アイリスのお願い
「これは?」
「観賞用のアイテムっぽいんですが、自分の部屋で魚とかを空中で泳がせる事が出来るらしいです」
「ん?」
部屋で、魚を泳がせる?
「それーっ!」
「えっ!?な、なんですか!?」
「それ今ジャストで欲しい奴!アイリスさんそれ譲ってくれない?代わりに何か作るか、もしくは何処かでダンジョンを攻略してきたアイテムと交換でも良いから」
いやぁ、やっぱり人との交流って大事だよなぁ……自分とは違う経験をしているからこそ、自分では見つけられない何かを見付ける可能性が広がる。おじいさんが山で柴刈りに行った時に竹林で光る竹を見つける可能性もあれば、川で洗濯をしていたおばあさんが大きな桃を見つける可能性もある。動く人が多ければその分発見も沢山だ
「え、えっと……それじゃあ、あっそうだ!この刀って強化とか出来たりします?」
「これは……」
アイリスさんに提示されたのは何時ぞやの五鍛冶達と一緒に作った妙刀カサネガサネ。そう言えばアイリスさん今腰からこの刀を取ったし、普通に今でも使っているって事なのかな?
「これ。ハチ君が作った奴だよね?」
「ま、まぁそういう感じにはなるかな?」
一応僕だけじゃないけど、僕らで作ったって括りで良いよね?
「今のハチ君なら、この刀。更に強くする事も出来るかなって思って……この刀はずっと使いたい物だし」
そう言ってくれると僕としてもやる気は出る。確かに、この妙刀カサネガサネを作った時には無かった技術が今の僕にはある。やってみるか
「分かった。じゃあそのカサネガサネを強化したらさっき言ってた物を貰えるかな?」
「勿論です!では刀を……あ、何処に置きましょう?」
アイリスさんは僕が武器を持てない事を覚えていてくれたからか、僕に直接刀を渡す前にどこに置くか聞いて来た
「そうだね。だったら僕の作業場においてもらおうかな。ついて来て」
アイリスさんなら別にあそこを見せても良いだろう。皆戻っていったし、オートマトン島の方の作業場の方までカサネガサネを持って来てもらおう
「ここが、ハチ君の作業場……」
「そうそう。そこに置いてもらえるかな」
カサネガサネを台の上に置いてもらう。さて、まずはどんな強化がお望みか聞いて行かないとな
「よし、それじゃあどういった強化が良いのか話を聞かせてもらおうかな?」
「え?強化する時の物ってランダムじゃないんですか?」
「ん?まぁ、別にそこまでランダムって事は無いけど……流石に付与する物の量が多かったら難しいけどね?」
まぁ、ランダムで作った物から能力を移植するって感じだから、ある意味ランダムでありながら選択式と言って良い
「鍛冶師の方とは少し違うんですね……」
「まぁ鍛冶師じゃないからね。僕には僕のやり方が有るんだよ。それで、どんな能力が欲しいのかな?」
一応理解してもらえたみたいだし、強化したい能力というか、方向性を聞きたい
「えっと、コンセプトは変えたくないので、単純に攻撃力がアップとかしてくれると嬉しいです」
コンセプトを変えたくないというのは、1体に対して攻撃集中すると攻撃力が上がっていくというカサネガサネの根幹部分は変えなくて良いって事だな。それで攻撃力を上げたいとなると、単純にバフ効果の上昇とか、後はそうだな……1体に対して集中出来る様な物があると良いんだよな?
「アイリスさんに聞きたいんだけど、ただただ攻撃力を上げるだけが良いのか、それとも戦いやすくなるのが良いのか。そこを聞いておきたい。アイリスさんが色んな刀を扱うのであれば、このカサネガサネは単なる攻撃力の増加位で効果を留めておいた方が間違いなく戦いやすくなる。まぁその分個性は少なくなるけどね?」
簡単な話、複数の特性の異なる刀を扱うとなると、その刀に合せた振り方とかが有るだろう。これでもしアイリスさんが二刀とか使い出すとその刀に個性が少ない方が圧倒的に使いやすくなる。但し、アイリスさんがじゃじゃ馬だろうが乗りこなすという気概を見せてくれるのであれば、こっちだってやれる事はやる
「確かに、相手によって刀は使い分けます。通りの良い属性だったり、欲しいバフ効果だったり……でもその刀の個性を殺す様な使い方はあまりしたくありません。二刀は確かに手数は強力ですが、一刀程のパワーはありませんし、刀の個性を引き出しにくく、本当の意味で扱い切れる気がしません。だからこそ、このカサネガサネが個性を失う様な事は嫌です」
ほうほう。人によってはその選択は嫌われる可能性はあるけども、僕は良いと思うな。相手に合せて武器とかを切り替えるって言うのは良い選択だと思う。僕には出来ない事だしね
「分かった。場合によっては別物になるかもしれないけど、それでも良い?」
「分かりました。それでも構いません。男子三日会わざれば刮目して見よって言うじゃないですか。ハチ君に預けるのですから、それこそ大幅に変わっていてもおかしくありませんよ。むしろその覚悟が無ければお願いできませんし……」
そこまで覚悟が決まって居るのならやってやろうじゃないか
 




