ネスト最後の準備
「ただいま」
「お疲れ様です!ところでいったいどちらに?」
「時間も無いし、連れて来た」
「連れて来た?」
「やぁ、君達の組織のトップと話がしたい」
「……」
バニシングクロークを外して目の前にフェルマーさんがいきなり現れたとなれば、そりゃあ驚くだろうなぁ……普通にこのゴツいパワードスーツがいきなり来たらビビるのも不思議じゃない
「色々考えたけど、連れて来るのが一番早いと思った」
「行動力あり過ぎないかい君?」
「何時自我を失うか分からない。なら出来る事はすぐに行うべき」
明日やろうは馬鹿野郎だったかな?今出来る事があるのならやってしまった方が良い。こっちとしてはネストの情報も集めて、さっさと空島に戻りたいんだ。その為にもすぐに出来る事はドンドンやる
「じゃ、あとは任せた」
「お、おいおい。君はどうするんだ!?」
「倒される奴が話を聞いたら意味がない。体が制御出来る内に、自分の力を削ぐ。そして、多分これがさよならになる」
「待って」
おっと、フェルマーさんに呼び止められた
「少し、2人だけで話しても良いか」
「……構わないよ。友人同士の最後の会話になるかもしれないんだからね」
空気を読んで2人だけにしてくれる面々。まぁ特に話す事はもう無いんだけど……
「とりあえず、どうするかだけ教えてくれ」
インカムを使った連絡。という事は、他の人にも聞かれたくないって感じか
「ネストを出る。あとは、戦力が足りなかった時の万が一に備えて準備する」
この会話だって聞かれてる可能性がある。だったら、ぼかせる所はぼかして、要件を伝える。決行は3日後にしてるから、一度空島に戻って、演出の準備をしないとね?
「分かった」
「じゃあ、また逢う日まで」
2人きりの状態を使ってそのままレジスタンスのアジトから撤退する。さて、空島に戻って演出の為のプログラムを考えなくちゃ……
「ただいまー」
「おぉ!ハチ!素晴らしい情報が沢山集まっているぞ!解析もそこそこに進んでいる!」
「ヘックスさん。とりあえず図書館巡りの情報集めはこれでおしまいですけど、追加情報を得る為に色々と相談がありまして」
「あぁ、今やっているネストからの情報収集の奴だな?」
「はい、具体的にこういうのが良いかと思いまして……」
大体の展望を図にしてヘックスさんに見せてみる
「なるほどな。こうする事で、ネストには国としての纏まりを作り、その謝礼として情報を得ると。そうだな……となれば、このような要素はどうだろう?」
ヘックスさんが図に書き足して僕の提案をパワーアップさせる
「街に被害が出てしまうとそれが後遺症となって、またネスト内部が割れかねないと思うので、街に被害を出さない程度でやり過ぎない方が良いかなと……」
ヘックスさんにも提案を貰ったけど、これだと確実にやり過ぎになる可能性がある。確かにパワーアップは良い事ではあるけども、今回は程よい強さが大事だ。うーん、世の中のゲームを作る側の人達ってこういう感じで敵の強さとかを考えてるんだろうか?やり過ぎない程度で、倒せる難易度で……まぁ、これはそういう塩梅を考えられるし、何なら僕がその場で難易度調整も出来るからそういうプランナーの人よりはまだマシと考えるべきかな?想定より相手が強かったら、こっちも力を惜しまなければ良いし、弱かったら、弱体化イベントみたいな事をすれば良いだけだしな。それに最終手段の準備も進めなきゃ
「それで、もしこういった物があるかどうかを聞こうと思いまして……」
メモに書いた多分必要になりそうな物を見せる
「ふむふむ、この辺なら用意は出来るな。これを合わせれば要望は満たせるだろう。後は……やはりこれに関してはあの者に協力してもらうのが一番だと思うぞ?」
「そうですね。これに関しては頼む事にします」
「1国があっという間にハチ殿の掌の上で踊っていく……未だかつて見た事が無い程鮮やかに……」
あ、いけね。そうかキュービアさん達も見てたんだっけ。これはやってしまったなぁ……アレ?もう発声関係は良くなったのか?いやぁ、本当にこの島の技術の発展も早い事早い事……
「よし、そうと決まれば早速準備を進めないとね」
「あぁ、こちらも使いやすい様に準備はしておく」
道具に関してはヘックスさん達に任せてしまって問題は無さそうだな
「となると、次は……」
大変な役回りになるけど、協力してもらおう
「おーい、ゲヘちゃーん」
「オヨビシマシタカ?」
「ちょっと手伝って欲しい事が有るんだ。また戦闘関連なんだけど……大丈夫かな?」
「オマカセクダサイ!」
なんだか胸を張ってるなぁ?
「サイキン、ヒマダッタノデ!」
「ゴメンね。それじゃあ今回の事が終わったら一緒に城以外の所とかも一緒に行こうか」
そうだよなぁ……ゲヘちゃんのやる事がほぼ城での雑用みたいな事しかしてなかったし、外で遊ぶ位してあげないと可哀想だ
「ハイ!」
うん、良い返事だ。それじゃあ、暴走体の時は色々頑張らないとなぁ……




