フィフォトの実
「多分、この辺は村があった位置じゃないかなぁ?」
遠くに見えるヘックスさんの根城だったアルファン山。姫様達と出会った大木。毒草云々で近寄った川……僕の記憶違いでなければ、この辺りは確かはぐれ者の村……元アストライト跡地だ
「懐かしいなぁ……あれ?でもアトラさんの案内無しでここから帰れるのかな?」
多分、ここは隠しエリア的な物でアトラさんとかに連れて来てもらわないと来れない場所だと思うんだけど……それとも、もう跡地になってるからそういうのも無いのか?
「でも、今のところ人が来た形跡とかも特に無いか……なら何か持って帰れそうな物があれば持ち帰りたいな……そうだ!」
こういう時に頼りになる人が居たなぁ?
「俺を呼ぶのは……まぁ、ハチだよなぁ……」
「やぁセーレさん。今回の供物は僕としては思い出の食べ物何だけど、受け取ってくれるかな?」
「ん?おぉ、蛇の丸焼きか。これが思い出の食い物なのか?」
悪魔のセーレさんをシジルを使って呼び出した。セーレさんなら多分アレは持って行く事は出来ると思うんだよな……
「そうそう。僕がある意味初めて作った料理かな?」
「ほう。そりゃあ確かに特別だな。おぉ……蛇ってこんなにジューシーだっけ?」
「多分、この蛇の種類が美味しい種類なんだよ」
バネの様にしなやかだからこそ、お肉も美味しいんだろう。これならセーレさんも供物として納得してくれるかな?
「んで、俺を呼んだのは何か運ぶのか?」
「あそこの大木って空島に運ぶ事って出来るのかなって」
「うーん……出来る出来ないで言えば出来るだろう。でも、そいつは止めておいた方が良いだろうな」
止めておいた方が良いんだ。ちょっと理由を聞こう
「一応、その理由を聞いても良いかな?」
「建物を動かすなんてのは別に問題は無い。だが、あれだけの大きさの大木を動かすとなると、周りの生き物達の生態系が少し歪む可能性がある」
確かに、あの木は色々とありそうだし、パーライさんとホーライ君が居た所でもあるから、生態系云々に関しては確かにそうだな……
「悪魔的に生態系の歪みは良くないの?」
「たまに生態系が歪むと強力なモンスターとかが生まれるんだが、そういう時はそういう事態を起こした悪魔ではなく、ソイツの方に悪感情が吸われて俺達的には良くない事だな……」
なるほど……確かに生態系の乱れで何か変なのが生まれるって事はありそうだけど、それをしたとして、悪魔的にはメリットが無いのか。それならやる意味が無いか
「なるほど……となると確かにやる意味はないな。うーん……じゃあこの大木を空島に持って行くのは止めておこう。そういえば村はオッケーだったの?」
「村は一応人工物だからな」
なるほど、そういう判定なんだ
「うーん、あの大木をどうにかして持って帰りたかったけど……あっそうだ!」
「お、おいどうしたんだよ!」
今の僕ならある意味それに近い事は可能だ!
「さぁ、育て~。そして実を貰うぞー!」
森羅の巫覡装に着替えて大木の周りで舞い、成長促進をさせて木の実を貰う。そしてその木の実を空島に持ち帰って育てれば疑似的にだけど、大木を持ち帰れる!
「本当にハチはとんでもない事をよく思いつくな?」
「可能な事をしようとしたらなんか規模が大きくなったりするだけだよ。さっきだって宇宙から帰って来た所だし」
「うちゅ……何?」
「宇宙。空の更に上。隕石と一緒に落ちて帰って来たんだよ」
「……」
口がポカーンと空いて塞がらないセーレさん。でもこれ事実なんだよねぇ
「おっ、出た出た。という訳でこの実を持って空島に行こう」
『フィフォトの実 天明の樹フィフォトから得た木の実。無味。この実が育つ時に周りに居る者の影響を受けて育つ樹の性質が良くも悪くも変わる』
「フィフォトの実……育つ時に周りに居る存在によって育つ樹が変わる……なるほどなぁ。つまりこれは周りに人とかが居ないと自然な姿で育つけど、お世話とかすると、姿が変わっちゃうのか……」
うーん……自然な姿のフィフォトの樹がお世話というか、周りに居る存在によって姿を変える……ちょっと見てみたいな。というかさっき僕が成長促進をしても特に形が変わってない所を見るに、影響を受ける段階とそれ以降の変化しない段階みたいな事になってるのかな?じゃなきゃ樹が大きく姿を変えるなんてそれこそとんでもないエネルギーとか必要になるだろうし……
「よし、あえてガッツリ干渉してみるか!」
「お、おい待て待て。その実ってまさか、フィフォトの実か?それ物凄い貴重な物だぞ?」
「え?」
そんな貴重な物なのこれ?
「フィフォトの樹って言うのは、育つ環境……要は周りの存在に影響を受ける。俺らみたいな悪魔が居る環境ならクリフォの樹に、逆に天使とか居る様な環境ならセフィロの樹になる。その両方の影響を受けなかった珍しい樹だ。だからこれは欲しい奴は億の金を積んでも欲しいって奴は居るかもしれん」
「へぇ。まぁお金は別にどうでも良いから空島で育ててみよっか」
「まぁ、この程度じゃ止まんねぇわな……」
セーレさんも分かってるじゃないか
「じゃあ、セーレさん。空島までお願い出来るかな?」
「はいはい。そんじゃ行くぞ?」
指パッチンの音が聞こえると景色が切り替わる。うん、城に来てるね




