アストライトに戻る為
ミツバチの巣に向かって進み、辺りを見渡す。一応ミツバチが居ないかチェックだ
「なるほど、何の蜜かと思ったらアカシアの蜜か……」
地面を見ても花が無いからどこから蜜を集めているのかと思ったら上だった
アカシアと言っても確かニセアカシアだっけ?テレビで見ただけの知識だけど……通販番組とかで蜂蜜の説明をしてた。確かアカシアの蜂蜜って蜂蜜の女王って言ってたかな?
「零れている所は有るかな……?」
巣に傷を付けて蜜を取るのは中々危ない。ミツバチに見つかったら大変な事になる。巣の壊れている様な所があればそこから零れている蜂蜜を貰う。で、その後で壊れてる場所を修理すれば見つかっても許してもらえるかな?
「お、あった」
巣の壊れていて、蜂蜜が零れている場所を発見した。あそこにガラス瓶を置いておけば蜂蜜が溜まるだろう
「後で修理するからその零れているもったいない蜂蜜を貰うね?」
一言だけ謝っておきながらビンを置く。一応自分が使う分も確保したいからビンを置いたら一旦離れて木の近くで待っていよう。ミツバチがどういう風に蜜を集めるのかも気になる
「おぉ……」
上を見てアカシアの木の周りを飛んでいるミツバチを見てみると、ニセアカシアの花から何か粒子の様な物を吸っていた。そしてミツバチの周りに黄色い粉の様な物が回っている。あれは花粉なのかな?脚の根元に花粉団子っぽい物も出来てるみたいだしそんな気がする
「よく見ると結構凄いわね……」
「中々幻想的だなぁ……」
エアラさんがフードからミツバチの感想を言う。するとモゾモゾとした感触がフードの中からしたと思ったら銀色のカブトムシもひょこっと顔を出す
「花粉の輪も綺麗ですね?」
「花粉症の人は近寄りたくないだろうけどね……」
確かに綺麗だけど花粉症の人だとあれは辛そうだ。まぁこっちの世界に来てるプレイヤーで花粉症になっているプレイヤーは居ないと思うけど……花粉症になったりしないよね?
「もう少しで貯まるけど……この巣、蜂蜜の漏れ出る量が凄いな?」
僕としてはありがたいけど、せっかく貯めた蜜がこれだけ漏れ出ちゃうともったいないな……採取しやすくしてくれてるんだろうけど、こういうの見ちゃうと勿体無い感の方が先に出てしまう。他の人には悪いけどあれは直しておこう
「度々ゴメンね。これだけあればもう充分だし、直しておくね?」
壊れた部分を魔糸で修理してガラス瓶を拾う。1本丸々貯まってる……洩れすぎだろう?
「それじゃあ貰っていきますね?」
ガラス瓶に入った蜂蜜は後で僕の分とホフマンさんに渡す分と分けよう。ここでやらなくても良い
「で、逃げる訳ね?」
「戦う必要は無いからね?さっさとワープしに街に戻るよ。あ、街に着いた時は2人ともちゃんと隠れててね?」
「はい」「はいはい、分かってるって」
蜂蜜を回収したガラス瓶はインベントリに仕舞い、道に戻る。害虫っぽい虫が多いこの森でミツバチは明らかに益虫の部類だと思うけど、ここまで森の中に入らないと蜂蜜を入手出来ないとなるとある意味益虫の範囲を越えちゃってるって判断になっちゃうかな?
「ん?何だあれ?」
サーディライの街に戻る為、道に向かって歩いていくと何やら武装した集団を見つけた
「どうだ?居たか?」
「いえ、報告にあった虫人は見えません……既に何処かに行ってしまったのでは?」
「いや、まだ何処かに潜んでるかもしれない……全体、周囲警戒を怠るな!」
なんか危険なモンスターでも出たんだろうか?僕もそんな奴に会わない様にさっさと街に戻らなきゃ……とりあえずあの人たちの邪魔しないように通り過ぎたら後ろの方から行こう
「気を付けろ。話によると察知系のスキルを持っていた旅人でもその接近に気が付けなかったらしい。もし、ソイツがこの場に急に現れたとしたら我々が全力を持って倒さねばならない……」
隊長的な人が凄い深刻そうな会話してる。もしかして街からやってきた人達かな?僕も森の中を結構歩き回ってたけどそんな奴一回も見なかったな?
「白いローブを着た黒い蜘蛛の虫人なんて本当に居るんでしょうか?」
「報告通りならそうだな。領主様も道の付近だけで良いから安全を確保せよとの命令だ。あまり森の中に入り過ぎない様に気を付けつつ進め」
「「「了解!」」」
武装集団は街からやってきた人達で間違いないだろう。領主とか言ってたし
「マジ?」
でもその会話が聞こえて冷や汗たらたらだ。その虫人?の特徴が白いローブを着た黒い蜘蛛の虫人だって?
白いローブは?着てますねぇ?
黒い蜘蛛の虫人?手足はイドとエゴで黒いし、顔の部分はアトラさんをモチーフにした蜘蛛の顔を模したフルフェイスを装備してたから黒い蜘蛛の虫人……
全条件クリアしてますねぇ……僕
「よし、完全ステルス状態で街を目指そう」
何ならちょっと話しかけようかとか考えてたけど今の状態で話しかけたらいきなり斬られる可能性がある。ここはこの森の道の安全を確保してもらう為にも居ない相手を追ってもらおう
「やっぱりサーディライの街はあんまり好きになれないな……」
背中に2人を入れて、僕は街の方に静かに走った。【ジャミング】のお陰で探知系のスキルとかに引っかからないんだろう。ありがとうヘックスさん。お陰で何とかこの2人を送り届ける事が出来そうだ




