不安
「そうですねぇ……クオンを生み出すのに錬金術はかなり大事な部分に使用したという事だけはお教えしましょう」
一応錬金術と言っても変則的な物だけどね?
「ほう?やはり……錬金術はあのとてつもない存在に辿り着く可能性が有るんですね……」
マッドスタッフだって結構凄い物だったからあれがクオンに近い存在になっていても不思議ではないだろう
「別に僕は皆さんに見せたクオンが到達点だとは思ってないですけどね」
クオンはまだまだ先に進める存在だろう。現に今のクオンはあの時色んな人に見せた時よりも強くなっているし
「あれで……?」
「はい。あれで」
「えぇ……」
クオンに辿り着くつもりなら、僕だって僕らの技術力が限界に到達するまでクオンを強化するつもりだし、技術は常に競争する様な物だから負けないぞ?
「技術力は常に研鑽する物ですから。究極的な話、僕らに完成はありません」
「なるほど!常に技術は進化する物だから完成という終わりに至る事が無いと!これはすみませんでした。何と高尚な考えだ……」
ゲームだから到達点的な物はあるのかもしれない。でも、現状の僕らにはまだその到達点に辿り着いてはいない。これがどれだけ良い事か。今まで遊んで来たゲームでもそうだが、最終装備品的な物は基本的にゲーム内で定められた最強の装備になる事がゲームとして当たり前だろう。でも、このゲームでは自分の手でその最強装備を作る事が出来るかもしれない。しかもその最強の形は1つだけじゃない。これだけ自由な状況で開発とか出来るんだから楽しい事この上ない。現状ではこれが最強なんて考えが1秒後には崩れ去る。そのくらいテンプレが無い。それを喜ばずして何が技術者か
「僕らは1つの形を提示するに過ぎなくて、それを活かせるかどうかは扱うその人次第。だから人によって最強の形は変わりますし、目指す物だって変わるんですから、僕らを目標にするのは良いですが、自分達の良さから目は逸らさない様にしてくださいね?」
だからこそ、この人は少し危うい。確実に良い一歩を踏み出せる技術の一端を掴んだとしても「これじゃあ、あの技術と違う!」と手放してしまう可能性もある。目標はあくまでも目標。自分の技能や技術を活かそうとした時、最終的に僕と彼では進む道は違うだろうから、その分岐点は見逃さない様にして欲しい
「なんだか人生相談をしてもらった様に感じます。そうですね……今からエジソンを目標にして、ただ豆電球を作るのでは意味が無い……目標にするのは新しい明かりを灯す技術という点。ちょっと現実でやりたい事が出来てしまったのでこれで!」
おっと、今の話を聞いて現実で何かやりたいってあの人発明家か何かだったのかな?まぁ、いいや。一旦今日の所はこの辺にしておこうかな?ザッと全部初日で見ちゃうのも勿体無いし
「よーし、それじゃあ自分の所に戻って説明とかまたしようかな!」
またマントの事とか聞きたい人が溜まってるだろうし、一旦戻ろう!
「いやぁ、結構人来たなぁ?」
休憩出来る原っぱと植え込みの近くに伏せたら見失う人が出る位マントの効果を見せたり、例の特殊能力の移植技術を他に誰か持っているのか探ったりをしてみたが、とりあえず今日の所は見つからなかった。まぁ、見つからなくて良いんだけど……
「ハチさん!凄いですよ!」
「あ、チェルシーさん。どうですか?今の所問題とかはありませんか?」
一応、共同運営って形にしてるけど、ほぼほぼこっちが場所を提供して、チェルシーさん達に管理を任せる形にはしてるけど……
「やはりハチさんのネームバリューのお陰か、問題らしい問題が何一つ起こってませんね。こんなに運営しやすいのはとてつもなく助かりますね!どうです?今後は我々が行うイベントの時にケツ持ちとして……」
「ケツ持ちって……僕はそんな事はしませんよ。というか、チェルシーさん達って他に何かやってたんですか?」
僕にケツ持ちをして欲しいとか、とんでもない事を言い出したけど、他にも何か個人イベントをやって問題でもあったんだろうか?
「えぇっと……実は、過去にビアガーデン的な事を一度やってみたんですが……やっぱりお酒が関わるとあまり良くないですね。見事に喧嘩騒ぎに……」
「あちゃー……」
僕は未成年だからお酒は飲めないけど……やっぱりお酒を扱うイベントは危ないか
「まぁ、サーディライでやったので、喧嘩祭りとして処理出来たのでまだ何とかなりましたが……あそこじゃなかったらヤバかったですね……」
流石お祭りの街……喧嘩が始まっても喧嘩祭りとして何とかしたって……まぁ、確かにあそこだったら何か起きたとしても何とか出来そうではあるか
「まぁ、それは僕がケツ持ちしてても変わらないと思いますが……」
「そうですよねぇ……でも、初日に何も問題が起こらなくて良かったです」
「そうですね。僕も今日は近くだけで、売買出来る所は行ってなかったので明日見に行ってみようかなって……」
「……えっと……了解しました!明日ですよね!了解です!」
ちょっと待て。これは少し今日中に確認しなければならない事案が発生したかもしれない……




