勧誘
「それじゃあミオンさん。ウチに来てくれるかな?」
「是非とも!」
よーし、それじゃあ帰りますか。折角だし、ここはちょっと迎えを要請しますか
「あ、一応何か持って行きたい物とかある?」
「それでしたら、このキャンプセット位ですね。すぐに移動出来る様にしていたので……」
成程、というか、このテントとか中は普通に温かくて過ごしやすいし、何かあるのかな?
「ちょっと聞きたいんだけど、このテントとかって自分で作ったの?」
「え?えぇ、ここら辺の物は全部自分で作りました。今まで色んな地に行く事も多かったので……」
ふむふむ、このテント良いな
「ねぇ、暇な時で良いんだけど、僕にもこういうテントの作り方とか教えてくれない?」
「それは構いませんが……」
「僕も色んな所に行ったりするんだけど、基本的に木の上に隠れて寝たりするから、普通に人に見つかり難いテントとかも欲しいなって思ってたんだ」
「あの、失礼でなければですが、見た感じ人間に見えますが、何故人に見つかり難いテントを?」
ん?どういう風に捉えたんだろうか?まぁ別にそれは大きな問題じゃないか
「魔物に見つからないテントは普通に夜の間とか安心出来るけど、人間の中にも普通に悪い考えを持ってる人は居るから、自身の身の安全とか、何かを監視する時とかに見つかり難い上に快適なテントなんて素晴らしいなって思ってさ」
「なるほど……戦略的に考えてという事ですか」
「まぁ、そんな所かな。そういうテントを複数用意とか出来れば、ある意味戦闘時に強襲を仕掛ける事も出来そうだし」
夜闇に紛れて隠密テントを複数立てて、その中に戦力を隠しておけば、戦闘が開始する直前まで休息が取れるし、テントから飛び出して敵を攪乱するなんて使い方も出来るかもしれない
「まぁ、結局の所はこういう休憩する場所って他の人に見つかって絡まれるより1人で快適に過ごせる方が良いじゃん?まぁ、隠密性能が無くても、中の温度が快適だったりすればそれだけでも充分だけど……」
「分かるぅ~」
なんか分かってくれた。意外とアウトドア派なんだろうか?
「こう、誰の場所って訳でも無いけど、テントを建てる事で、今だけはここは自分の場所!って宣言してるみたいで……」
「そうそう!そうなんです!それがこういう未踏の地の様な場所であれば尚更……はっ、すみません。ちょっと興奮しちゃって……」
「ほうほう、ミオンさんはキャンプとか好きなんだね?それじゃあ空島に着いたら、他の存在も居るけど、ある程度好きな所に自分のキャンプ場を建てるとかしても良いかも。色々な環境は用意してるからさ」
「な、なんとぉー!?」
もしかしてアトラさんの誘いを断ったのって、村に住むって言うのが自分の要望とちょっと違ったのかもしれないな。ミオンさんは家に住みたい訳じゃ無くて、自分の作ったテントが一番落ち着く場所なのかもしれない
「そ、それじゃあ、キャンプに使う道具とかも製作しても良いのですか!?」
「あー、うん。別に構わないよ。何だったら、ウチにはトンデモない技術班が居るから、そっちと連携とかしたら、凄い進化したキャンプとか出来るかもしれないけど……普通に昔ながらのやり方が好きとかなら、無理に協力はしなくても大丈夫だし。それに、ミオンさんが作ったテントとかキャンプ道具なんかは普通に売り物にもなりそうだから、もし、人間と交流してみようかって思った時はそれでお金を作ってやり取りするなんて言うのも良いかもね?」
多分、ミオンさんが作ったテントとか普通に売ってるテントとかに比べたら良い物だと思う。だから、それを売ればミオンさんも交流とかしやすくなるんじゃないかな?だから、後ろで肩にギュッと力を入れて牽制しないでモノさん。僕にはその売買関係ないから……
「トンデモ技術?まぁこう見えても色々見てきましたからちょっとやそっとの事では驚きませんよ。でも分かりました。その空島に着いた時にはその技術も是非見せてください。流石に人との交流はいきなりはちょっと……」
アウトドア派だけど、人との関わりは自分に自信が無くて出来ない……中々難儀な性格だなぁ?でも、それだけこのミオンさんは一人で生きていけるだけの能力は持っているとも言える
「まぁ、絶対にやれって事ではないんでそこはお好きにどうぞって事で」
「はい!」
前向きにとらえて貰えて良かった
「それじゃあちょっと迎えを呼ぶね。あー、あー、ちょっと迎えに来てもらっても良いかな?」
『了解しました』
「という事で、少々待っていてください」
「あ、あぁ……」
という訳でテントの中で少し待たせてもらう。さぁて、それじゃあウチのトンデモ技術力の一端を見てもらいましょうか
「あ、来ました」
「へっ!?」
『お待たせしました。どうぞこちらへ』
前にフェルマーさんを運んだ時の様な空挺部隊による輸送を雪山のキャンプ場近くに来てもらった
「はい、ウチのトンデモ技術の一端です」
「はっ……はぇ……」
とりあえずミオンさんを驚かせる事には成功したみたいだな
 




