ミオン
「それで、どうしてこんな寒い所に?」
「お、俺っちが元々居た所では俺っちはあまりにも異端だった。アトラ様に声は掛けて貰ったし、村の方とも会ったけど……俺っちみたいなのが一緒に居たら、陰気が移っちまうよ……だから、誰も近寄らない様な所にと思ってここに……」
なるほど、これは自己肯定感がかなり低い。自分の価値を低く見積もり過ぎている。これは過去に自分の力を使った事によって何かあったな……
「そうなんだ。一応、陰気が移るってどんな風に?」
「へ?そりゃあ、俺っちみたいな暗い奴が居たら周りの雰囲気が……」
「君と話しても、僕は別に暗いとは思わないな。むしろ落ち着いてるから話しやすいかも?」
まずは少しずつ歩み寄らないとね
「は、話しやすい?俺っちが?」
「うん、だって会話が成立してるでしょ?世の中には同じ言葉を話しているハズなのに言葉が通じない相手だって居るんだから、僕としては会話が成立してる段階でもう君とは普通に会話してて楽しいよ」
同じ人間相手だって会話出来ない奴が居るんだ。自分は暗い奴だなんて言っても、キチンと会話出来るならその時点で僕としてはもうかなり評価が上がるぞ?
「ふ、ふへへへ……はっ!す、すみません。変な笑い方だったよね……」
「いやいや、楽しいなら笑えば良いよ」
別に笑い方なんてどうでも良い。そんなの気にならない位凄い存在とは既に友達だしね?
「とりあえず、その陰気が移るって言うのはまず気にしないで良いと思うよ?と言うか、これに関しては普通におかしいと思うんだよな……」
「おかしい?」
「陰と陽って陽だけが良い物なのかな?って。だってそうでしょ?ずっとお日様が出っぱなしとずっと夜のまま。そんな状況じゃ皆おかしくなっちゃわない?太陽があるから元気に動けるし、沈んで夜になるからゆっくり休める。片方だけって言うのはバランスが悪くなるでしょ。人間でも陽キャや陰キャなんて言われる事もあるけども、そもそも、全員陽と陰の面は持ってるハズなんだ」
ただ、その出て来る面の多さが人によって違うだけだと思う
「そうだなぁ……君も何かして楽しいって思った事が今まで生きて来た中で1つも無いなんて事ある?」
「い、いや……そんな事は無いけど……」
「じゃあ、それを楽しんでる時は陽な時だと思うよ。それにさっき笑ったのだって楽しかったから笑ったんじゃない?」
「あっ……」
じゃあ、もう悩まなくて良いな
「じゃあ聞くけど、今会話を楽しんでた君から僕に陰気が移るなんてあるのかな~?」
「そ、それはっ……」
顔が赤くなる白い男。一人で紅白になってるなぁ
「一応、言っておくけど、アトラさんも僕も、君を拒絶する事は無いよ。受け取り方は君次第だけど」
世の中色んな事は受け取り方次第だ。学校で先生にも言われたけど、「君達の未来を心配するから怒るんだ。心配してなかったら先生は適当に授業をして君達には無関心を貫く」なんて言葉のお陰で怒られるのは期待されてるからだと思える様になったし、批判されたりするのはそれまで自分に関心が無かった人にまで知ってもらえたって考えられる。父さん達も言ってたなぁ「クレームはチャンス!」って……
「そ、そうなのか……俺っちは皆に迷惑を掛けると思って逃げてたけど……そうじゃなかったんだな」
「自分の行動のせいで誰かに迷惑が掛かると思ってるんでしょ?」
「そ、そうなんだ!」
その気持ちは分かるぞ。少し違うかもしれないけど、ドミノを建てて遊んでた父さんの近くを歩いた時に倒れたら多分自分のせいじゃなくても居た堪れない気持ちになるし、もしかすると僕が近くを歩いたせいかもしれないって罪悪感が一気に来るもん
「今はむしろ逆かな?」
「逆?」
「今、アトラさんの村って僕が持ってる空島と合体してるんだけど、その空島で温泉があって、アトラさんをその温泉に……」
「ちょちょちょ、待って!待って?村が?空島と合体?温泉?んんんんん?」
あ、一気に情報を出し過ぎたかな?
「とりあえず1つずつ話すね?」
それから、村が他の人間に見つかりそうになったから空島にお引越しした事、その空島が発展して温泉がある事、アトラさんを温泉に入れてあげたい事等を1つずつ説明した
「な、なるほど?」
やっぱり自分の目で見るまでは意味分からないよねぇ……
「アトラさんにこの話をしたら、君の事を思い出してね。だから君の力でアトラさんを温泉に入れてあげられないかな?」
「俺っちの能力が必要って事なんですか?」
うーん、ちょっとここの返答は難しい気がするけど、まぁ深く考えずに言っても良いか!
「そう。僕らには君の力が必要なんだ。自分じゃなんの力にもなれないじゃなくて、アトラさんが認めている君の力を貸して欲しいんだ」
「ふ、ふへへへへ……」
めっちゃ照れてるなぁ……
「ほ、本当に俺っちが力になれるんですね。分かりました!俺っちやってみます!」
「おっ!前向きで良いねぇ!そうそう。せっかくウチに来るなら名前があった方が良いんだけど……君って既に名前を持ってたりする?」
「いえ!カレイドレオンという種の変異種でミラージュレオンという種なだけです」
「なるほど……じゃあミオン……ちょっと女の子っぽいかな?」
「いえ!俺っちはこれからミオンと名乗ります!」
なんか気に入ってくれたみたいだ




