新たなスタイルの兆し
「という訳で、皆の武器を強化してって話をされても出来ないって言うかやらないです。イクエちゃんは元々僕が手掛けてたカサネガサネが変化した物なのでまだ良いですけど、僕が全く手掛けてない武器とかの強化に関しては正直責任は持てませんし、僕がやる強化って失敗すると武器が壊れるんで、気軽にやりたくないんですよね」
「難易度で言えばどんな物かしら?」
「そうですねぇ……大勢の人が見ている中で、片手だけで縫い針の穴に糸を通すのを10回連続で成功させる様な物ですかね?途中で外したら勿論全部パーです」
多少の誇張表現は混ぜても良いだろう。神経を使うのには間違いないし
「そ、そんな大変な事をやっていたんですか!?」
「だから言ったじゃないですか。僕が欲しいと思える物でも貰えないとこれはやりたくないって。作業1回やるだけでも物凄い集中しなきゃいけないんで、強く出来るならやってなんて気軽に受けられないって。そうですね……戦闘とかで例えるなら、今この場に居る人なら弓を持って矢を1本だけ使って10体敵を倒すとかそんな所ですかね?勿論それなりの強さの敵ですよ?戦闘スタイルとしては撃った矢を自分で回収して、使いまわして10体かな。途中で矢が無くなったり、壊れたら終わりです」
この位言えば戦闘主体の人でも分かってくれるかな?
「ちょっと待ってくれ。それは流石に……せめて耐久値の低いレイピアとかなら……」
「そうなんですロザリーさん。この分野。僕にとってはある意味畑が違うんですよ。だから皆が使ってない弓を僕は提示したんです。キリエさんとかならギリギリ同じ射撃職って分類上では同じ括りですけど、銃を撃つのと弓を撃つのは違います。その上で撃った矢が壊れない様に使いまわす様に撃たなければならないし、10体倒さなければならない」
急所になる場所を外してはならない。倒してすぐに矢を回収出来る様な場所で倒さなければならないみたいに色々と複合して来るから大変なんだよねぇ
「他の人の武器。強化失敗で破損のリスクを背負って臨まなければならないのならそれ相応の報酬が必要って意味。分かってくれますね?」
「あぁ、分かった。1つだけ聞かせてくれ。それは破壊不可の様なアイテムでも可能なのか?それなら多少は……」
「あ、無理ですよ。耐久値が無い物には使えません」
「え?」
「なので、もう一つだけ種明かしをすると、僕は耐久値が無いアイテムに耐久値を作り、特殊な改造を施しました」
勿論これは今回は上手くいったけど、普通に上手くいかない可能性もあった。サンプル1件だから現状は100%で出来るってだけで嘘は言ってないけど、これでチェルシーさんに更なる情報の追い打ちをかける
「ちょ、ちょっと待って下さい!耐久値が無いアイテムに耐久値を作る?それって破壊不可のアイテムの破壊を可能にするって事では!?」
「まぁ、理論上は僕はどんな武器が相手でも破壊する事が可能……かもしれませんね?」
もし、それをするのであればそれこそ戦闘中に相手の武器を強化するみたいなとんでもない事になるだろうけど……いや、それも面白そうだな?ちょっとその方向もやれるかやってみよう。何と言っても僕は支援術士だ。こういう【鍛冶】だって立派な支援だよなぁ?
「つまり、ハチ君と戦うと最終的には武器無しの素手勝負に持ち込まれるという事か」
「そういう未来もあるかもですね」
それ、面白そう!武器を作り替えるのは多分修理や修復と言うよりは0から作る技術もちゃんと必要だと思うし、そうだな……この技術を伸ばしていこうと思うなら五鍛冶の様な誰からも認められた偉大な鍛冶師と言うよりは、少し正道から外れたような方が良いかもしれない。これはちょっとワクワクしてきたぞ?
「ま、僕は僕でやる事があるので、それでは。イクエちゃんも頑張ってねー」
「頑張る!です!」
素直なのは良い事だ
「ヘックスさーん!」
「おっ?どうしたハチ。ピュアスライムリキッドの話なら……」
「いえ、そうではなくて!コレの解析をお願いしたいんですが!」
アイリスさんから貰ったミステイクアクアリウムを渡す
「コイツは……なんだ?観賞用のアイテムか。これがどうしたんだ?」
「確かに、それは観賞用のアイテムなんだろうけど、僕にとっては違うんだよ!僕には深海にある都市と繋がりがあるから、そこの人達を空島に来安くする為の装置のオリジナルだって言えば伝わるかな?」
「なるほど!すぐに解析して改良しよう。深海の住人が空島の周囲でも泳げる様になれば、新たな技術が入って来るかもしれないしな!」
海底都市の技術の何かしらを得られるかもしれないとやる気になったヘックスさん。確かに、あの減圧ドームみたいな技術とか得られれば何かしらにバリア装置的な物に転用は出来そうな気がする
「よし、となると次は思いついた僕の新しい戦闘スタイルを形にする為の鍛冶の師匠探しに行ってみよう!」
これを形にする為の相手を探すのは凄い苦労するかもだけど、形に出来た時はかなり楽しい事になるんじゃないかな?
4月25日に第3巻発売!それと、コミカライズの企画が進行してます('ω')b




