コンパスを作る
「おぉ、居た居た。ハチ!話は通しておいたぞ?」
「あっ、アトラさん。ん?そんなにミミックさんと話し込んでましたか?」
「結構話し込んでたで?」
ミミックさんと大分話し込んでたみたいだ。アトラさんが迎えに来てくれた
「もう用意してくれてるから取りに行ってこい」
「ありがとうございます。あっ、ドナークさんにも感謝しないと」
話を通してくれたアトラさんにも感謝だけど、実際に用意してくれたドナークさんにも感謝しなくちゃ
「ミミックさんもありがとう。それじゃあドナークさんの所に行ってきます」
「行ってらっしゃいやでー」
待たせるのも悪いので早速行こう
「ドナークさん、こんにちはー」
「おうハチ、針が欲しいってこういう針で良いか?」
ドナークさんが針を数本出してくれた。この中から選んで良いのかな?
「コンパスを作りたいんで本当に使わない針を貰えれば良いんですけど……」
「コンパス?アトラ様からはハチが針を欲しがってるから使わないのがあったらあげてくれって言われてたんだけど、とりあえずどんな物か実際に作ってみせてくれない?」
んー、ドナークさんはコンパスを見たことが無いのかな?
「えっと、とりあえず水と針を借りますね?」
ドナークさんの家で桶に水を張り、針に磁石を当てて、一方向に向かって擦る。これで磁性を持たせられたはずだ。後は針を適当な紙か葉っぱに乗せて水に浮かべれば……
「これがどうしたんだ?」
「これで針の尖った方の向いてる方向が北です」
水に浮かべた針がスーッと一方向を示した。木の年輪で方向を探す方法が使えたなら方位磁針も使えるはずだと思っていたけどこうやって針がちゃんと動いてくれるとちょっと嬉しい
「ほー?こんなもので方角が分かるのか」
「そういえばドナークさんとかはどうやって方角を調べるんです?」
「そりゃ魔法を使えばすぐ分かるからそういう物は要らないかな」
それは何か悲しいな……確かに魔法は便利だけどこういう物は必要ないって言われると何とも言えない気分になる
「あっ、ドナークさん。また紙とペン貸して?」
「ほい」
ドナークさんから紙とペンを受け取る。とりあえず出来るだけ一般的な方位磁石の絵を描く。丸いケースの中にひし形の針があって、N、S、W、Eの4文字。やっぱりこういうの作りたいなぁ
「これがとりあえず僕が目指すコンパスかな?」
「さっきのと全然違うじゃん?」
「これで大事なのは針が自由に動ける事なんだ。だからさっきは水に浮かべて針が自由に動ける様にしてたんだ。これは真ん中の部分にある針の上に方角を示す針を乗せる事で抵抗を限りなく少なくして針が自由に動けるから方角を示す事が出来るんだ」
説明が長くなっちゃったけどこれで伝わるかな?
「要は見た目は違うけど仕組みは一緒って事なのか?」
「そうそう!そう言う事。まぁこれは中々作れないだろうからさっき見せた水に浮かべるタイプで何とか作ってみようかと……」
「ちょっと待て、その針さえ作れればコンパスを作れるんだな?」
「え?まぁ……えっ?」
「それじゃあ作ってやるさ!ハチにはそれが必要なんだろ?」
「必要ですけど……本当に良いんですか?」
「その針だけだけどな?あぁ、浮かせる用の針はさっき出した針をちょっと調節すれば何とかなるだろ?」
それだけ用意されて作らない訳にはいかない。丸いケースは自分で何とか作ろう。そうだ!前は器を作る時に失敗したけどコンパスなら問題無いハズだ
「はい!それさえ作ってもらえれば他は僕が自分で作ります!」
一番大事な部分である針をドナークさんに任せて僕はケースを作る事にした。蓋を付けて使わない時は閉めて、使う時だけ針を乗せる様にすれば全部木製でも問題無いハズだ
「よーし!作るぞー!」
魔糸鋸で木材を切り取っていく。ホントに便利だなぁ……
木材を丸く、くり抜いてケースを作っていく。一応ドナークさんがどのくらいのサイズの針を作ってくるか分からないし、文字盤の書きやすさとかも重視でちょっと大きめに作っておこう
「コンパスがあると冒険感も増す気がするんだよなぁー」
僕の中で冒険と言ったらコンパスは持ちたいアイテムの中でも上位だ。一番はナイフだけど……
「おーい!絵を見て作ったけど……こんなんで良いか?」
「うおっ!?完璧ですよ!この針!」
ケースを作り終えた辺りでドナークさんが針を持ってきた。完璧な仕上がりで、磁石で擦ってケースに入れたらもうすぐにでも使えそうだ
「そ、そう?やっぱ試しでも作ってみるもんだなぁ?」
ドナークさんは器用だなぁ?
「こっちも作り終えたんで早速合わせてみましょう!」
ケースの真ん中にドナークさんが作ってくれた磁針を置く為の針、そして4方向に書かれた文字。ドナークさんから受け取った針を磁石で擦って磁針にして、いざ……
「こっちが北で合ってますか?」
針が動いて一方向を示す。水に浮かべた針と同じ方向を示していた
「あぁ、そっちが北だ」
ドナークさんの手の上で空中に浮かぶ矢印が僕のコンパスと同じ方向を向いている。魔法を使ったドナークさんの矢印と同じ方向を向いているという事は成功と見て良いだろう
「やった!完成だ!」
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お手製コンパス
レアリティ PMプレイヤーメイド
耐久値 100%
方角が分かる
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そっけない説明だけど僕の欲しかった物を作る事が出来た




