詰まりの原因
「お疲れ様でした。これにて鬼ごっこを終了します。アトラ様は後でトレーニングゾーンまでお越しください」
「あぁ、捕まったんだ……」
「やった!やった!糸が出せる様になった!凄い凄い!」
もう糸が出せる事が嬉し過ぎてアトラさんが捕まった事にすら気が付いてないなこれ……
「アラクさん一応終わったみたいだけど……」
「あははははは!楽しー!」
これはアラクさんが満足するまで待つとするか
「ごめんなさい。はしゃぎ過ぎました……」
「良いんですよ。今まで出来なかった事が出来る様になったんです。はしゃぐのだって分かりますよ。とりあえず戻りましょうか」
「はい……」
結構な時間森の中を糸を使って飛び回ってたなぁ……これ僕らが何か糸の出し方とか教える必要あるのか?
「あ、降ろしてもらっても良いですかね?」
「あ、何か丁度良い重さで……」
うんうん、分かる。たまに丁度良い重さの物とかあるよね。でも、このお姫様抱っこ状態である必要は無いと思うんだ
「なんか、あの時と逆ですね?」
「ん?あの時と逆……あぁ、アラクさんが島に来た時とですか。確かに」
そういえばあの時はアラクさんを人の姿にして僕がキャッチしたんだっけ。それが図らずも逆の状態になっている
「「……」」
「ハチ様。お帰りが遅いので、お迎えにあがりました」
「あぁ、オートマトンさん。今アラクさんも満足したから戻る所だよ」
「そうでしたか。それでは戻りましょう」
アラクさんとその後何とも言えない雰囲気になった所でオートマトンさんが来てくれた。何というグッドタイミング。話題が無くなった時の何とも言えない空気って結構大変だよね……
「は、ハチぃ……遅いぞぉ?」
「あれま、アトラさんお疲れのご様子」
どう見ても僕らが戻って来るまでにオートマトンさん達に運動させられてたな?
「こ、こやつら……中々に容赦無い、ぞ?」
「まぁまぁ、アトラさんの事を思っての事ですから。はい、アトラさん【レスト】」
お疲れの様子だったし、【レスト】で回復させてあげよう。これってある意味筋肉の超回復みたいな事にも使えるのかな?
「……んおっ!力が漲っておる!」
「では、先程のをもう1セット行いましょうか?」
「それは勘弁してくれ……こっちもある意味老体だぞ?」
滅茶苦茶元気なご老体だなぁ……
「ハチ様。今回の目標は達成されましたでしょうか?」
「うん、アラクさんはしっかりと糸を出せる様になったよ」
「そ、そうだ!こんな感じで!」
「ほう……これは……」
アトラさんがアラクさんの出した糸を見ている。確かに強靭な糸だけど……ん?
「なんかこの糸。おかしくありません?」
「あぁ、これは凄いな」
「えっと、何か、変だった?」
アラクさんの糸が僕らの出す糸と違ったので、アトラさんと僕が糸を出して見せる
「儂らの糸はこんな感じだ。魔力で糸は作るが、こんな常に糸に魔力が流れ続ける様な流動的な物では無い」
「糸に魔力を流すってのは出来るけど、糸自体に魔力が流れ続ける……これは普通に人によっては魔力電池みたいな使い方も出来そうな糸……この糸で服とか作ったら凄い服になるんじゃないかな?」
多分、周りから魔力を吸収して糸に魔力を貯められるのかも。それで過剰分は出て行ってるから魔力が流れている……何となく脱臭炭みたいな感じだろうか?
「儂らが糸の出し方を教えるのではなく、教わる事になりそうだな?」
「そうですね……これは普通に凄いです」
いやぁ、最初の話とはまるで逆になりそうだ
「いや、普通に色々と教えて欲しい事は沢山あるんだけど……」
まぁ、教えられる事は教えるけども……
「それにしても、皆さんありがとう。お陰で糸が出せる様になった」
「因みに、アラク様が糸が出せなくなった事象についてお話は聞かせて頂けるのでしょうか?もし、今後ハチ様やアトラ様がそういった事になった場合にも対処出来る様に、または予防する為の策が有るのか等を知りたいのです」
診断をしたからこそ、予防をする為にも何があったか聞きたいか。それは確かにそうかも
「ええ、お話するわ。多分ハチ程の人間なら起きる事は無いとは思うけどね……」
「僕には起きない?」
何だろう。どういう事だろうか?
「昔、小さい頃だったけど、ウチには人間の女の子の友達が居たんだ」
「ほう」
人間の子と友達か。これはまた何かのフラグになったりするのかな?
「その子と遊んでいた時に事故で建物が崩れて来た。咄嗟に彼女を助けてウチは建物の下敷きになった」
「それが糸が出せなくなった時の事故……」
「そのまま死ぬって思ったんだけど、彼女。魔法を習っていて、ウチを助けようと必死で回復魔法を掛けてくれたんだ。けど……多分その時かな。瓦礫の破片とかもウチの体の中に入った状態で、しかも人じゃないウチに不完全な回復魔法だっただろうから、糸を出す部分を全部塞いじゃったのかも」
相手の体の構造を知らないまま破片とかも多い所で治療しようとするとそういう事もあるのか。それともこれはNPC限定の何かなのか?
「まぁ、その子ももうこの世にはいないだろうけどね……」
うーん、実にヘビーな話を聞いてしまった
 




