自慢したい奴
「今日はありがとうですの。そのボスの素材は全て貴方にあげますわ」
「分かりました。ではありがたく貰いますね」
黒いナイフを取り出し、ボスの残骸に突き立てる。これも一応試してみようとは思ってたし
「これは私の……お金はあげるね」
「お金はダメ……」
「おっ?」
グリーサの声が聞こえた。どうやらグリーサがボスの素材を持って行ったみたいだ。で、お金の方をくれようとしたみたいだけど……そこはウチの鉄壁の財布の番人であるモノさんがお金を拒否。あれ?これだと僕の所に何も入らないのでは?
「なら、代わりの物で良い?」
ナチュラルに思考を読んで来るけど……代わりの物?なんだろう?
『強欲の片鱗 を入手しました』
『強欲の片鱗 レアリティ カースド この片鱗を付着させた物を変質させる。敵に付着させた場合、狂暴化するが、レアアイテムが出やすくなる。アイテムに付着させた場合、量が減るが、性能が強化されたりする。装備品には使用出来ない』
何か鱗の様な物を貰えた。これは……敵の強化アイテムかな?敵を強化するけど、レアアイテムが出やすくなるか。効果としては割と全うでは?
「それは、10体分くらい魔物を貰ったら1枚あげる」
「なるほど……まぁ集めて損は無いか」
10体倒せば敵強化アイテムとレアドロップ率アップのアイテムが貰えるのは中々良いんじゃないか?
「お金が要らないのなら、モノが止めてたお金も貰う。その代わりに素材は少し残す」
「ん、それは良い提案」
「おっ!それはありがたい。融通を利かせてくれてありがとう」
「えへへ……」
普段の採取アイテム量が減るけどレアアイテムが狙いやすくなる。これは良いんじゃないか?相談してみる物だ。というか凶具間でのそういう融通の利かせ合いみたいな事とか出来るんだ……
「一人でブツブツどうしたんですの?」
「いえ、この素材を何に使おうかなって思ってただけですよ」
レイカさんの所まで僕らの会話は届いてなかったみたいだし、別に言わなくて良いだろう。新しくドロップ制限も掛かったけど、まぁこの位可愛い物だ。作るのに必要な物があるならその分僕が頑張れば良いだけ。それに、レベルアップするのにも丁度良いかもしれない
「それじゃあ帰りましょうか」
「ええ、そうですわね。このテッちゃんを見せつけてあげますわ!」
「テッちゃん……あぁテセウスだからテッちゃんね。見せつけるって誰にです?」
何か見せつけるらしいけど……誰に見せつけるんだろう?
「キリエさんに見せてギャフンと言わせますわ!」
「……あぁ……そこそういう関係?」
もう頭痛くなってきたぞ?この後の展開が何となく見えてしまうのはどうしてでしょうかねぇ?
『ハチ?ちょっと良いかしら?』
噂をすれば例の方からのメッセージや……
『あ、今ちょっと忙しくてですね?』
『レイカと一緒にダンジョンにでも行ってるのかしら?』
どっかから見られてる?レイカさんがノリノリで僕の腕を掴んで城に帰ろうとしてるけど、これはマズイ。多分だけど、僕がレイカさんの所に行った情報はチェルシーさんからキリエさんに流れてるだろう。それを考えると、多分レイカさんの城に戻ったらキリエさんが待ってる。んで、魔法銃を作ったって事がバレたら……当然自分にもと言われてもおかしくない。何といってもアイリスさんに武器(幾重ちゃん)を作ったあとにそんなに武器改造とか出来ないですよーとか言っておきながらのコレ(テセウス)だ
『えっと……はい』
『そう。じゃあレイカの城で待ってるわね?』
間違いなくキレてる。僕にどうするかの選択権があったとしても、向こうにだってお願いする選択権がある訳だから……レイカさんの城に着いたら決闘とかになりそうだなぁ……
「ただいまですの!いやぁ最ッ高でしたわ!」
「あら、お帰り。お邪魔してるわ」
「あっキリエ!ほら見るんですの!この素晴らしい銃を!もう最ッ高ですわ!」
「ふーん?凄いわねぇ?こんなに色々と詰め込まれた銃はどうしたのかしら?」
「こちらのハチさんに作って貰ったんですの!本当に感謝しますの!」
レイカさんはただ僕に感謝をしてくれてる。うん、それは嬉しい。ありがとう。でもね?物事にはタイミングって物があるんだ。残念ながら今そのタイミングは非ッ常にバッドタイミングなんですわ
「あ、どうも……」
「この城。久々に来たけど、中が随分と綺麗になったわね?」
「こちらのハチさんに直してもらったんですの!」
うん、そうだね
「あら、そのドレス。綺麗ね?」
「こちらもハチさんに作って貰ったんですの!」
うん、そうだね。そりゃあ新調した物を褒められたんだ。嬉しくて自慢したくなる気持ちは凄く分かるね
「ちょっとこのハチ借りていくわね?」
「え、これからお礼にお茶でも用意しようかと……」
「借りていくわね?」
「え、でもお茶……」
「借りていくわね?」
やっべぇよ。笑顔が張り付いてるって……目も笑ってないよアレ……頼むレイカさん。負けないで!
「そこまで言うなら仕方ないですわ。そうですわ!お礼って事で、中庭で作ったお茶のパックですの。気分が安らぎますわ」
「わー……ありがとうございますー」
「じゃ、借りてくわね」
頭の中でドナドナと聞こえてる様だ……うん。貰ったお茶のパックでどれだけキリキリの胃がリラックス出来るか試してみよう




