砂の体
「おいおい、アレか?」
「アレが暴走……」
「いったいどれだけ力を使ったらあんな事になるんだ……」
ポン君に聴覚ブーストしてもらって、相手の会話を聞いてみたけど、一応驚いているな。これでとりあえず戦闘行動自体は取れそうだ
「ガァァァァァァ!」
雄たけびを上げるけど、まぁせめて音位は許してくれ。一般市民の人には申し訳ないけど、ネストの荒療治だと思ってくれ
「おっ、丁度良い所に良いのが居るじゃん」
ネストの敵が僕の近くに居たので、それを捕まえて、集団に対して投げつける。とりあえず戦闘力の調査だ
「迎撃せよ!」
「ほうほう。普通にあのくらいはすぐに倒せるか。これなら防衛力としても普通に良いんじゃないかな?」
投げつけた敵が射撃によってあっという間に倒されていた。これなら戦力として安心出来るな
「これは手は抜け無さそうだな」
相手の力量に合わせて攻撃するつもりだったが、これは手を抜くなんて事はあまり考えない方が良いかもしれない。ただ、怪我人は多少作るかもしれないけど、それに関しては最後にこっちで何とかしよう
「砂の体だとしても、普通に打撃力が無い訳がないからな」
今は中身は違うだろうけど殴られると言えばなサンドバッグ。アレだって、パンチの衝撃を受け止めるし、サンドバッグを持ち上げてから自重で振り子の様にして体に当てたら衝撃だってかなりの物だ。それが巨大な人の形を取って殴り掛かって来る。たかが砂と侮るなかれ。物理的な攻撃であれば割と受け性能も攻撃性能もかなりの物だぞ?
「コウゲキホウホウハ、ドウシマスカ?」
「基本的には触手で殴打って所かな。圧し潰すとかはしない様にしよう」
打ち払って吹き飛ばすとかなら良いだろうけど、この重量で圧し潰したら多分パワードスーツでもぺしゃんこになってしまうだろう。そうなってしまったら回復では無く蘇生が必要になってしまう。でも、そんな気軽な蘇生魔法は無いので、回復で止められる打ち払いで壁に叩きつけるとかそのくらいにしておいた方が良いだろう
「まぁ、最終的にはコイツの出番になるだろうけどね?」
オクトパスなら自分では止められないと思って最後の切り札は用意しておく……でも、皆が結束しているかは暴走していても確認したいんじゃないかな?だからタイマーでは無く、これは自分の手で起爆させる……と思う。まぁオクトパスも僕なんだけど、割とそういう感じだと思う
「ネストキンペンデノ、シヨウハ、ヒカエタホウガ、イイトオモイマス」
「まぁ、そうだよねぇ……魔法たっぷりだし、余波がある可能性があるからこれはネストから離れて使用するつもりだよ」
皆の結束を確認出来たらネストから離れて使用すれば良いかな
「よし、それじゃあ早速戦闘開始と行きますか!」
静かな戦争とは最もかけ離れたと言っても良い状況だねぇ?
「射撃開始!」
連合軍からビームや実弾の入り混じる攻撃が多数飛んで来る
「ダメージ、アリマセン。サンドボディニヨッテ、チュウシンブマデ、コウゲキハトウタツ、シテイマセン」
ちょっと違うけど、水溶き片栗粉のダイラタンシーを利用したリキッドアーマー的な感覚だろうか?砂の体は必要な部分に砂を集めて防御を固める事も出来るだろうし、単純な装甲の厚さで銃弾やビーム自体がダメージを受ける部分まで到達しないって普通に滅茶強くないか?ふぅむ……これはちょっと砂アーマーのデータを取るという為にも戦闘はもう少ししっかり検証した方が良いかも……砂もそうだけど、さっき思い出したリキッドアーマーだってそう言えばまだ実験中で完成はしてないんだっけ?となれば、皆の技術を使えば、リキッドアーマーだって作れるんじゃないか?
「よし、ゲヘちゃん。帰ったら好きな物沢山作ってあげる。だから今日はちょっとデータを集める為にも頑張って貰う事になるけど……大丈夫かな?」
「モチロンデス」
「よし、ゲヘちゃん、感覚も痛覚も全部リンクして良いから操作性をもう少しあげられるかな?」
「……ワカリマシタ」
多分止めようとしたけど、どうせ止まらないんだろうと理解して許可をくれたかな?いやぁ、ゲヘちゃんが理解者で凄い助かるなぁ
「うおっ……なるほど。これは……ゲヘちゃんが力持ちな訳だ……」
確かに体はさっきよりも外の風とかも感じる様にはなった。だが、それと同時に体に纏う砂の重さもさっきより感じる。ゲヘちゃんがアシストしてくれていた分が感覚リンクによって結構ダイレクトに伝わって来る……そうか。砂アーマーの欠点はこの重量か……防御力と重量。この問題はやっぱりずっと昔から変わらないよな……質量があれば防御力も増す。でも、その質量のせいで機動力を奪われる。魔法以外の防御力を確保するという点だけなら現実と一緒のハズだから、この重量と防御力のバランス問題はやはり出て来てしまうか
「砂単体で防御壁を作ろうとしたら魔力っていうリソースは必要になっちゃうだろうし、この問題はやっぱり、難しいなっ!」
巨大な触手で連合軍を打ち払いながら、防御力の問題に対して考えて戦闘を進める事にした
 




