幾重
「アイリスさん強化出来たよー」
「えっ!?あの刀を本当に強化出来たんですか!?」
「うん。何とかねー。じゃあオートマトンさん。渡してあげて」
勿論武器を持てないという制約が邪魔ではあるけど、そこはオートマトンさんとかを挟む事で解決は出来る
「で、では拝見します……」
「あ、用事があるからこれにて失礼!」
凄い棒読みではあったと思うけど、これで良いだろう。追いつかれない内にさっさと逃げねば
「なななっ!?なんですかコレ!?」
「よろしく。です」
わぁ、何か黒い着物姿の小さい女の子が出てる。あれが人化ですかぁ……
「ハチ君これはどういう事ですか!?説明をお願いします!」
「なんか出来ちゃってぇ……自分でもよく分からなくてぇ……」
頑張って作ってみようで出来ちゃったんだからこればっかりはよく分からない。やっぱりNマターが何かしら影響してるのかなぁ……でも、僕が作ったクオンの武器にはそういうの無かったはずだし……
「せめて能力の説明だけでも!」
「あの人……今回の対象。です?」
「え?えぇ。まずはお話を聞かないといけないので!」
「分かったです。今、走って相手のスタミナに攻撃してる。です。だから効果発動です!」
「嘘ォ!?」
マジかよ……人化したせいなのか、確かあのカサネガサネ……もとい、今は幾重か?あの幾重の意思次第で効果適応範囲を相談出来るのか?だとしたらとんでもない事が起きるかもしれない
「あっ!足が速くなりました!」
「これで捕まえる。です!」
武器に対して能力の発動に対して応相談という事であるならば……僕だったら相手と会話して煽るだけで相手の精神を攻撃したとみなしてステータス上昇が開始する事になる。そして、幾重は時間に応じてステータス上昇が徐々に上がって行く。つまり、効果の対象を誰かに一瞬でも移さないと僕はアイリスさんに何時か捕まる……
「それは嫌なので追いかけられない所まで逃げるに限る!」
「ハチ君!報酬は要らないんですか!」
「くっ……」
僕が武器の強化を請け負ったのも素材というか、アイリスさんが持っている物を受け取る為だ。だからこれが貰えないんだったら、やった意味がない……
「説明は貰えますよね?」
「はい……勿論です」
「あるじの勝ち。です!」
いやぁ、報酬の話を出されたら止まらざるを得なかった。無事にアイリスさん達に捕まり、城に連行されて説明タイムだ
「で、この子がカサネガサネなんですよね?」
「まぁ元カサネガサネかな。今は当意即妙刀幾重。イクエちゃんかな?」
「イクエです!」
なんかピースサインしながら答えるイクエちゃん。なんだか機嫌が良さそうだ
「それは分かりました……それで、さっき少ししか見てませんがなんだが凄い改造されてた気がするんですけど……」
「じゃあイクエちゃん!自分の事だし、あるじさんに自分の能力を説明してあげて!」
「任された。です!幾重は一途です!1つの事にぼっとーです!それの邪魔はさせません!以上!です!」
「えっと基本的スペックの上昇と、カサネガサネ時代の1体に対して攻撃し続けるとステータス上昇の効果はそのままに、相手の攻撃は物理と魔法関係無く切り払うとか出来ると思います。人化するんで意外と融通が利く……かも?って所ですかね?」
「はっ!分かりやすく言ってくれてありがとうです!そんな感じ。です!」
正直まだ何か隠された能力があっても不思議ではない。ただ、今見えている情報としてはそういう効果が付いている
「また凄い物にしてくれましたね……」
「気に入らなかったかな?」
「あるじ。私は嫌いです?」
「そんな事ある訳ないじゃないですか!あなたは……イクエちゃんは私の大事な仲間です」
このタイミングでそんな事言われたら嫌いなんて言える訳が無いだろうし、実際アイリスさんが嫌う訳は無いと思う。じゃなきゃこれからも使いたいって強化をお願いしに来るとは思えない。このゲームにも当て嵌まるのかは分からないけど、基本的にオンラインゲームって常に最新の装備以外性能が低い。1年前最強だった装備はあっという間に使い物にならないみたいな扱いで、常に装備更新しなくちゃいけないみたいな話を学校の人が言ってた。まぁ極端な例え話かもしれないけど、自分の好きな見た目の装備とか、思い出の装備で続けられるのが一番良いよなぁ……
「ハチ君。これはちょっと滅多な事じゃ見せられない気がしてきたんですけど……特にチェルシーさんとか……」
「なら先に言っちゃえば良いんじゃないかな?」
「そんな事をしたらハチ君の所に少なくとも数人はイクエちゃんみたいな存在を作ってくれって来るんじゃ……」
「アイリスさんが今回の報酬として用意した物は今、僕がどうしても欲しい物だった。だからアイリスさんのお願いを聞いて武器を強化した結果。イクエちゃんが生まれた。じゃあ、僕がどうしても欲しい物を提示すら出来ない人がどうやって僕にお願いをするのかな?この島でも島以外でも、僕を脅せる人間がどれだけ居ると思う?」
「それは……居ませんね。断言出来ます。それなら安心ですね」
「?安心です!」
イクエちゃんはあまり分かってない感あるけど、まぁ大丈夫だろう。だけど、居ないってアイリスさんに断言までされるとは思わなかったな




