強欲の凶具
「この方で最後ですかね。本当に多くの人が巻き込まれたんですね……」
「確かこれでもお爺様達が本当に危険だった者達を眷属化したりして、死者を抑えたとは聞いています」
「本当にこんな事を起こした物を持って大丈夫なの?」
「あぁ、その点は心配だが、死者に対してもこれだけ真摯に向き合う者であれば……任せても良いのかもしれん」
吸血鬼が眷属化する事で死者数を抑えた……というのは割と致命的な攻撃を受けてギリ生きてる人とかは救えたって事だろうか?となると、この場にある300を超える墓に眠っている人達はほぼ即死級の攻撃とかで亡くなってしまった人達なのか……
「ハチ。もし凶具を屈服させるのであればここでやってくれ。ここは街からも離れておるし、安全でもある。ハチにその気があるのなら、こやつらに見せてやってくれ」
正直、魂は冥界に行ってるかもしれないけど、これはつまりここで封印を解いて、墓石の者達に安全だと証明しろって事なのかな?
「分かりました。でもそれは少し違いますよ」
「む?」
「僕は1人として凶具を屈服させたつもりはありません。凶具の皆が僕を信頼してついて来てくれてるんです。だからその屈服とかそういう事をするつもりはありません」
相手が道具であろうと、意思の疎通が出来るのであれば1個人として対等に接するべきだ。これはある意味僕の信念みたいな物かな
「分かった。では見定めさせてもらおう」
「はい。エリシアちゃんとフォビオ君は多分一度帰った方が良いかもね。この鍵を開けるのも中々苦労すると思うから、見るつもりなら食事とか持って来ると良いかも」
単純に解錠に時間掛かるだろうからなぁ……一旦2人は吸血鬼の国に戻って貰って食料とか調達してきた方が良い気がする
「分かったわ」
「はい。ご飯持ってきますね!」
さて、一応これで2人が居なくなったから何かあったとしても問題は無いな
「えーっと、確かこの位でやると良いんだっけ……力加減がやっぱり難しいな」
鍵を開ける為に微妙な力加減で真淵を使い解錠していく。あ、ヤバい。これ恰好付けて2人を街に帰したけど、普通に戻ってきても鍵開けてる状態だわこれ
「……手を貸そうか?」
「いえ!これは僕がやるべき事です!2人に格好悪い所を見せたとしても、これは僕がやらなきゃいけない事なんで!」
お爺さんが手を貸すとか言ってきたけど、これは手を借りたらダメだと思う。確かにそれならすぐに凶具との対話に取り掛かれるかもしれないけど、それは違うよなぁ……
「分かった。ではここで見定めさせてもらおう」
「はい。そこで見ていてください」
ちょっとずつだけど鍵を解除していき、ついでにこの鎖も回収だ。鎖とかいつか使うかもしれないし
「ふぅ……これで120個目?にしても凄い量だな……」
「当然だろう?それだけ大変な物だったのだから……」
まぁそれを今から僕は解除して中身を出そうとしてるんですけどね?
『スキル 【バスターキー】 を入手しました』
『【バスターキー】 パッシブ 鍵の解錠にボーナスが掛かり、開けやすくなる』
まさかのマスターキーではなく、バスターキー……なんだか鍵の解錠にボーナスって破壊するとかじゃないよなぁ……
「おっ、でも確かに鍵の解錠はしやすくなったかも……」
さっきに比べたら鍵の解錠はしやすくなった気がする。これは良い。残りも頑張って解錠していくぞ!
「これで最後かな。遂に箱が出て来た」
「まさか、本当にここまで来るとはな……」
「これが最後の封印ですかね?」
「あぁ、それを開けたら中に凶具が入っている」
遂に来たか。さて、強欲の凶具……いったいどんな凶具かな?
「では、オープン!」
割と小箱チックな箱だけど、中に何が入ってるんだろう?
「おっと……これは困ったな……」
中から確かに凶具らしき禍々しさを感じる物が出て来た。だが……
「うーん……どうしようコレ?凶具が欲しいと思って解錠はしたけど……」
「どうした?」
「いえ……ちょっと困った事になっちゃいまして……」
いやぁ、ちょっと今までの経験からアクセサリーを想像してたんだけど……いやまぁ、反応的にも暴れてたって言ってたし、これは想定出来たかもしれない
「まさか武器だったとは……」
「武器ではダメなのか?」
封印の箱に入っていたのは小さな短剣。いや、まだ手に取ってないからギリ分からないか?
「あっちゃぁ……これは計画がかなり狂っちゃうなぁ……」
採取用のナイフだったなら、まだ何とかなったんだろうけど、これは完全に武器認定されちゃってるのか、僕の手から弾かれた
「どうしよう。これじゃあちゃんとこの子を受け止められない……」
どうにかしてこの子を連れて行くなら……どうしたら良いか
「そう言えば、短剣と採取用ナイフの違いって何なんだ?」
ナチュラルに採取用ナイフは使っていたけど、短剣は武器として使えるけど、採取用ナイフは武器として使えない。この違いが何によって生まれているんだ?もし、その違いとか分かればこの子をどうにか作り替えて採取用ナイフにする事が出来れば僕でも持てるのでは?
「となると、これをどうにか一度持ち帰るしかないか……よし!ほっほっ!」
掴んでは弾かれ、掴んでは弾かれ、ナイフを徐々に上にあげる
「ぐっ……!こうでもしないとね……」
そして、高く上がったナイフが僕目掛けて落ちて来た
「お前!?いったい何をしているんだ!?」
「この短剣を、持ち帰るんですよ……」
インベントリに仕舞えない?手に持つ事が出来ない?だったら、僕自身に刺してでも連れ帰ってやるだけだ