2人きりのレイド
「踏みつけと叩きつけに注意してください!」
後ろから声が掛かる。まぁあの巨体で軽快なフットワークとジャブとかしてきたら困るわ
「了解!」
一応前に出ているから僕にゴーレムのヘイトが向いているとは思う。とりあえず【精神防壁】は出しておこう
「関節を破壊すれば攻撃を制限したり出来るのかな?」
「爆弾を使えば破壊出来ます!何処をやりますか?」
「とりあえず相手の足を奪えば僕もトーマ君を守りやすくなるから頼めるかな?」
「はい!」
相手を動けなくする、ゴーレムの胴体に攻撃しやすくする。とかを考えるとまずは相手の足を奪うのが一番だと思う
「足破壊のルートだと破壊後に腕の振り回しと叩きつけが脅威の行動になります!」
ルートとかあるんだ……トーマ君が持っている情報ってかなりの物だな……?
「まずは1発!」
トーマ君が爆弾を持って、放り投げる。ゴーレムの右足の脛辺りに爆弾が当たり、起爆。時限制じゃ無くて接触性なのか。どっちも有用性があるから一概にどっちが良いとは言い切れないけど今回は接触性の爆弾で良かった
「ウォォォン!?」
爆発により、ゴーレムの右足の脛が破壊される。右足が壊されたことでバランスを崩し、倒れるゴーレム
「続けて行きます!」
「ウゴァァァ!?」
残った4つの爆弾をトーマ君が連続で投げつける。右肩、左膝、左わき腹、頭部右側が爆弾で吹き飛ばされた。爆弾5つでとんでもない損害を与えたな……
「ほら!トーマ君!もの凄い事になってるよ!」
「こ、こんなに……」
僕も良く分かってないけど明らかにこのゴーレムの様子は大ダメージを喰らっていると言っても過言ではないだろう。トーマ君の作った爆弾は明らかに強い
「ウォォォ!」
「うわっ!?」
ゴーレムが残った左腕をトーマ君に向けて振り下ろそうとする。絶対にその拳は振り下ろさせない
「はぁ!」
【精神防壁】を2枚展開していた物を1枚にして上に構える。1枚で展開する方が強度は高いし、守るべきはトーマ君1人だ
「うぅ……えっ!?」
「ウォォ?」
ゴーレムが振り下ろした拳はトーマ君を捉える事も、地面に叩きつけられる事も無かった。空中で展開された【精神防壁】にその拳は止められた
「絶対にトーマ君には攻撃させないよ?」
「ハチさん!」
防壁の下にいたトーマ君は移動する。いつまでも拳の下に居るのは良くないしね?
「さっき、爆弾は5つしか作れなかったって言ってたよね?」
「はい、あと1発あれば倒せそうですけど……」
爆破されたことでゴーレムの体もボロボロと崩れている。壊れた脇腹の内部から若干光が見える。もしかしてコアがある感じかな?
「だったらさ?今ここで作っちゃおう!」
「えっ!?もしかして本当にさっき言ってた事やるんですか!?」
戦闘中に錬金術。釜を出して、火を付けて、材料を入れて、混ぜて……最低でも3分は掛かるだろう。でも本当にあと1発分の爆弾が作れればこのゴーレムを倒せると思う。確かに僕が何回も攻撃したらゴーレムを倒せるとは思うけど、今回は僕が倒すのは良くないと思う。トーマ君が自信をつける為にも僕は防御に徹して爆弾が作れるまでの時間を稼ごう
「今やれるのはトーマ君だけなんだよ!大丈夫君は死なない!僕が守るから!」
「自分がやらなきゃ……ダメなんですね。分かりました!覚悟決めます!自分の事守ってください!」
トーマ君も覚悟を決めて釜を取り出した。絶対にトーマ君を守り切って爆弾を完成させる
「さぁ来い!絶対に僕の後ろには抜かせない!」
先にトーマ君が爆弾で上手く右腕と両足を破壊してくれたので左腕の攻撃を防ぎきれば何とかなるはずだ
「ウォォォン!」
「あぁ……」
「僕を信じて!手を止めないで!」
僕とトーマ君を同時に殴る様に横薙ぎに振るわれる左腕。防壁をトーマ君の方に、僕は体勢を低くしてゴーレムの腕を待ち構える
「【受け流し】!」
迫りくる巨腕を前方で僕が両手を使って受け流し、後方ではトーマ君の側面で展開した【精神防壁】を斜めにして【受け流し】をする
「ウォォ!?」
ちゃんと防壁の【受け流し】も発動してくれたのか、ゴーレムの左腕が跳ね上がる。こんなデカい相手でも【受け流し】する事が出来るって凄いな……
「【魔糸生成】」
気休め程度だけど地面とゴーレムの左腕を糸で繋げる。強靭と粘着を付与したけど……まぁほんのちょっと時間が稼げれば充分だ
「トーマ君が作るまでもう少し黙っていてくれよ?」
立ち上がろうとするゴーレムは左手に付いた糸を半壊した顔で見やると力で引き千切った。それだけの力はまだあると示しているんだろうか?
一瞬トーマ君の方を確認すると赤っぽい煙が出ていた。おや?さっきより早く作れてるんじゃないか?
「確実に倒せる様に丁寧に、だけどすぐ使える様に迅速に!」
トーマ君は自分に言い聞かせる様に釜と真剣に向き合っている。あの集中している感じだと周りが見えてないだろうけど今はその方が良い。存分に集中出来る様に僕がゴーレムの相手をすればその分だけ作る時間が短くなる
「腕一本は辛いだろう?」
「出来ました!」
「今楽にしてあげるよ。トーマ君がなぁ!」
最後にゴーレムの腕を弾き、体勢が崩れた所でトーマ君の為に道を開ける
「いっけー!」
トーマ君が戦場で作りだした爆弾はゴーレムの壊れた脇腹から体内に入り、内部で爆発。ゴーレムの体がバラバラに飛散した