廃品回収
「という事で、一度アイリスさんには帰ってもらったけど、特殊能力を探すのならアグラウドかな」
あの技術を得た場所でもあるし、普通に失敗作が沢山あるのならそれを使わせてもらえるのならこっちとしても嬉しいし、【付呪】のストックもある程度貯められるからねぇ
「お久しぶりです鍛冶屋さん」
「おぉ!ハチさん!いらっしゃい」
「失敗した品とかってまだあったりします?」
「えぇ、最近はこちらの人が増えて来たので、弟子を増やしたのですが、その弟子がまた色々と失敗する物ですから……」
失敗すると言っても顔に笑みが零れている。これは孫を可愛がるおじいちゃん的な奴かな?
「自分が教えて育って行くって嬉しいですよねぇ」
「えぇ……技術を繋ぐ為に厳しくしているんで、その分途中で投げ出す者も多いですが、今も弟子としてやってくれている者達は我が子の様な物です」
「その子達が失敗した物を貰っても良いんですか?」
「そうだ。ハチさん!ハチさんが金属を加工をする姿を皆に見せてやってくれませんか?それの報酬って事で失敗品をお譲りしますよ」
金属の加工か……多分この場で見せる加工と言ったらアレかな?
「金属はこっちで選ぶというか持ち込んだ物でも?」
「えぇ。むしろそれが目的です」
「分かりました。ナイフとかで良いですかね?」
「えぇ!勿論!」
という訳ならアレでナイフを作りますか
「ここの炉はどのくらいまで熱が上がりますかね?」
「ドワーフが持っている炉にだって負けませんよ!」
「じゃあ問題無いですね。早速やります」
「おぉっと、こうしちゃいられねぇ!おいお前ら!一旦こっち来い!」
3人程親方に呼ばれて奥から出て来た。この3人がお弟子さんか
「この方は……」
「「「わぁ、ハチさん……本物だぁ!」」」
なんかむず痒いなぁ……
「説明するまでも無かったな。縁あってウチに来てくれたハチさんだ。お前らハチさんの加工の技術をよく見とけ」
まぁ、求めている物と合致しているか分からないけど、やりますか
「……」
「す、すっげぇ……」
「綺麗な音色……これがミスリルを打つ音」
「力は……それほど入れてない……打つポイントが大事そう」
「やっぱり金属の声でも聞こえてるのか?ミスリルと対話してるみてぇだ……」
親方を含めた4人が見守る中、ミスリルを打ち、ナイフの形にしていく。これでどうかな?
「ふぅ。とりあえずこんな物かな」
『ミスリルの加工用ナイフ レアリティPM 武器では無く、加工等に使用する為のナイフ。切れ味が良いので硬い素材でも柔らかい素材でもスパッと行けます』
なんかイメージで加工用のナイフを作れるかなと考えながらやってたら武器じゃないナイフになった。まぁ加工用という事ならこのナイフは僕でも持てるな
「ほい、親方どうぞ」
「ありがとうございます。お前らもいつかミスリルが打てる様になった時に備えての見学としても良い物だったろう?」
「「「はい!あの!」」」
「ミスリルを叩く時は何に一番注意しているんですか!」
「どうやってあれ程の加工技術を得たんですか!」
「ミスリルの叩くポイントみたいなのはどうやって見極めているんですか!」
わぁ、質問責めだ
「えっと、ミスリルは力を入れて叩けば良いって訳じゃ無くて、弱くて良いからこう、全体の纏っている魔力のバランスが崩れない様に目指す形に整えていくって感じ……かな?だから僕の技術はミスリルを含んでないとあんまり活かせない技術かもしれないから、普通の金属を扱う時には君達よりは下手だと思うよ」
一応、これで注意点とミスリルを叩くポイントについては話せたかな?加工技術に関しては……これ答えたって事にしてくれないかな?
「「「「なるほど……」」」」
良かった納得してくれた
「親方一応これで義理は果たしましたよ」
「ありがとうございます。こっちにあるんで、お好きな物を」
「親方?そっちにあるのって失敗作ばっかりじゃ……」
「ハチさんがその失敗作を引き取ってくれんだよ。全く、こんなに失敗しやがって……」
「おぉ!これは確かに沢山ありますねぇ!これをただ貰うのも気が引けますから、ミスリルをいくつか差しあげますよ」
「本当ですか!そりゃあありがたい!」
失敗作として置かれていた物には確かに特殊能力が付いている。お弟子さん達もやるなぁ?
「失敗作を見られるのは恥ずかしいんですけど……」
「あぁ、この武器や防具達は僕が作った物に力を与えてくれるんだ。例え失敗作として見放されたとしても、その力は本物。だからその魂を扱える物に移してあげて、もっと強くしてあげようってね」
「「「魂……」」」
こういう場で特殊能力の移植と言ってしまうと少し味気ない気がしたので、少し言い回しに気を使ったけど、振るわれずにただ放置されるか、また溶かされてしまうなら、その形を変えて、力だけでも繋ぐ事が出来れば、使わずに放置された武器や防具としては嬉しいんじゃないだろうか?
「師匠!今凄く鉄を打ちたいです!」
「私も!」
「叩くべきポイント……ミスリル以外にも活かせるんじゃないかな?」
「しゃぁねぇ!そんじゃやるか!ハチさんすみません。コイツ等やる気になっちまって……」
「どうぞどうぞ。やる気がある内に……鉄は熱いうちに打てって言いますからね」




