器の価値
「なるほど……まさかこのような計画に参加させて頂けるとは……しかもこれがミスリルの粉末……これを上手く含有させれば……すみません。ちょっと場所をお借りしても良いですか!」
「ええ、どうぞ」
ハトウさんに場所の使用許可を出すと、懐から建物の模型の様な物を取り出した
「今の家の物も良いんですが、このユニークアイテムも出先で良い素材を見つけたら即試す事が出来て良いんですよ」
そうハトウさんが言うと、模型の中に吸い込まれていった。もしかしてこれ……ポケットに入る鍛冶場的な中々凄いアイテムなのでは?
「よろしければ二人ともどうぞー」
模型からハトウさんの声が聞こえたので、その模型に触れてみたら、吸い込まれる感覚と共に、気が付いたら目の前に立派な鍛冶場が広がっていた
「本来なら金属の鍛冶をする場なんですが、ちょっと私の方で改造しまして……」
ガラスを加工する為なのか、内部の構造が普通の鍛冶屋と違うらしい。僕もそこまで詳しい事は知らないけど、パイプやら火ばさみっぽい形の物とか色々置いてあるな
「早速、頂いたミスリル粉を使ってグラスを作ってみたいと思います」
「お願いします」
どろどろに溶けているだろうガラスの中にミスリルの粉末を追加していく。かき混ぜたりしてるみたいだろうけど、一旦見守ろう。こういうのは趣味としてやってみたいだろうから、邪魔するのは可哀想だ
「……」
作業中は終始無言なハトウさんだけど、それだけ真剣に作っているって事なんだろう。息を吹き込んだり、火ばさみの様な道具で挟んだりして段々カクテルのグラスの形になっていく
「出来ました」
「これが……」
『ミスリルカクテルグラス レアリティPM 特殊効果 保温(温度が保たれる) テイストアッパー(完成した飲み物の味や効果が良くなる)』
おっと……?
「保温とテイストアッパー……これは凄い。あれ?ポーションとか作ると瓶も一緒になんか出来たりするけど、こういう事が起こるって事は、瓶を自作する事でポーションの能力とかも高める事が出来るんじゃないか?」
正直疑問には思ってた。錬金術でポーションを作成して瓶も一緒に出来ている所とか見て来たけど、アレはあくまで最低保証の容器であって容器も良い物を作れば完成したポーションの性能を更に高める事だって出来るかもしれない。しかも、今回はカクテルのグラスでこういう事が起きたって事は……
「これ……場合によっては料理人の人達だって欲しがる物になったかも」
器で温かい料理は冷めない様に、冷たいアイスも溶けない様に、尚且つ美味しい料理を更に美味しく、バフ効果すら向上させるとなれば、これが皿になった途端に料理人達にとっても、器の価値の見直しが必要になる可能性すらある。今まではただよそう為だけの器が、自身の料理を更に美味しい物にしてくれるとなれば、更に効果を引き出してくれるならば……その時初めて器が料理の一部となるんじゃないか?
「ハトウさん。今貴方が作った物で料理人達の地位が少し向上する可能性がある物を作った……偉業の瞬間かもしれませんよ!」
「えっ、偉業!?何がですか!?」
ハトウさんにとっては趣味のガラス弄りみたいな物なのかもしれない。でも必要な人にはこの技術は凄まじい偉業だ
「今完成したグラス。温度を保つ力と出来た物がより美味しくなって、バフ効果とかも高まるらしいんです」
「えっ!そんな能力今までついた事……これがミスリル粉末の力ですか……」
「いやいや、それを形にしたのはハトウさんですよ!これがもし、ポーションの容器だったら、ポーションの効果が上昇するだろうし、お皿に使えばバフ料理の価値は更に上がる事になるかもしれないんです。となれば、その技術を作ったハトウさんがこのミスリルグラスの第一人者ですよ」
「い、いや……そんな大事の第一人者なんて……とてもじゃないが耐えられないよ……」
心がガラス仕様……まさか、ガラスのハトウ(ハート)って事?
「どうしよっか。今のところここで出来た物だから僕らの所だけで使う事も出来るけど……この分だとミスリルじゃなくて魔石を粉末にしても似たような事は出来ると思うんだよな……」
「魔石の粉末化ですか。それなら僕が協力出来るかもしれません!」
「おっ、じゃあトーマ君とハトウさんの共同開発で新しい物を作っちゃえばチェルシーさん辺りに広めて貰えば中々凄い事になるんじゃないかな?」
「そんな!そうなるとハチさんに利益が!」
「じゃあ、その利益はグラスを作ってもらうっていう事でチャラにしてもらえるとトーマ君の財布に負担を掛けなくて済むかなぁ……」
「全身全霊でやらせて頂きます!」
ここで、魔石では無いけど、ミスリルで何回も作る事である程度のノウハウを蓄積出来るかもしれない。そうなれば、魔石ガラス皿とか色々面白い物が出来上がるんじゃないかな?
「一応、バーという事でカクテルグラスを基本に沢山作りましたが、他にも使える様にジョッキやコップの類も勝手ながら作らせてもらいました。どうぞお納めください」
「ありがとうハトウさん。もし良かったらなんだけど、今後もこの島に来てくれたりしないかな?色々他の人とかも皆売買とかしてるからさ。それに、今回の効果付きの器……多分まだ先が有る気がするし」
お皿に出来るなら、まだまだ試してみる価値がある事は沢山あるぞ?




