教育クエスト
『一応、ライマーから、その機械はスライム達にとっては風呂に入っている様な物らしい。どうせハチならその辺を気にしているだろうってな』
「ほうほう、なら無理強いって事は無さそうですね。スライム達もお風呂に入っている様な物なら喜んで協力してくれるかな?」
スライム達も搾取する存在では無くて仲間だし、体の汚れ的な物を取り除いてピュアスライムにする事が出来るのならかなり良さそう
「にしても、ライマーさんも僕の事を分かって来たなぁ?」
自分の事を理解してもらえているというか、言わずとも繋がってるって感じがしてこういうのも良いな……
「さて、ピュアスライムリキッドが量産出来たとなると、約束通りにお裾分けしようか」
トーマ君やドクターにお裾分けするって話は出していたからな。一応、瓶1つ分だけにしておこうか。そこから複製するのかどうするのかはお任せするとして、この件は一旦終わりって事に出来そうだな
「ハチ」
「あれ、アトラさん。どうです?楽しんでもらえましたか?」
一応少し遠目でミオンさんが見てるけど、まぁそうか。あんまり離れちゃうと術が解けちゃうのか
「あぁ、こんなに楽しいのは久しぶりだ」
「良かった。まぁ……こういうのもある意味恩返しの1つなんですけどね……」
「恩返し?」
「アトラさんは覚えてます?僕がはぐれ者の村に居た時の事」
「あぁ覚えているさ」
懐かしいなぁ。あの時は森の中でゴブリンの姫様を助けたり、ピュアルのパーツを集めたり色々したけど、なんだかんだ言ってはぐれ者の村から出ていく時の新しい冒険に出るワクワク感や皆と別れる寂しさとか色々な感情がごちゃまぜだった
「でもやっぱり……あの森で迷っていた時に一番最初に捕まったのがアトラさんで良かったなって」
「ぬ?あぁ!あの時か!供物でも渡されたのかと思ったあの!」
「最初に会った時の言葉……」
どうかな?覚えてるだろうか?
「どうせ食べるなら頭からにして欲しいかなぁ……だったか?まさかあの出会いからこんな事になるとはな」
「そうですそうです!いやぁ、覚えていてくれてましたか」
「あんなのはそうそう無いからな」
2人で空に浮かぶ月を見てちょっと前の事を思い出す。いやぁ、あの時はオートマトンさん達も居ないから技術力も無くて手作りの物で色々と頑張ったもんだ……
「ハチ。前に教えた【魔糸生成】あれはキチンと扱えるか?」
「えーと【魔糸生成】色々と使い勝手が良いので、割と使える様にはなってると思います。これのお陰で他に扱う力も操作精度が上がってる気もしますし……」
実際線深淵とかとの組み合わせの時はとんでもなく有用だったからなぁ……
「そうか。ならばそろそろ紹介しても良いかもしれんな……」
「紹介?」
アトラさんの紹介となるとまた住人になりそうな人って事かな?
「実はな。儂にかなり年の離れた妹が……生まれたそうだ。今そういう天啓が来た」
「えっと……おめでとうございます……で良いんですかね?」
「まぁ、ありがとう……と言っておこう」
アトラさんにかなり年の離れた妹……えっと、どういう状態になってるんだ?一応、アトラさんも何かしらの神みたいな雰囲気と言うか、風格を感じるけど、妹となると……どういう扱いなんだろう?
「えっと、それは、蜘蛛の神様2体目みたいな事ですかね?」
「あぁ、そんな感じだ」
蜘蛛の神様が今生まれたと、それはまた凄い事だなぁ……
「ハチに頼みがある」
「はい。何でしょう」
「儂の妹……アラク=ナトの教育を手伝ってくれんか?」
『特殊クエスト 神の教育 を開始しますか?』
おいおいおい、とんでもないクエスト来たって!?
「えっ!?」
「全てやってくれとは言わん。アラクの神としての役目はその役目を受けた時点で頭の中に入って来る。細々した事は儂も教える。だが、人間との付き合い方は出来ればハチから教えてくれんか?儂としても、いきなり戦闘する事になってしまうのは忍びない。ハチに協力してもらえれば多少は話の出来る者になると思うのだ」
アトラさんがキチクモと称されて、戦闘を仕掛けられた過去があって、今の僕らの生活を知っているからこそ、人との付き合い方を学ばせるのにここは丁度良いって事なのかな?にしても神様の教育ですか……
「中々とんでもない依頼が来ましたね……」
「どうだろう?儂もいきなりの事で驚いては居るんだ……」
「ですよね。じゃあこの件については村の……いや、島の皆でやって行きましょうか!」
神の教育……その結果がどんな結果を引き起こすのかは知った事ではない。でも、今は僕の島に居る大事な存在のアトラさんが困って居るんだ。だったら助けないとダメだろう。誰かが神になる瞬間というのはバルミュラ様の時みたいな感じで神になるのだとしたら、知性が失われる訳じゃ無いだろうし、何とかなるとは思う。まずはそのアラクさんに会ってみないと何とも言えないな
「えっと、そのアラクさんって僕らが会いに行くんですか?」
「いや、どうやら今こちらに来る様だ」
「今から来る?何処から……」
「ぁぁぁ……!」
声がする……親方!空から巨大な蜘蛛が!




