これはあればで構いません。もし、魔法に関する書物等があれば閲覧の許可を頂きたいのですが」
「魔法に関する書物か。ならばこちらだ。ついて来てくれ」
あの決闘に勝ったからなのか、物凄い信用されてるかも。これは普通に話が早くて助かるな
「ここが我が家の図書室だ。そして、魔法に関する書物は、あの辺りだな」
「では、少し見させて頂きます」
「あぁ、好きに見て行ってくれ。この図書室を守れたのも君のお陰だからな」
そういえば負けたら貴族剥奪みたいな戦闘だったっけ?そう考えると、下手したら一部の大事な歴史とかが消えるかも知れなかった訳か……いや、あっちの家の歴史は間違いなく僕達で消したからどっちにしても大事な歴史の一部は消える事になっていたか
「ほうほう……」
悩むフリをしながらも、リーディングスキャナーで片っ端からスキャンする
「ん?」
スキャンする手を止めて、気になった1冊を出す
「基礎の叡智……」
何となくタイトルで気になったから手に取ってみたけど、少し気になるな。ちょっと読んでみよう
「ほう?それか……」
何か語りそうだったけど、僕が読むなら口を塞いでいた。ネタバレしない様にしてくれたのかな?
「魔法の基礎。それは各属性を球体にして放つボール系魔法。その魔法を習得する事こそ、魔法使いとしての一歩である」
軽く音読気味で読ませてもらおう。ふむふむ。言わんとしてる事は分かる。火の魔法を使える様になるって言ったら、まずは【ファイアーボール】そこからアローだったり、ウォールだったりに派生していくって事だよな?
「だが、この基礎。これはきっと、入門する為の物で、極めようとする者はきっと居ないだろう」
まぁ、燃費は良いだろうけど、威力は無いだろうから、威力の高い技とか、そういった物を主力にする為にシフトはしていくだろうな
「だが、この基礎の魔法程、美しい魔法は無い……ふむふむ。まぁ一理あるか」
一番美しく、一番簡単だから基礎になり得る。読んでいて確かにと思うな
「そして、この美しい魔法を全ての属性分覚える事が出来れば、君は魔の神髄に至る事が出来るだろう……全属性の基礎魔法を覚えろって事か?」
いやぁ、普通に無理だな。ガッツリ攻撃魔法だから僕には1つたりとも覚えられない。でも美しい魔法かぁ……
「でも、全属性のボール魔法を覚えられたらこれはほとんどの敵に対して弱点を突ける……ん?まだ記載が」
本を読み進めていると、何か、オーラを纏った1ページがある。何でこの1ページだけ?
「えっと……」
この部分は内容的に声に出して読まない方が良いだろう。えーと、何々?これは、私には到れなかったが、このページを読める者には到達しうる可能性の1つとして、提示する。応用というのは基礎の上に成り立つ。基礎が盤石であればある程、応用にも幅が出る。上位の魔法等は要らない。基礎のボール魔法のみを極めれば、君は魔の世界の頂点に立つ事も出来るやもしれん……
「ほう?」
これはつまり、ボール魔法の出力を調整とかすれば、上位の魔法と威力自体は同じになるだろうから、上位の派手な魔法とか覚えるよりも、基礎のボール魔法を徹底的に修めて、ボール魔法をカスタマイズしてその場その場に対応出来る様にした方が強い……って事かな?
「なるほど。そういう理論もあるのか。おもしろ……」
これもしっかりリーディングスキャナーでスキャンさせてもらいますね?




