表裏一体の樹
「という訳で、見かけた皆に声を掛けて来たけど、来てくれるかな?」
一応、特にまだ何も使ってない所に植える事にして、村の皆とか、働いている皆に夜集まってもらう形で話をした。教会には置手紙にしてきたけど、これで何とか集まってくれると助かるな……
「おぉ、いっぱい来てくれた!」
多分、空島に居る皆が集まってくれたと思う。悪魔に天使に神様にドラゴンにオートマトンに人間に魔物。いやぁ、こうしてみると本当に空島も凄い集団になった物だ……
「さぁ、夜ですよ。来たかったらどうぞ」
「「待ってました!」」
「今回は何をするんだ?」
勿論、深淵の3柱もやってきた。こんなお祭り騒ぎな状態で来ない訳が無いよな
「皆良く集まってくれたね。ちょっと今回はこれを植えてみたくてね」
「それは?」
「フィフォトの実って物なんだけど、何でも周りの環境によって成長する木の形が変わるらしくて、つまり周りの皆の影響を受ける樹って事になると思うんだ。だから、今のこの島の皆が居るこの状況でこれを植えたらどんな風になるのかなって気になって……」
「ハチ。場合によってはとんでもない事になるかもしれないぞ?」
「その時はまぁ、木材にするしかないかなぁ……」
植えた樹によっておかしな事になってしまうなら、もう切り倒して木材にするしかない。悲しいけど、皆に悪影響を与える物をこの島に置いておくのは良くないからね
「いざという時は、対処しよう」
バルミュラ様もジェリスさんに頼んだら来てくれたから一応、神のバランス的な問題は何とかなってるとは思う
「悩んで居ても仕方ないし、早速植えてみよう。クオン、モニク。ちょっとこっち来て」
機械と生物という相反する存在の融合体であるクオンと、悪魔と天使の中間?みたいな存在のモニク。そして今この場で見せよう
「……っし!やるぞ!」
パラドキネシスを展開し、森羅の神楽舞で成長させる。さぁ、力ある者達と相反する存在の証明はした。お前(実)はどう答えるんだ
「さぁ、どんな成長をしてくれるんだい?」
植えた実から芽が出て、徐々に成長していく。樹がドンドン大きくなっていく
「おっ?またなんか変な形の樹になったなぁ……」
ただの大木ではなく、樹に何か球体の様な物が付いている。木の実……とは違うみたいだな
「さてさて、何ていう樹になったかな?」
成長した樹がどんな樹になったのか確認してみよう
『メビウスツリー 生と死。セフィロトとクリフォト。それらは一続きの表裏一体である事を忘れてはならない』
何だか凄い仰々しい説明ではあるけど、つまりセフィロの樹とクリフォの樹の両方の性質はあると見て良いのかな?
「ふむふむ。皆何か体に違和感とかある?」
「「「「「特に無し!」」」」」
まぁ、そもそもあの森に生えていた樹から持って来た実を育てただけで何かしら体に影響が出る様な物が生える訳が無いか
「はぇ~。あの樹ってこんな樹にもなるんだ。初めて見た」
「珍しいの?」
「そもそもセフィロの樹もクリフォの樹も珍しいよ~。でも、ニャラ的には我こそが悪の象徴!とか、正義の印!みたいなあの鬱陶しい樹がこんなよく分からない物になるのはビックリだねぇ?」
ニャラ様でも知らないんだ……
「えっとえっと、この樹……なんだか凄いね?禍々しくも思うし、神々しくも思う。でも不思議とそこにあって当然の様で特別な様な……何とも言い表せないけど、凄い!って事だけは分かるよ」
モルガ師匠も表現が難しそうで困ってるな。となると、割と本気でこの樹は今までなかった物の可能性があるな?
「おい、ハチ。何か樹から落ちて来たぞ」
「ん?」
確かに大樹となったメビウスツリーから何か光の玉がゆっくり1つ落ちて来る。いや、あの玉普通に結構デカいぞ?人1人入ってても不思議じゃない……こういう場面は今までの傾向的にもまずは見の構えで行こう
「人……か?」
地面に着いた。光の玉が花開く様に展開されると、中から、ワンピース?みたいな服を着た頭に白い捻れた角が生えた少女らしき存在が出て来た
「まぁ、まずはこんにちわと言うか、おはようございます……かな?」
相手がどんな存在か分からないし、一旦会話が可能かどうかを確認してみよう
「人の子。ここは何処だ?」
「ここは、一応、僕が所有してるって事になってる空島です」
「そうか。何故この樹を育てた?」
何故?うーん……難しい質問だが、包み隠さず答えるのならやっぱりアレしかない
「話を聞いて、ウチならどんなのが育つのか見てみたかったから。かな?」
「そうか。知を求めてか?」
「いや、別に……本当に何となく育ててみてなんか皆に悪影響があるなら木材にでもしようかなって……」
「何だと!?人の子!今とんでもない事を言った意味が分かっているのか!?」
そんな事言われてもねぇ?誰かが気分が悪いとかになったらある意味花粉症で困ってる人の近くにスギ花粉をバラ撒く杉を用意するかの如くの悪行だと思ったから、そんなのすぐに木材にしてしまった方が良いに決まってるし……
「はぁ……これまたとんでもない人の子の様だ。我はダアト。特にこの樹に興味が無いのであれば、以降の世話は我が行う。この地を統べる者なのであれば、一応許可を貰いたい」
「あ、そうでしたか。どうもハチと言います。皆の体調にも特に悪影響とか無いみたいですし、どうぞどうぞ。協力出来る事はするつもりなので、良かったら気兼ねなく頼ってください」
「ふっ、これはまた面白そうな人の子だ」
「「「むっ」」」
こら、そこの3柱。俺達が先に目を付けてたみたいな敵対心を出さない……




