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大木を目指して

「ひょっとしなくてもアレ、ゴブリンだよねぇ……」

 緑色の小人はゴブリン。大体のファンタジーなゲームや小説なんかでも相場が決まってる。他のカラーもあるだろうけど大体ゴブリンって言ったらアレだろう


「でもなんか武装が凄い強そうなんだけど……」

 ゴブリンと言えどブーツからヘルムを被っている謂わばフルアーマーゴブリンみたいなのが居たり、軽装でいかにも偵察しますよ!って感じのゴブリンが居たりと今の自分じゃ到底勝て無さそうなゴブリン集団が大木周りに居た


「やっぱり村に帰れないのかなぁ……」

 この大木だけが他の木より高く、辺りを見回すのに絶好のポイントなんだ。ここで村の位置を確認出来なかったら多分村に帰れない


「仕方が無い。やるだけやってみよう!」

 偵察ゴブリンがとても怖い状況だけど匍匐で大木まで近寄ってみよう




(くぅ……中々匍匐で進むのも大変だなぁ……)

 ギリーマントがあるとはいえ、大木の周りは他に木が無く、背の低い草が生えているだけだ。多分隠蔽効果上昇とかが無ければ余裕でバレている可能性もある


 ずりずりとゆっくりだが、慎重に大木に向かって進んでいくとゴブリン達が目の前を歩いていく


「とりあえずここで一旦休んでいるが、逃げられただろうか?」

「分からないが、姫様を救うには我々では逃げるしか出来ない」


 なんとゴブリン達の会話が聞こえた。しかも何か結構重要そうな話な気がする


(逃げる、姫様?)

 聞こえた会話の内容的にこのゴブリン御一行は姫様を逃がす為に行動しているのかな?


 どちらにせよもう少し情報が欲しい。大木に近付くついでに姫様とやらも探してみるか


 ずりずりと匍匐を再開した


「あのオーガが……」

「姫様が特別だったから目に留まって……」

「可愛さ故なのか……」


 進むにつれてゴブリン達が話していた会話を聞いて大体の状況を察する。どうやらゴブリンプリンセスなる種族になった姫様(名前は分からず)が狂暴なオーガに結婚を迫られ、それを拒否。その姫様が居たゴブリンの集落をオーガが破壊してオーガから逃げる為にこの残った全戦力と共に逃走中……っとこんな感じか


(これは中々大変そうだなぁ……)

 更に得た情報はこのゴブリン御一行が逃げているオーガは3mを越えるらしいのでゴブリンじゃ歯が立たないと……


 3mと目測80cmじゃ勝負にならないのも分かる。そりゃ逃げるしか無いわ……


 どうやって逃げたかと言えば姫様によるバフ(強化)で全体のステータスが上昇して逃走したらしいけど姫様のMPが切れて休憩中。そして今この状況という訳だ


(無視……するべきなのかなぁ……)

 話だけ聞くととても可哀想な状況だけど今の自分のレベルはたったの3だ。たとえこのゴブリン達が3とか5レベルくらいだとしてもこの集団で逃げるのがやっとの相手に僕が手を出して勝てるとは思えない


 そんな中、大木の根本に置いてあった小さな駕籠(かご)の様な物の扉が開き、中から少女の様な姿の存在が出てきた


「皆、ごめんなさい。私が弱いばかりに……」

「「「姫様!」」」

「え?……あっ」


 ゴブリンプリンセスという名称から緑色の肌の小人でドレスとか着た姿を勝手に想像してギャップで思わず声を出してしまった。だってほとんど人間の子供みたいだったから!


「そこ、誰か居るのですか!」

「敵か!」


 姫様にバレ、他にも声が聞こえたのか槍を構えるゴブリン達。これ以上姿を隠しているとその内槍に刺されるかもと思ったのでギリーマントを脱ぎ、両手を上げて答える


「はい、居ます!ごめんなさい!敵意は無いです!」

「本当に居た……」

 自信無かったんかーい!ギリーマントを外した事でしっかり姫様を見た。やっぱりどう見ても人間の子供にしか見えない


「あなた、言葉が分かるのですか?」

「はい、そこに居るゴブリンさんの声は分かります」

 姫様に聞かれた事に対して答える。ここで下手に返事しなかったら周りのゴブリン達に何されるか分からない


「分かりました。では聞きます。何故ここに来たのですか?」

「道に迷ったのでそこの大木に登って村の場所を確認しようと思って来たら、この周りにゴブリンさん達が居ました!」

「ぷっ」

「怪しいぞ!」


 なんか姫様が噴き出した気がするけど扇子みたいなもので口元を隠した。そして周りのゴブリン達に槍を突き付けられジリジリ距離を詰められる


「待ちなさい。あなたは自分の村に戻る為にこの大木に登りたい。そう言う事?」

「はい、その大木を登りたくてうずうずしています!」

「ぷくくっ」

 姫様が必死に笑うのを耐えている気がする。笑って許してくれないかなぁ?


「私達を追って来たりはしていないのね?」

「良い感じの草と花を追って迷子にはなりました!」

「あははっ!もうダメ!おかしい……くくっ、あははは!」

 良し!勝った!何がとは言わないけど何だか途中から笑わせる事に意識が向いていたかもしれない


 駕籠で転げまわる姫様を見て、他のゴブリン達も「姫様が笑った!」とか言ってるから何か大丈夫そうかな?


「あなた面白いわ!名前は?」

「ハチです」

「へぇ?ねぇハチ?何か食べる物とか無い?魔力を使ってお腹が減ってるの」

 急にフランクになったなぁ?この姫様


「木の実……か肉がありますけど」

「姫様!得体の知れない相手に食べ物を貰うのは……」

「じゃあお肉の方を頂戴!」

「姫様……」

 中々お転婆なのかな?


「あの、燃やす物が欲しいので木材とかあれば……」

「それならそこの木の剣を使いなさい。それじゃあ持っていてもオーガには勝てないから」

 村を出る時に持ってきたのか木で出来た剣を燃やす様に言ってきた。確かにこれじゃあすぐ折れちゃうよなぁ……


「分かりました。ではありがたく燃やします」

 火起こしセットを使って火を起こし、木の剣に引火させる。スプリングボアの特上肉を木の枝に刺し、火でじっくり焼く


「「「「「「ごくりっ……」」」」」」

 ゴブリン達から生唾を飲む音が聞こえる。そりゃ僕だって食べたいもん


『スプリングボアの特上ロースト じっくりと直火で焼かれたスプリングボアの特上肉。美味い(確信) 空腹度20%回復 追加効果1時間 HP上限 +5% MP上限 +5% STR +10』


 何か追加効果付いてるぅ



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[一言] 美味いだろうな(確信)
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